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2話ー正義と善意ー
日本が帰ってくる。
今は、日本の為に夕飯を作っている。
どうせ食べてもらえないけど。
随分と下手になった料理を運ぶ。
ドイツ「…あ」
思いっきり落としてしまった。
ガラスが足に刺さって血が出ている。
なのに痛みは感じない。
ドイツ「どうしよ、お金、もうないのに」
イッヒは落ちた破片も片付けられない。
昔は素早く行動してたのに…
日本「ドイツさん、ただいま」
ドイツ「あ、日本…おかえり」
日本「それ、どうしたんですか?」
ドイツ「ごめん…落として…」
日本「…そうですか」
日本「危ないですよ?私が片付けてあげます」
ドイツ「ええっ、でも…」
日本「いいですよ、大丈夫です」
ドイツ「ごめん…お金ないのに…」
日本「いいえ」
落ちた破片を片付ける日本の姿を
見つめて立ち尽くす。
どこか魅力的で寂しい背中。
ドイツ「で…でもっ…」
ドイツ「反省はしてるんだ…」
日本「…笑」
日本は笑っている。
それは確実にいつもの笑顔ではない。
その顔は焦っているようにも見える。
ドイツ「に、日本…?」
日本「はい、何ですか?」
すぐに何時もの笑顔に変わった。
ドイツ「いや、何か変だったから…」
日本「…俺が?」
日本は仕事の時は私って言ってたっけ。でも、イッヒの前だけでは俺って言う。そう。イッヒだけ。
付き合ってもないのに。
ドイツ「ああ…」
日本「いやいや、俺は正常ですよ」
そう言って日本はイッヒの首にキスをする。いつもなら嬉しいのに、その日は温度を感じなかった。
日本「いや…でも、びっくりしましたよ」
ドイツ「だからごめんって…」
日本「てっきり部屋で⬛してるのかもと…」
ドイツ「馬鹿、そんな事しねぇよ…」
ドイツ「でもありがとな」
日本「いえ、当然のことですので」
ドイツ「…日本」
日本「?どうかしましたか?」
ドイツ「もっと眠って、ちゃんと食べて…」
パシッ
ドイツ「痛…ッ」
日本「付き合っても居ないのに…笑」
日本「そういうの大丈夫ですよ」
ドイツ「…ごめん」
イッヒが悪い。最近日本との空気が悪いのも全てイッヒのせい。日本はただ真面目に働いてるだけ。
…そう、それだけ。
日本「そろそろ会社に戻りますね」
ドイツ「ま…待ってくれ!」
ドイツ「ご飯…作ったから…」
日本「…ッ」(ごめん、ドイツさん)
日本「仕事があるので」
日本「ごめんなさい」
ドイツ「…そうか」
ドイツさん、ごめん。そんなに悲しまないで。
…今度ちゃんと謝らないと。
ドイツ「一応包帯巻こ、感染症になると悪いし」
雑に包帯を巻いた。
こんなので対策になるのか分からない。
ドイツ「…喉渇いた」
ドイツ「水取りに行こ…」
コップを持って水を汲むことまでは出来た。
だけど手が震えて自分に水がかかった。
ドイツ「え、」
ドイツ「っ…」
水を汲むことも出来なくなってしまったと知り、複雑な気持ちだった。
日本に…やってもらえるかな
段々と出来てたことが出来なくなった気がする。
これも、まだ鬱が治ってない証拠なのかも。
他の人はもっと酷い理由がある。
イッヒは…早く会社に行かないと。
イッヒは違う。
これは休職じゃなくてずる休み。
もっと日本みたいにちゃんと…
そうして傷に塩を塗る。
…お腹すいたな
そういえば最近何も食べてなかった。
重い足を引きずって食べ物を探す。
何とも醜い姿なんだろう…
殆ど空の冷蔵庫を漁る。
随分と昔に買ったプレッツェルがある。
まあ…食べれると思う。
ドイツ「…」
何とも言えない味だった。そりゃそう。何年も、ずっと冷蔵庫に入れてあったからな。
ドイツ「うッ…え”ぇ…」
気持ち悪くて吐いてしまった。嘔吐処理位は何とかできるか。というか日本にしてもらうわけにはいかない。
目眩を耐えながら嘔吐処理へ向かった。
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