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エレベーターが二階で止まった。
扉が開くと、ムッとくる血の臭いと熱気が入ってきた。
ぼくは顔をしかめ。優しい看護婦さんの方を見ると、血塗れのマスクは涙で濡れていた。
苦しいのかな?
すぐに羽良野先生を見つけてあげるからね。
ぼくには、羽良野先生なら治療の仕方を知っているはずだと確信があった。
この事件は謎だらけだ。
でも、人による事件だと思う。
そう、怪物だけど人間なんだ。
ぼくは窓から外を覗いた。
月は重い雲に隠れて、雨が降っている。
早く。父さんと母さんも連れて、この病院から逃げないと。
ぼくは動かない足を運んで、廊下を歩いていくと。
「羽良野先生?」
羽良野先生は廊下の中央に立って、夜空を見つめていた。
片手に持った鉈のような形状の刃物は、血だらけで、ところどころ欠けていた。
ボロボロの刃物には、木製の木屑がついている。
「歩君? どうして遠くへ逃げてないの?」
こちらに向いた羽良野先生の顔には、人間とは思えない恐ろしさがあった。
ぼくはブルブルと震えだした両足を叩いて、勇気を振り絞った。
「羽良野先生。あの看護婦さんが怪我をして、それだけじゃなくて。体が動かないみたいなんだ。助けて」
羽良野先生は恐ろしい形相のまま首を傾げている。