僕は、押し倒すようにキスをしてしまった。
「はぁ、はぁ、勇斗、、、ぼく、、、」
「、、、、ごめん。」
勇斗は、僕から逃げるように家を出ていった。
そこから勇斗くんと僕は約1年間、登下校の時でも、廊下ですれ違っても、無視するようになった。
勇斗くんはサッカー部に入って、友達と一緒にいる所をよく見かけるし、
それに対して僕は相変わらず友達がいない、
だけど、もうそれでいいんだ、
もうこのままで過ごすしかない。
そして現在
「仁人くんーパート練習もう始まってるよー」
「あ、!ごめんなさい、考え事をしてしまって、」
いつも通り、サッカー部の練習を4階の窓から眺めながてからのパート練習のルーティン。
今日も勇斗くんは友達と元気に部活をしている。
楽しそう。
僕はひたすら、先輩と楽器を吹いているだけの日課。
楽器を吹くのは楽しいけど、こんなのルーティン化しておもしろくない。
ミスしたら先生には怒られるし、
僕がミスしたことで、先輩が責任取って怒られる。
それに対して僕は謝る。
何が楽しいんだろう。
前みたいに、勇斗くんからのどうでもいい話をしたい。
前みたいに、ワクワクやドキドキが欲しい。
僕の青春はこんなものか。
こんな考え事をしてしまい、今日の部活は終わってしまった。
今日も疲れた。
少し遅くなったし、考え事をしてしまったから、前みたいに勇斗くんと一緒に通った帰り道から帰ってみる。
1年くらい通ってなかったから、道路が整備されたり、新しい家が建っている。
この道を夕日の中帰って、くだらない話ばっかしたな。
今となってはバラバラになってしまったけど、
あの頃の思い出は今でも忘れることはないくらい大切な思い出。
それは僕だけなんだな。
勇斗くんにはあんなことをして以来話してないし。
友達とすら思ってないだろう。
そんな考えばっかしてたら、前に身長の高いボールネットを持った人がいた。
少し疲れているみたいでボールネットを蹴りながら歩いてたから、僕は横を追い越そうとした。
その子は、勇斗くんだった。
気まずい。
とてつもなく気まずくて、知らないフリして追い越してしまった。
勇斗くんはボール蹴るので夢中で気づいていないと思う。
僕から「よっ!」とか言えるわけない。
言えたとしてその後の反応が怖くてとてもじゃないけど話しかけられない。
もうこの状況が地獄すぎて、走って逃げようとしたら、
思うように足が動かず、転んでしまった。
「ウワッッ!!」
終わった。終わった。
やばい、近づいてくる。
「、大丈夫、?」
手を差し伸べてくれた。
「あ、ありがとう」
そこで勇斗くんの顔を見たら、血相を変えて動揺していた。
「あ、、勇斗くん、久しぶり、」
「、よぉ、久しぶり」
「勇斗くん、さっき部活終わったの?」
「、そうだよ、お前こっちだっけ?」
「今日はこっちから帰ってみようかなって、」
「、そうなんだ、」
会話が弾まない。
気まずい空気が流れながら、沈黙の中一緒に歩いた。
心臓の音が聞こえそう。
「あの、勇斗くん、」
「、どうした?」
「僕たちって今でも友達だよね?」
「、そうだよ、当たり前じゃん」
泣きそう。
てかもう涙が出てしまった。
勇斗くんと僕の関係は切れていなかったんだ。
「そっか、良かった、ほんとに良かった」
「泣くなよ、笑笑。お前は昔から泣き虫だよな。」
涙が止まらなかった。
一気に安心した気持ちで、一気に涙が溢れ出してもう前が見えない。
「ほら、ハンカチ。貸してやるから明日洗濯して持ってこいよ。」
「勇斗くん、ありがとう。」
「おう、じゃあ俺はここで、じゃあな」
「うん、また明日ね」
「おう」
1年ぶりにこんなに近くで見た勇斗くんの背中は、思っていたよりもずっと大きくなっていて、ただその場で見送ることしかできなかった。
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