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『俺は組織の長として未熟だからさ……、お前が俺の右腕になって欲しいんだ。』
言われたのは数年前。
前任のボスが持病で亡くなって、 アイツが席を継いでから間もないときだった。
影がかかってたからかもしれないけど、
少し寂しそうな表情だったのを覚えてる。
それからは弱音なんて一切吐かずに過ごしてたもんだから、
俺の勘違いだと思ってた。
(……本当は、甘えたかったのかなぁ)
ボスの第一子、そして後継者として期待されていたのを間近で見てきた。
何をするにも慎重に、かつ最善の一手を。
それを徹底してきたアイツを、俺は心底尊敬する。
それと同時に、
とても息苦しそうな人生だと思っていた。
「…………………声、聞きたいなあ」
「あー、もしもし?」
📱)ボス、アンタの恋人大変そうよ?
「…アイツ口滑らしたか?」
📱)いいえ?自らの意思で、よ。
「馬鹿…」
📱)口約束なんてしたからよ。アイツとは紙で交わさなきゃ駄目じゃない。
「躾けとくから心配ねえ。何の用だ? 」
📱)あら、用がなかったらどうする気?
「別にどうもしないけど」
📱)暇なのよ。若いのと居てもつまらないし。アタシとお話してくださらない?
「……さっきのことについては話してくれんのか?」
📱)お望みとあらば。
「是非頼むよ」
📱)……ってことだったわ。随分と拗らせてるみたいね、彼。
「そんなもんだろ」
📱)まあ、それはどうだっていいのよ。早く何とかして下さらない?
「あー………、考えとく」
📱)…アンタ達、ほんとに恋人同士?
「そうらしい」
📱)はあ?…取り敢えず!あのまとわりついてるうざったいオーラをどうにかして。早急に!
「わーったよ、切るぞ」
「………………欲求不満、ねえ」
薄々勘付いてはいた。
密かに向けられる熱い視線、仕草、言動。
見られている本人にしか分からないような、些細な変化を。
(んー………、付き合い方ミスったか)
どうやら我慢を覚えていたらしい。
脳みそが拳サイズほどだと思っていたばかりに、対応が遅れてしまった。
「……連絡、してやるか」
「…………電話」
「………うるさいなぁ、俺は感傷に浸ってて忙しいの!」
「あーもうずっと切ってるじゃん!諦めろ、よ…………」
「………………ボスぅ!?」
📱)…やっと出た
「…すみません、本当に。」
📱)二回切ったな
「切りました。はい。」
📱)お前のパートナーより重要なものってある?
「無いです。」
📱)じゃあ、今から会える?
「えっ!?………………………………」
📱)何…、会えんの、会えないの?
「会えっ、ます!!」
📱)ふっ、気合い入ってんな。俺ん部屋来い
「わかりました!!! 」
「……………お誘い、きた……!」
(やべえ、どうしよう。めっちゃ嬉しい)
声聞けたどころか、お家デートのお誘いまできた。
鏡を見なくてもわかる。 絶対に顔が緩んでいる、と。
現在時刻は8時前。
急いで行けば8時には着いて、その後ゆっくり出来るだろうか?
あー、どうしよう。
興奮が抑えきれない。
「ほんと、大好きすぎるよなあ…」