___ 太宰が死んだ、
自殺だった。 ___
部下からの申告だった。
「中原…、幹部……」
「あぁ?何だよ」
黒いスーツ、黒いサングラス。そんなカタギには見えない格好で怯えながら話しかけられる。
「首領が」
「…太宰、首領に何かあったのか?」
「それが、」
「早く云え」
凍りついたような顔で、太宰の名前が出される。前みたいに、仕事をサボった?川に飛び込んだ?……自殺か、そこまで出た所で、何故か焦る。嫌いだ、死ねばいいと思っている、太宰さえ居なければなんて、何度も思った、愛車に爆弾を、喧嘩だって、何回も、何回も、なのに、心の何処かで太宰が死んだと思った。何故か分からない、思わず声に怒りが乗った。
「首領が、、ビルから飛び降りた、そうです」
「……な訳ねェ、それ、誰から、」
「白い死神、中島敦、さんが、マフィアを抜ける、とも、」
気持ちに整理がつかなかった。殺せなかった悔しさ?中島敦への怒り?ぐちゃぐちゃになって、零れる様に話す俺に、恐る恐ると言ったように言葉を紡ぐ部下。
「巫山戯んな、彼奴は、太宰は、俺が、」
「……出て行け」
「失礼します、」
彼奴、つい言ってしまった。生きていたものなら、どうなっていたか、目頭が熱くなり部下に声を掛ける。何も言わずに逃げるように何処かに行った此奴の判断は恐らく正しい。
「俺が、殺るって、、じゃないと、俺は今まで、なんで、」
「糞ッ!!俺は、太宰に……、太宰…を、」
大きく音を立てて椅子が壁にぶつかる。蹴りを入れた。物にあたってどうにかなるとは思わないが、冷静は保てなかった。俺は太宰をどうしたかった?ただ殺すならチャンスはあった。分からない、噛み締めた唇からは鉄の味がして、握った手は紅い。周りにあるものを手当り次第に投げつけられた壁はへこんだり、よごれたり。
「なんでだよ……、太宰」
餓鬼みたいに叫んで、壊して、何か分からない黒い感情がぐるぐると回り、ぽつりと呟く。
それから、壊して、壊して、破壊して、叫んで、組織を三つほど滅茶苦茶にした後、拘束された。次の首領は俺。そんな称号欲しくない、
太宰を超えて、笑いながら、葡萄酒を開ける、いつか成し遂げてやると思った、太宰を殺す、と云う人生の目標。それも壊された。動機も分からない自殺に。太宰が居ない世界は酷く狭く感じて、つまらない。身動きを取るたびにじゃらじゃらと鎖の音がしんとした無機室な部屋に響く。拘束具の締め付けと冷たさで、冷静さを取り戻す。嗚呼そうだ、首領になったんだ、それがあの世だとしても
「見ておけ、糞太宰」
つい、声が漏れる。前みたいに笑えないけど、
先ずは、何をしようか。
コメント
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1番読みたかったストーリーでした!!本当にありがとうございます🙇♂️
あ、あぁ、アァァァァァァァァァ、 中也ァァァァ