彼女はフューシャピンクの総レースワンピースを着ていて、髪を纏め、耳と首にはお揃いのフラワーモチーフのピアスとネックレスをしている。
可愛いデザインだけれど、キラキラしているそれは絶対に本物のジュエリーだろう。
「こんにちは」
同様にシャンパングラスを掲げたエミリさんは、ウエーブのかかった髪を纏め、耳元には少し存在感のあるゴールドのピアスをつけている。
一見ノースリーブに見える黒のトップスは、ドット柄のシースルー袖がついていて、ほっそりとした腕を引き立てている。
チェーンが長めのペンダントトップには、まろやかな光を放つパールがついていた。
ボトムはベージュのワイドパンツらしく、そのスタイルがエミリさんに似合っている。
「恵はまだなんですね」
私はスタッフさんに椅子を引かれて春日さんの隣に座る。
「でも全然時間前だからOKよ。私たちは早めに着いちゃったから、先にシャンパン飲んでたの。朱里さんもどう?」
「はい、いただきます」
シャンパンを注文して少し話した頃、予約時間の五分前になって恵が現れた。
「……ど、どうも……」
私たち三人は、恵の姿を見て声なき悲鳴を上げた。
――可愛い!
恵はブラッドオレンジのシャーリングトップスを着ていて、それがイエベ秋の彼女にとても似合っている。
細身の彼女だから、胸元がクシュクシュつぃた生地も着こなせるし、大きめに開いたスクエアネックから綺麗な鎖骨が覗き、そこに黄色い宝石のラインネックレスが輝いているのも素敵だ。
短めのトップスの下からは、ハイウエストの黒いマーメイドスカートが覗き、膝下からはレースを使ったフリルになっていて、全体的にシンプルなのに華やかさもある。
前下がりボブは片方を耳に掛けるようにピンで留め、耳にはネックレスと同じ、黄色い宝石が縦に連なっているピアスが揺れていた。
「ハァァ!」
私は感極まり、サッとスマホを出すとパシャパシャと恵を撮影する。
「やだ! 見せたくない!」
真っ赤になって怒った恵はムスッとし、スタスタと空いている席に近づいてストンと座ってしまう。
「撮っちゃったもんね……」
けれど私はスマホをかざし、片手でピースしてみせる。
「あとで朱里もスクープしてやるからね……」
恨みがましそうに恵が言った時、春日さんはクスクス笑って「相変わらず仲がいいわねぇ」と言う。
そのあと、彼女は恵の分のシャンパンとコース料理を持ってきてくれるよう、スタッフに頼んだ。
「さーて、恵ちゃんの身に何が起こったのかなぁ~?」
個室からスタッフが出て行ったあと、春日さんはパンと手を打ってからスリスリと擦り合わせ、楽しそうに恵を見ている。
「それより春日さんは、神くんとどうなったんですか」
けれど恵がサラッと切り返すと、彼女は途端に真っ赤になり、モジモジしだした。
「えーっ!? やだぁ、それ聞いちゃうのぉ?」
「聞いてほしいくせに何言ってんだか……」
春日さんを見て、エミリさんがボソッと突っ込む。
「ずっと聞きたかったから教えてくださいよ~」
私がさらに煽ると、春日さんは「ふひひっ」と笑ったあと、神くんとのその後を話し始めた。
「出会ったあと、お互いの大体の情報は教え合ったのよ。それで、お互い結婚を意識する歳だし、面倒臭い家を抱えてるし、いっちょ真剣に付き合ってみようかという事になって」
私はパチパチパチと小さく拍手する。
「私、年上だから嫌じゃないか凄く気になっていたんだけど、ユキくんは全然気にしていないみたいで良かった。それで彼、年下なのに色んな事がスマートなの。エスコートも自然にしてくれるし、…………私、生まれて初めて男性にご馳走になっちゃった……!」
春日さんは両手をワナワナと震わせ、目を見開いて言う。
「面倒臭いこだわりを捨てられて、良かったじゃないですか」
恵がボソッと突っ込む。
「ご馳走処女奪われちゃった……。ぐふっ」
春日さんはニヤァ……と笑い、横を向いて不審な笑い方をする。
「その本性は、しばらく隠しておいたほうがいいわね。神くんの前で、どういうキャラを演じてるの?」
エミリさんに尋ねられ、春日さんはクネクネしながら言う。
「やっぱり年上だし、頼れるお姉さんって思ってもらいたいけど、意外とユキくんってしっかりしてて、『甘える練習もしてみてくださいよ』って言ってくれて……。どぅふっ」
春日さんはそこまで言い、盛大ににやつく。