アリィ「…寝起き最悪…。」
アリィはジークの背中におぶられながら起きる。
ジーク「…運び方荒かったか?」
ジークが心配そうに聞く。
アリィ「ううん。悪夢を見ただけ。」
イリア「それは嫌ね…。どんな夢?」
アリィ(別に話しても問題ないっか…。)
アリィ「ジークを殺す夢…。」
シリル「身内を殺すってそりゃ悪夢だね…。」
ジーク「それ前にも見たって言ってたよな。本当に大丈夫か?」
アリィ「大丈夫…。」
イリア「自分が殺されてるのに関しては何も言及しないの?」
ジーク「してもなぁ。あとじいちゃんに教えてもらったんだが、夢と現実だと反対の意味なことが結構あるらしいぞ。」
シリル「夢で不幸なことが起きればむしろいいことの暗示ってこと?」
ジーク「そうそう。」
シリル「なんか僕も言われたことあったかも!」
アリィ(あれはそういうのじゃないんだけどね…。)
「ジーク、下ろして。私1人で歩けるから大丈夫。」
ジーク「それは無理だ。大人しくおぶられてろ。」
アリィ「本当に大丈夫なのに…」
イリア「3人で決めたことだから観念しなさい。」
アリィ「イリアまで…」
イリア「命の恩人の体調が悪化したりなんてしたら大変だもの。…本当にありがとう。」
アリィ「どういたしまして。」
シリル「アリィちゃんが起きてくれて本当に良かったよ。もうずっとイリアが自分のせいだって責めててさ…2人でそれは違うよって言っても中々…」
イリア「…だって…」
アリィ「そうだったの?イリアのせいじゃないよ。強いて言うならサンドラのせいにしよう。うん。」
イリア「ええ…?」
アリィ「…あの攻撃は、私じゃなければ皆死んでたよ。だから私はあれが最善の行動だと思った。私で判断したことなんだから、イリアのせいじゃない。それともイリアはヒトの考えを変えられる凄い力でもあるの?」
そういっていたずらっぽくアリィはイリアに笑う。
イリア「…いいえ。」
アリィ「うん。じゃっこの話はこれで終わり!ねっ?」
イリアはこくりと頷く。
アリィ「それよりあの後どうなったの?」
ジーク「そっか。アリィは寝てたもんな。お前を治療してからそんなに時間が経たないうちに、サンドラ達とは別れたんだ。まぁでも、あそこでしばらく実験をするみたいだから戻れば、会えるかもな。」
アリィ「そうなんだ。…地底人って皆底なしに明るい気がする。」
ジーク「そうかもな。」
イリア「今はちゃんとした治療ができる一番近い町を教えてもらってね。そこに向かってるの。」
アリィ「そこまでしなくても…」
ジーク「気持ちは分かるが、今大人しく治療を受けてくれ。…また何かあったら、今度は死んでしまうんじゃって俺は怖いんだ。」
そう言ったジークの声は震えていた。
アリィ「…分かった。」
シリル「あ、そろそろジーク、交代しよう。ずっとジーク1人に背負ってもらうのは負担が大きいからね。ほら、アリィちゃんこっち。」
シリルが屈んで、アリィを受け入れようとする。
ジーク「あぁ、もうそんな経ったか。」
アリィ「……。」
ジーク「アリィ?」
アリィはジークの首に手を回す。そうしてジークから離れようとしない。
アリィ「…もう少しだけ、ジークがいい…。」
イリア「あら。」
ジーク「シリル、俺はまだ大丈夫だ。またキツくなったら言うから今はいい。」
シリル「分かったけれど…本当に平気?」
ジーク「ああ。久しぶりに甘えてくれたから、嬉しくって。」
アリィ「…口に出して言うのはやめて。恥ずかしいから。」
アリィはそう言うと、ジークの背中に赤い顔を隠す。
イリア「微笑ましいわねぇ。」
シリル「ねっ。」
アリィ「うぅ〜……。」
アリィ「ねぇ、ここって砂漠だよね?」
ジーク「ああ…。」
シリル「水はかなり貴重な町のはず…」
イリア「ええ…。」
一同「雨が降ってる…。」
1人の男性が4人に話しかける。
町のヒト「あっ!?なんだおめぇら!?傘持たずに来ちまったんか!?」
アリィ「傘も何も…雨が降ってること自体知らないから…」
町のヒト「あっれおかしいなぁ。町に手紙出したんだがまぁた悪魔に食われちまったか。はぁ…また送り直しか。めんどくせぇ…。」
町のヒトが話していると奥からもう1人、女性がやってくる。
奥から来た女性「ちょっとあんた!外に長居させて!お客さん溶けちまうよ!」
イリア「溶け…!?」
奥から来た女性「ささっ、うちでもよければ上がってって下さい。」
町の2人はぐいぐいとイリアとシリルの背中を押す。
シリル「わっ…ちょっ…いや力強いね!?」
ジーク「全く状況が読めないんだが…!?」
町の人「そりゃそうだ!命が危ねぇから!」
アリィ「酸性雨?」
町の人「おう。タチが悪いのが…普通の害のない雨も降るとこでな。あんたら運が良かったな。俺は地主としての責任で調査しないといけねぇから分かるんだが、今は普通の無害の雨だ。次いつ酸性雨になるか分からんがな。」
ジーク「あっっっぶな…!?」
シリル「地主さんってことはここで1番偉いヒトですよね?」
地主「一応、な。まぁでも堅苦しいのは俺は苦手だから好きなように接してくれ。あぁといっても名乗ってなかったな。それじゃ無理があるか。俺の名前は、セドリックだ。こっちは友人のブライア。」
ブライア「この通り町のヒトは、私含めて皆セドリックの家に避難しててね。」
イリア「そう…それなら治療は難しそうね…」
ブライアが言うと、イリアはしょんぼりと項垂れる。
セドリック「治療?別に俺の家で皆好き勝手出来る仕事してるし、結構物は揃っている自信があるから詳しく教えてくれねぇか?もしかしたら出来るかもしれない。」
ジーク「背中全体なんだが…その…言いにくいんだが…」
セドリックは何かを察したのか、ブライアに話しかける。
セドリック「ブライア、俺の代わりに見てくれ。」
ブライア「分かった。お客さん、ちょっと背中覗くよ。」
アリィ「うん。」
アリィがそう言うと、ジークはアリィに背を向ける。シリルもそれにしたがうように、アリィに背を向ける。
イリア「意外とそういうとこしっかりしてるわよね。貴方達。」
ジーク「当たり前だ。」
ブライア「うん、これなら治療できると思う。」
イリア「ほんと…!?よかったぁ…!」
セドリック「あっちの部屋に治療出来るやつが避難して好き勝手にやってるから、行きな。」
イリア「分かったわありがとう。私がアリィを連れてくわ。」
シリル「僕も行くよ。」
アリィは2人にあっという間に連れて行かれる。
セドリック「お客さん置いていかれちまったな。」
ジーク「…行動力がありすぎるのも困るな。あっそういや少し聞きたいんだけど…」
セドリック「おうなんでも聞いてくれ。」
ジーク「あー…多分皆の前で話しちゃいけないことな気がするから…こっちに…あ、いやヒト…」
セドリック「あぁそこは誰も使ってないから大丈夫だ。ブライアはここで待機しててくれ。」
ブライア「は!?なんで私が行ったらダメなんだ!」
セドリック「まぁまぁ…」
そういって鬼気迫るブライアを尻目にセドリックはジークと、誰も使ってない部屋に入る。
セドリック「それで、お客さんは一体何用で…」
ジーク「あのごめん。質問とは関係ないんだけど、この町の最高責任者ならもっと警戒心を持った方がいいと思う。」
セドリック「なんだぁブライアみてぇなこと言ってぇ。まぁよく言われるけどな。ブライアが強いから問題ねぇ。どうせ今も扉の前で聞き耳を立ててるだろうよ。」
ブライア「ギクッ」
セドリック「ブライアは俺の友人であり、俺の右腕なんだ。なんにも問題ない。それに言いにくい話なんだろ?」
ジーク「あ、あぁ…多分…?あの雨って…酸性雨じゃないよな?」
セドリック「…なんだ。お客さんには気づかれてたのか。」
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