「んもう、ぼーっと立ってないでコユキ殿も探してよぉ! この辺りなのでござるが…… ふうぅ!」
傘地蔵の傘を被り、アリッサムの繁茂(はんも)している花壇を探していた善悪がコユキに向けて非難の声を上げた。
法衣に古臭い編み傘がベストマッチで割かし格好良い。
「ああ、うん、ええとこの辺なのん?」
コユキも善悪の近くの植え込みに頭を突っ込んで探し始めるのであった。
ガサガサガサガサガサガサガサガサ…………
「おぉ! これは……? うん! 見つけたでござるよぉ! やったぜベイビーっ! ゲットだぜぇ、でござるっ!」
「そマ? マジで見つけたの善悪、見せて見せてぇ!」
植え込みから顔をずぼっと抜いたコユキは傍らで佇む善悪に駆け寄り、その手に握られた金属製の箱、二本のワザとらしいレバーと、なんちゃって八木式アンテナが取り付けられたものを見つめて言ったのである。
「なにこれ、錆(さび)っサッビッじゃん……」
言葉のそこかしこに非難する意思がはっきり込められていたが、その言葉を向けられた善悪はキラキラした瞳で質素なコントローラーを愛しそうに撫でまわし、眺めまわして鼻息を荒げていた。
「なによ、キモイわね~、こんなのがそんなに嬉しいのん?」
「うんっ! これがショウタロ君のコントローラーでござるよ! 信仰を受けたら神って聞いた時から絶対にあるだろうって仮定していたのでござる、赤い影を求めて伊賀へ? はたまた丞相(じょうしょう)の羽扇を求めて中国の五丈原(ごじょうげん)へ? 色々悩んだのでござるが、結果! 『鉄人のコントローラー』に決めてよかったのでござる! やったー! ワーイ! でござるぅ!」
無邪気に喜びまくる幼馴染の顔を見ているうちに文句を言う気も失せてしまったコユキは、善悪に近づいて改めて確りとコントローラーを見つめて聞くのである。
「あれれ、善悪! ココに意味ありげな真っ赤なボタンがあるわよ? 何だろねコレ?」
ひと際鮮やかな赤いボタンが眼に入った瞬間に言いながらすぐさま押そうとする軽く狂ってしまっているコユキをたしなめる善悪である。
「ば、馬鹿っ! 押してはいけないのでござるよ! ダメダメェェェェーっ!」
いつに無く、ガチギレっぽい仕草で、慌てて止めた善悪はコントローラーを見せながら言葉を続けた。
「ほらここ見てよ、『緊急時以外押下禁止』ってちゃんと書いてあるでござろ! こういうの守らないとエライ事になるんだからね!」
「へ? ああ、そうなのかな? エライ事って何が起こるんだろ?」
「一説では、横っちょの山が光り輝く感じの氏は言い残したらしいのでござるよ」
「な、なんて?」
善悪はいつも以上にその表情を険しくして、メッチャ低い声で告げたのであった。
「なんでも…… 人々から希望が消える、らしいのでござる、よ……」
コユキは戦慄しつつ答えるのであった。
「やだ、なにそれ…… 恐い……」
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