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side 大森
電話のあと、すぐにメッセージが来た。
“なにあれ?脅し?”
“若井くんに言いつけるとかダサくない?”
僕の指が止まる。
胸がざわつく。
さらに追撃。
“調子乗らないでくれる?”
“こっちだって色々知ってるから”
涼ちゃんが横から見る。
「はぁ。ブロック。」
即答。
でも僕は動かない。
動けない。
「…怒らせたかもしれない、」
若井の目が細くなる。
「怒らせて何が悪いの?」
その夜。
SNSの匿名アカウントから匂わせ投稿。
“某M、裏では偉そう”
“コネ使いまくり”
完全に名前は出していない。
でも分かる人には分かる書き方。
僕の顔色が変わる。
「ッ、僕のせいで、っ」
またそれ。
若井が低く言う。
「違う」
涼ちゃんも続く。
「悪いのは100%向こう」
でも僕の中に罪悪感が残る。
“僕が断ったから”
“僕が怒らせたから”
その思考が消えない。
数日後。
相手からまた連絡。
“話せる?”
“ちゃんと誤解解きたい”
会うのは危険。
でも、 逃げ続けるのも怖い。
僕はふたりを見る。
「……自分で話す、」
涼ちゃんが心配そうに眉を下げる。
若井は数秒見つめて。
「近くにいるから」
それだけ。
カフェ。
向かいに座る相手は不機嫌。
「おい。大げさにしすぎだろ」
開口一番。
「俺、そんな悪気ないんだけど笑」
僕の手が震える。
でも今日は逃げない。
「悪気なくても、僕のこと利用してましたよね」
相手が笑う。
「は?お前も得してただろ」
その言葉で、胸がざくっとする。
一瞬揺れる。
でも、僕は深呼吸。
「もう協力しません」
はっきり。
相手の目が変わる。
「今さら?」
「はい、今さらでも」
声は少し震えてる。
でも続ける。
「名前も貸さない。 紹介もしない。
とにかく、 僕を使わないでください」
静かな宣言。
沈黙。
相手は舌打ち。
「使えねぇな」
その一言。
前なら折れてた。
今日は違う。
「……それでいいです。」
立ち上がる。
足は震えてる。
でも止まらない。
店を出た瞬間。
角から涼ちゃんが飛び出す。
「どうだった!?」
後ろから若井。
僕は少し笑う。
「……言えた、っ!」
涼ちゃんが泣きそうになる。
若井は短く頷く。
「よく頑張った」
その一言で。
今までの重さが少し溶ける。
でも、 相手はしつこい。
業界内で微妙な噂を流し始める。
“大森は急に態度変わった”
“裏で圧かけてくる”
小さな火種を巻き始める。
それを見て、若井は動いた。
感情じゃない。
冷静に。
・スクショ保存
・共通の関係者に事実確認
・過去の類似行為の証言収集
そして事務所に共有。
さらに。
その相手が別件でも問題を起こしていたことが発覚。
積み重なる証拠。
正式な注意。
今後の取引停止。
業界内での信用が一気に落ちる。
ある日。
相手から最後のメッセージ。
“悪かった”
“もう関わらない”
短い。
余裕のない文章。
僕は画面を見つめる。
返信はしないで ブロック。
今度は迷いなし。
夜。
三人でソファに座る。
涼ちゃんが僕の肩に寄りかかる。
「ちゃんと断れたね」
僕は小さく笑う。
「怖かったけど」
若井が言う。
「怖くてもちゃんと言ったでしょ」
その事実が大事。
僕はふたりを見る。
「次は最初に相談する」
涼ちゃんが即答。
「そうして」
若井も頷く。
「ひとりで抱えるな」
僕は深く息を吐く。
もう、 “頼られる=断れない”じゃない。
優しさは 差し出すもの。
奪われるものじゃない。
そして。
奪おうとする相手は。
もう、近づけない。