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⚠️M!LK、3080のBLとなっております。
学パロ、モブ、いじめ表現あります。
🔞要素はまったく無いです。
地雷の方は今すぐブラウザバックすることを推奨します。
第0話から見て頂ければと思います!
🩷→攻、『』
🤍→受、「」
放課後の校舎は、柔太朗にとって巨大な牢獄でしかなかった。
薄暗い廊下を歩くたび、背後から飛んでくる嘲笑と、わざとらしくぶつかってくる肩。
紺色のブレザーの袖には、昼休みに付けられた靴の跡が虚しく残っている。
「……ぁ、」
教室の隅で、全てを汚された時、柔太朗の中で何かが「ぷつん」と音を立てて切れた。
抵抗する気力も、助けを求める声も、もう枯れ果てていた。
夕暮れ時。
街を橙色に染める西日が、川面に反射してぎらぎらと目に刺さる。
柔太朗は、学校から少し離れた古い橋の上にいた。
行き交う車もまばらな、高い柵が続く場所。
(……もう、いいかな )
慣れた手つきでメガネを外し、ベストのポケットに仕舞い込む。
視界がぼやけて、きらきらしている。
そんな輝いた世界がさらに現実味を失っていく。
紺とグレーのストライプのネクタイを緩め、柔太朗はゆっくりと、冷たい鉄の柵に足をかけた。
風が強く吹き抜け、制服のスラックスがバタバタと音を立てる。
そのまま重力に身を任せようと前へ傾いた、その時だった。
『____おい。 何してんの? 邪魔なんだけど。』
低くて、どこか気だるげな声。
それと同時に、柔太朗の制服の首根っこを驚くほど強い力でガシッと掴み上げられた。
「……っ、…え、」
身体が強引に後ろへ引き戻される。
バランスを崩し、コンクリートの地面に尻餅をついた。
柔太朗が顔を上げると、そこにはこの街の穏やかな風景には似つかわしくない人間が立っていた。
パーカーの上から、ワインレッドに近い深い赤のブレザーを羽織った男。
陽の光を透かしてさらに輝く、乱れた金髪。
耳にはいくつものピアスが光り、鋭いその瞳が地面にへたり込む柔太朗を冷めた目で見下ろしている。
「……あ、の……」
『死ぬ勇気あんなら他所でやれよ。目障り。』
その男は、鼻を鳴らしてポケットに手を突っ込んだ。
柔太朗は震える手でメガネをかけ直す。
ピントが合うと、目の前の男の凄まじい威圧感がより鮮明になった。
他校の制服。
噂に聞く、ここら辺の不良が多く集まる有名な学校の制服だろう。
柔太朗は恐怖よりも先に、何故かその「無関心さ」に救われたような気がした。
学校の連中みたいに、ニヤニヤしながら痛めつける訳でもない。
ただ、自分がそこにいるのが邪魔だと言い放つ、圧倒的なまでの日常のトーン。
「……ごめんなさい。…邪魔、しました」
柔太朗が消え入りそうな声で謝ると、その男はふいっと視線を逸らした。
そのまま立ち去るかと思いきや、男は近くの自販機まで歩いていき、ガコンと音を立てて缶を一つ取り出した。
そして、無造作に柔太朗の足元へ放り投げる。
「……え?」
『それ。飲んだらさっさと帰れ。……風邪ひくぞ、お前』
足元に転がったのは、ホットのカフェラテだった。
柔太朗は、泥のついた制服の裾をぎゅっと握りしめ、缶を拾った。
「……ぁ、…あったかい」
思わず溢れた声は、泣き出しそうなほど震えていた。
「……あの、」
その男が背を向けようとした瞬間、柔太朗は自分でも驚くほどの勇気を振り絞って、その背中に声をかけた。
「っぁ、…お名前、なんて言うんですか。俺はっ、柔太朗です」
男は足を止め、少しだけ首を傾けて振り返った。
夕日の中で、彼の金髪が少しだけ柔らかく光った気がした。
『…佐野、勇斗。……学校はあっちの方。』
それだけ言うと、勇斗は今度こそ迷いなく歩き出した。
冷えた指先に伝わる、コーヒーの熱。
昨日まで死ぬことしか考えていなかった柔太朗の胸には初めて、「誰かを知りたい」という小さな、けれど確かな灯がともった瞬間だった。
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