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雑貨屋を出て、夕暮れの街を歩いている。出水先輩はいつもみたいに軽口をたたいて、私の隣を歩いてる。
『なあ、ナマエ。さっきのマグカップ、どうだった?気に入ったか?』
『まあね!……でも先輩って、なんかずるいなあ〜』
ぽつりと言ったら、出水が少し驚いた顔をした。
「え、なんで?」
『だって、誰にでも優しくて。多分、私もみんなと同じ扱いなんだろうな、って思うから』
言葉にしちゃえば、なんてことない。でも、口にするのは簡単じゃなかった。
「……そんなことないよ」
出水は真面目な顔で、でも少し照れくさそうに笑った。
「俺はさ、ナマエだけは特別に思ってる」
『……えーほんとー?』
「うん。だから無理すんな、って言ったんだ」
言葉の重さが胸に響いた。ほんとはそんなことないよね、
『ありがとう、出水先輩』
少しだけ肩の力が抜けて、自然に笑えた。
その時、スマホが震えた。
画面に映るのは、本部からの緊急任務の通知。
「よし、行くか」
出水の声がいつもの軽さを取り戻す。
『了解! 先輩、負けないよ!』
笑い合いながら、ふたりは駆け出した。
今日も、いつもの“ふたり”で。