テラーノベル
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校門をくぐった瞬間、私は足を止めた。
(…?)
視界の端に、見慣れない文字が浮かんでいる。
【生徒A】
好感度:32
属性:モブ
イベント関与率:低
(…文字?)
瞬きをする。
だが、消えない。
(まさか…)
私は、そっと隣を歩く春人を見る。
【一ノ瀬 春人(幼なじみ/攻略対象①)】
好感度:78
性格:世話焼き
現在イベント:一緒に登校(進行中)
(ーー出ましたわ!!)
思わず声が出そうになるのを、必死で飲み込んだ。
(ステータス可視化…!しかも攻略対象表記つき!)
前世の世界にはなかった。
けれど、乙女ゲーム系転生作品では定番中の定番。
(これは…便利、ですわね。)
同時に、背筋が冷えた。
(…好感度が、数字で見えるということは、)
上げすぎれば、イベント。
下げすぎれば、バッドルート。
(調整必須ですわ…!)
そんなことを考えながら、教室に入る。
すると。
【クラスメイトB】
好感度:40
「…転校生かな?」
【クラスメイトC】
好感度:45
「春人君と仲良さそう。」
(視線の理由まで表示されますの!?)
情報量が多すぎる。
(落ち着きなさい。ヒロインは、無害で、控えめで、空気ですわ。)
私はできる限り存在感を消し、席についた。
…そのとき。
教室の奥が、ざわついた。
(この反応…)
嫌な予感がして、そちらを見る。
窓際。
一人の男子が、まるで当然のように注目を集めていた。
(…あの方ですわね。)
そして、彼の頭上。
【一条 透(人気者/攻略対象②)】
好感度:65
性格:ナルシスト
自己評価:SSS
現在の関心:花園いちご
(…ナルシスト)
はっきり、断言されていましたわ。
(自己評価SSS…ずいぶん健全な自己愛ですこと。)
一条 透が、こちらを見て、にこりと笑った。
(見ない。関わらない。近づかない。)
そう決めた、はずなのに。
「花園」
名前を呼ばれた。
【イベント発生】
《人気者に呼び出される。》
(…はい、強制イベント。)
逃げ道は、ありませんわね。
私はゆっくり立ち上がり、廊下へ向かった。
二人きり。
彼は、鏡を見るみたいな動作で、窓ガラスに映る自分の顔を軽く整えた。
(…今、身だしなみを?)
「初登校だよね。」
「…はい」
「どう? 僕の学校。」
(主語が大きいですわね。)
「立派ですわ。」
無難に答えると、彼は満足そうに頷いた。
【一条 透】
好感度:67(+2)
(上がりましたわね…)
「君さ、」
一歩、距離を詰められる。
「さっきから、周りを見すぎ。」
(バレておりますわ。)
「でも、僕を見るときだけ、露骨に避ける。」
(それは…危険だからです)
「傷つくなあ。」
そう言いながら、まったく傷ついた顔ではない。
むしろ。
【一条 透】
自己満足度:上昇
(この方…自分が注目されている前提で生きてますのね。)
「安心して。」
一条 透は、余裕たっぷりに微笑んだ。
「僕は、人気者だから。」
(知ってますわ。)
「君が僕を意識するのも、自然。」
(してませんわ。)
「でも大丈夫。ちゃんと、僕がリードしてあげる。」
(結構ですわ。)
私は、深く息を吸った。
(この世界…数字とイベントと、自己愛でできていますのね。)
そして、確信した。
(ヒロインという立場は、やはり、危険。)
私は微笑み、完璧な距離を保ったまま、言った。
「ご親切にどうも。ですが私は、何もあなたのこと知らないので遠慮しておきますわ。」
【神崎】
好感度:68
興味:増大
(…減りませんの!?)
神崎先輩は楽しそうに笑った。
「いいね。そういうの、嫌いじゃない。」
(攻略対象は、だいたいそう言いますわ。)
教室へ戻る途中、私は心に誓った。
ステータスが見えるなら、イベントは、回避できる。
そう。
(この世界では、断罪ルートを、数値管理で潰しますわ。)
元・悪役令嬢の、慎重すぎるヒロイン戦略が、静かに始まった。
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