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白山小梅
白山小梅
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「……柊は」
「うん」
震える声で名前を呼ぶと、返事をくれた声がやっぱり優しくて、ぽろっと涙が零れそうになった。
柊のことが、好きだから。
あたしにしてよ、あたしだけにしてよ。
迷惑かけないから、邪魔にならないから。
そんな独りよがりな気持ちに蓋をして、口を開く。
柊から、もう、逃げたくないから、ハッキリさせたい。
「……柊にとって、あたしって何?」
重たいくちびるを開くと、アイスブルーの瞳が一瞬揺らいだ。
心臓が耳にくっついたと錯覚しそうな程、鼓動がやけに騒ぐ。
「なにって、セフレ?」
柊が紡いだのは、たった二語。でもその単語はあたしの心臓をざっくりと貫いた。
わかっていたはずなのに、いざ突きつけられるとやっぱり、辛い。
高校の時は友達とも呼べない友人で、今は破綻したセフレって、あたしは結局、柊にとってそのくらいの存在らしい。
でも、あたしは気持ちを隠すのが昔からじょうずな方だから……だから、ちゃんと笑えた。
「……だよね」
「でも、」と言いかけた柊の言葉を「ごめん」でかき消して、無理して笑顔をつくる。
「ー……しばらく、柊とは会いたくない」
涙と一緒に吐き出した精一杯の言葉に、柊は、「……わかった」と言うだけだった。きっと、面倒くさそうにしていたはずだから、顔を上げることはどうしても出来なかった。
柊のことを考えはじめると、自分が自分でなくなっていく。
“ ほとりに恋愛は向いてない “
芽依の読みは間違いじゃない。これ以上柊のことが好きになったら、壊れた時に二度と立ち直れないかもしれない。
恋愛なんか、本気でするんじゃない。
余力を残して楽しむものだ。柊に全部渡したとして、重さで潰れてしまうだろう。
元に戻さなきゃ。” 好き “を一旦閉じ込めていないと、柊とは一緒に居られない。
柊が何を言いたかったのかも、柊がくちびるを噛み締めていたことも、あたしは分からなかった。
柊はあたしのバイト先に来なくなった。唯一のきっかけはあの時と同じく、一瞬で壊れた。
せっかく出来た日曜の約束も” 行かない “と断った。
俺は柴崎のバイト先に行けなくなった。唯一のきっかけはあの時と同じく、一瞬で壊れた。
せっかくこじつけた日曜の約束も” 行かない “と断られた。