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セドリック「あれは確かにお客さんの言う通り、酸性雨じゃねぇ。建築家とかなら一発で見抜かれるだろうな。普通、酸なら建物は脆くなる。多分お客さんは、この家の壁を見て気づいたんだろ?」
ジーク「ああ。やけに壁が綺麗で頑丈そうだったから。」
セドリック「嘘ついちまって悪かったな。お客さんには誠意を持って対応するのが我が町のモットーなんだが…こればっかりは…」
ジーク「セドリックさんの家に避難してる人は、皆雨なんて気にせず、楽しそうにしてる。混乱を防ぐためか?」
セドリック「あぁ。」
ジーク「やっぱり話しちゃダメなことだったのか…。よかった…あそこで言わなくて…」
セドリック「いやぁお客さんには気ぃ使ってもらって感謝しかない。調査中で、まだ詳しいことは分かってないんだが…アレは人だけを溶かすらしい。俺一人で調査するのは正直キツイから、報告がてらに人員を寄越せって申請書も付けてるんだが…毎回無事に辿り着かねぇのよ…。お客さんに聞きたいんだが、この町の近くで何か変なことはあったか?」
ジーク「…悪魔が昼に活動してたことくらい…でもその悪魔は死んだし…」
セドリック「ブライア。なんかいい考え思い浮かばねぇか?」
ブライアは返事をしない。
セドリック「仕方ねぇ。お前が盗み聞きしてたのを皆に言いふらすしか…」
ブライア「わっー!!わかったわかった!!って私だってこんなケース初めてなんだからわからんわ!!」
セドリック「そうかぁ。…あの国が分断なんてしなけりゃこともスムーズに済んだんだけどな。」
ジーク「あの国?」
こんこんとノックをする音が聞こえる。
シリル「すみませーん、ここに銀髪のヒト来てますかー?そもそも人いますかー?」
イリア「ここもハズレかしら…もう…どこに行ったんだか…」
ジーク「あ…忘れてた…ちょっと行ってきます。ありがとうございました。」
セドリック「おう。」
ガチャっとドアをジークが開ける。
ジーク「悪い、一言言えばよかったな。」
シリル「お、当たり」
ジーク「アリィは?」
イリア「任せてきたわ。彼女なら信用出来ると思う。」
ジーク「商人が言うなら間違いないな。とりあえず治療は出来るみたいでよかった。」
シリル「まぁアリィちゃんなら、何かあっても自分でなんとかしそうな気もするけどね。」
ジーク「あいつは人受けのいい人間に擬態するのが得意なだけで、結構気が強いとこあるからな…」
イリア「いいんじゃない?自衛には丁度いいと思うわ。」
ジーク「誰かにそれで迷惑かけたことも無いし、俺もそう思う。」
シリル「ジークは何してたの?」
ジーク「雑談。外でなにかあったか聞きたいらしくて、悪魔が来た話をしてた。」
シリル「そっか。」
セドリック「もう2人のお客さんもこっちに来てくれ。少し話がしたい。」
イリア「?分かったわ。」
ジーク(話すのか…)
セドリック「お客さん、もしかしてイリアさんか?」
セドリックはイリアを見ながら聞く。
イリア「ええ、でもなんで知って…」
セドリック「本人だったか!こりゃよかった!突破口が開けるかもしれない!っておお、すまなかった。いや、なにうちの民の1部がイリアさんにお世話になったことがあってね。噂は聞いてたんだ。」
イリア「さ、砂漠の向こうまで知名度があったのね…いやもう本当お世話になりました。何かご入用のものがありましたら、あっ失敬。こちら商会のカードです。」
セドリック「あぁいえいえこちらこそ。うちの者を贔屓にしてもらって…」
イリアとセドリックは深々と頭を下げる。
ジーク「…俺雨見てくる。」
難しい話をしようとしていると思い、ジークは逃げようとする。
シリル「させないよ。」
ジーク「ぐぇっ!」
それをシリルが上着の首襟を掴み阻止する。
シリル「1人だけ苦しみから逃れさせないよ。一緒に苦しもう。」
ジーク「はなせぇ〜!くっ、脳はないくせに力だけありやがって…」
シリル「ダメだよ。1人で楽しようなんて。」
シリルとジークがわちゃわちゃしている間に、さっさとセドリックは雨のことをイリアにも話す。
セドリック「そこまで難しい話じゃないから安心してくれ。報酬ならいくらでも払う。この雨の原因は特定できないか?」
イリア「…私としてはやってもいいけれど…」
ジーク「…しばらくアリィを休ませてやりたいから俺は構わない。」
イリア「それなら…。私も気になってたしいいわ。でもなんの成果も得られなければお代はいらないわ。」
セドリック「それは助かる。ありがとう。」
イリア「まだお礼を言うのは早いですよ。」
セドリック「別に客だとしても、好きなように接してくれ。…敬語使われると体全身が痒くなるんだ…。」
イリア「あら。それならお言葉に甘えて。」
セドリック「ただ、これだけは守ってくれ。1、絶対に外を出る時は傘を持っていくこと。傘はこちらから貸し出す。2、晴れていても傘をさしていること。何かあってからじゃ遅いからな。3、外出後は必ずすぐに、水で体を洗い流すこと。これも、もちろんこちらから場所を提供する。4、俺とブライア、お客さん達以外には話さないでくれ。無理に怖がらせたくはないからな。」
イリア「分かったわ。契約書を書いときましょうか。」
セドリック「そうだな。」
シリル「で、引き受けたわけだけど…どうやって調べるの?」
イリアは空を見上げながら答える。
イリア「雨ってどこから来てると思う?」
シリル「空?」
イリア「それも正解。でももっと前に雲になる前。」
シリル「なんだろ…?」
イリア「正解は近くの水場から。適当なところから、採取して試してみましょう。」
シリル「…ねぇ思ったんだけど、これくらいなら1人でも調べられたんじゃ…」
イリア「一般人はね。セドリックさんが人手を欲しがったのは自分がやすやす動けない立場なのを自覚してるからよ。だから、調べることが出来なかった。こんな環境で統治者まで失ったら、それこそもうここは終わりだもの。ブライアさんは護衛だから、外す訳には行かない。でも他に知識のある人もいない。それで私ってわけ。」
シリル「…なんだか思ってたよりしっかりした人だね。セドリックさんって。」
イリア「そうね。…そういやジークは?」
シリル「とっくにアリィちゃんのとこに行ったよ。」
イリア「あらまぁ。好きねぇ。」
シリル「ちょっと過保護な気もするけどね。」
イリアはそう言いながら、採取した水を手の甲にかけようとする。イリアの腕を掴み、咄嗟にシリルは止める。
イリア「…離して。」
シリル「離さない。今何しようとしたか分かってるの?」
イリア「分かった上で言ってるの。これが1番手っ取り早いもの。」
シリル「でも…!」
イリア「大丈夫よ。違和感を感じたらすぐに洗えばいい。」
シリル「そういう問題じゃ…!」
イリア「…私は自分の体を傷つけることで、罪悪感を誤魔化してやっと安心感を手に入れてる。私の為にもお願い。」
それでもシリルはイリアの腕を離さない。
イリア「…それにレディーに暴力は振るうものじゃないわ。少し腕が痛いの。」
シリル「っごめん…!」
シリルは慌てて手を離す。イリアの腕にはシリルが掴んだ跡が残っていた。
イリア「いいわ。説明しなかった私も悪いわ。」
そう言うと、イリアは手の甲に少量の水滴をつける。
シリル「……。」
シリルはまるで自分の不甲斐なさを堪えるかのように拳を握りしめる。
イリア「そんな顔しないで。さぁどういう変化があるか分からないから、早めにセドリックさんのところに戻りましょう。」
シリル「…君はまだ諦めてないんだね。死ぬのを。」
イリア「…ええ。でも安心して。私は無責任に仕事を放り出す商売人じゃないから。」