すまない先生→す Mr.赤ちゃん→緑Mr.ブラック→黒
Mr.銀さん→銀 Mr.バナナ→黄 Mr.レッド→赤
Mr.ブルー→青 Mr.マネー→金
3:波乱の水しぶき
『皆様、お待たせいたしました! 本日最後を飾る、波乱万丈のイルカショー……開演です!』
高らかなアナウンスがスタジアムに響き渡ると同時に、観客席のボルテージは一気に沸点へと達した。最前列、降りかかる水を真っ向から受ける特等席に陣取った8人は、まるで決戦の地へ向かう戦士のような面持ちで、レンタルした透明なカッパの裾をぎゅっと握りしめていた。
「おい、始まったぞ……!」
レッドが低く呟き、身構える。
その直後だった。
それまで鏡のように静まり返っていたプールの水面が、中心から爆発したかのように盛り上がった。
バッシャーーーン!!
三頭のイルカが並んで空高く跳ね上がり、その巨大な尾びれで水面をこれでもかと強く叩きつけた。降り注ぐのは「雨」などという生易しいものではない。大粒の水しぶきが顔や体を打ち続ける、容赦のない水鉄砲の乱射だ。
緑「うわあああ! 冷てぇぇぇ、けど最高だぜッ!」
赤ちゃんが歓喜の悲鳴を上げる。しかし、その声は轟々と鳴り響く水の音にかき消されていく。カッパのフードを被っていたものの、あまりの勢いに首元から冷たい飛沫が侵入し、背中を通り抜けていく。だが、隣に座るレッドは「ははっ、すげぇなこれ!」と豪快に笑い飛ばし、飛んでくる水塊を正面から受け止めていた。
金「はぁぁぁぁっ! 俺はこの程度の水では倒れない」
マネーが立ち上がり、両腕を広げて豪快にポーズを決める。しかし、直後にイルカが放った追撃――ピンポイントで放たれた尾びれの一撃が、無防備な彼の胸元を直撃した。
金「ぶはっ……!?」
無惨にも吹き飛ばされそうになるマネー
黃「だから言っただろう、欲張るからだ」と苦笑しながら支える。
「Mr.マネー、今のは結構ダサいですよ」
ブラックは、激しい水しぶきが舞う中でも、計算し尽くされた角度でカメラを構えていた。カッパの隙間から、愛用の精密機器が濡れないようミリ単位で調整しながら、淡々とシャッターを切り続ける。彼はイルカの動きを先読みし、大きな水の塊が飛んでくる瞬間だけ最小限の動きで回避するという、まさにIQ200らしい「神業」を披露していた。
銀「ブラック…よくそんなに動けるな」
緑「わはは! 水が気持ちいいぜ! 」
赤ちゃんは最前列の柵を掴んで、カッパをバタバタとさせながら飛び跳ねる。
銀「赤ちゃん、身を乗り出すな! 落ちたら溺れちまう!」
銀さんが必死に赤ちゃんの体を支えるが、彼自身も頭からバケツをひっくり返したような水を被り、も早く誰が誰だか分からないほどにびしょ濡れだ。カッパの意味をなさないほどの水量に、「カッパの意味…全然ないじゃん」とボヤきつつも、その口元には楽しそうな笑みが浮かんでいた。
その時だった。
プールの中心から、一際大きな影が浮上してきた。このショーの主役であり、圧倒的な知能と体格を誇る巨大イルカ「大将」だ。
大将は悠然と8人の目の前まで泳いでくると、ピタリと静止した。そして、賢そうな瞳を細め、少しも息を切らさずニコニコと笑っているすまない先生を、じっと見つめたのである。
「わぁ……とても大きいな! このイルカ、僕たちに挨拶してくれているのかな?」
先生が感心したように声を上げた、その瞬間だった。
イルカは地面に落ちる氷柱のような速さで、音もなく水中に潜った。
青「……来るぞ、一番大きいのが!!」
ブルーが叫ぶ。
次の瞬間、大将が水中で高速回転を始め、ドリルのような勢いで巨大な水柱を巻き上げた。
バゴォォォン!!
「うわあああああ!!」
会場全体から、悲鳴にも似た大歓声が上がる。
先程までとは比べものにならないほどの水の質量が、8人の頭上に降り注いだ。それはもはや飛沫というレベルではなく、滝そのものが落ちてきたかのような衝撃だった。すまない先生たちはもちろん、後方の観客席まで巻き込むほどの凄まじい勢い。
視界が真っ白に染まり、潮の香りが全身を包み込む。
1時間前にいた、あの「静寂な青の世界」とは正反対の、荒々しく、力強い「躍動する青の世界」。
8人の頬を濡らしているのは、プールの水だけではない。興奮と、驚きと、このメンバーでしか味わえない熱い温度だった。
ショーがクライマックスを迎え、アップテンポな音楽が鳴り響く中、イルカたちが一斉にフィナーレのジャンプを決める。
キラキラと空中に舞い散るダイヤモンドのような雫。
その光景を背景に、8人はお互いのずぶ濡れになった姿を見て、誰からともなく吹き出した。
緑「おい、ブルー! フードの中に魚でも入ってるんじゃねぇか?」
青「入ってねーよ!赤ちゃんこそ入ってるんじゃねぇか?」
金「はぁぁぁぁっ! 最高のショーだったな!」
黄「あぁ、このメンバーでしか味わえない良さというものがあった」
カッパの隙間から漏れる笑い声が、スタジアムの熱気と混ざり合い、夏の潮風に乗って空高く響き渡る。
す「いやぁ本当に凄いショーだった!感動しちゃったよ〜!」
す「風引かないようにレンタルされているタオルを借りにいこうか!」
すまない先生の提案に、全員が声を揃えて「はい!」と叫んだ。
4:海テラスカフェ
イルカショーでずぶ濡れになった体を乾かした8人は、海テラスカフェへと向かっていった。今の時刻は13時、丁度お腹がすく頃だ。
カフェの扉を開けると、そこには言葉を失うほどの絶景が広がっていた。三方が全面ガラス張りになっており、その先にはテラス席が突き出している。視界を遮るものは何もなく、キラキラと太陽の光を反射して輝く太平洋が、水平線の彼方まで続いている。
赤「おぉぉ! 最高に気持ちいい場所じゃねぇか!」
レッドが潮風を吸い込みながら、真っ先にテラスの特等席を確保した。
銀「……あぁ。さっきまでの激しい水の音とは違って、波の音が心地いいな」と息をつきながら隣に座る。
8人はメニュー表を広げた。そこには水族館ならではの工夫を凝らした料理が並んでおり、空腹の彼らをさらに刺激する。
す「よし、みんな決まったね! すいませーん!」
すまない先生が店員を呼び、皆それぞれが注文を済ませていく
注文を終えてしばらくすると、まずは赤ちゃんの前に可愛らしい一皿が運ばれてきた。
「イルカプレート」だ。
緑「うぉぉ! イルカさんの形のご飯だ! 魚のフライもついてるぜ!」
赤ちゃんは目を輝かせ、小さなフォークを握りしめる。
緑「いただきまーす! ……うめぇっ!! このメシ!まじでうまいぜ!!」
無邪気に頬張る赤ちゃんの横で、次に届いたのはレッドの料理。真っ赤なスープが目を引く「激辛・シーフード担々麺」だ。
匂いを嗅ぐだけで鼻の奥がツンとくる
赤「へへっ、これだよこれ! 海に来たからって、爽やかなもんばかりじゃ物足りねぇ。……ズズッ、辛ぇ! いい辛さじゃねぇか!エビと貝のダシが効いてて、箸が止まんねぇぜ!」
汗をかきながら麺をすするレッドを横目に、ブルーの前に置かれたのは、世にも奇妙な青色の料理。
「スカイブルー・シーフードカレー」だ。
青「おぉ……本当に青いな……パクッ。ん! 見た目はアレだけど、味は本格的なシーフードカレーだ。まろやかで、海の香りがするぜ!」
続いて、銀さんの前には「レモン風味のあっさりハンバーガーセット(ポテト付き)」が。
銀「お、ポテトが山盛だ!……ぱくっ。おぉ、レモンの酸味が効いてて、うまいな!パティも肉厚で食べ応え抜群だ!」
銀さんが満足げにポテトをつまんでいると、その隣でマネーが上品にフォークを動かす。彼の前にあるのは「たらこクリームパスタ」。
金「はぁぁぁぁっ! このプチプチとした食感、 クリームのコクが、絶妙にマッチしているぞ!」
黒「Mr.マネー、口の横にクリームがついていますよ」
そう冷静に指摘するブラックの前には、真っ黒な料理が置かれていた
「めちゃ黒! イカスミパスタ」だ。
黒「……イカスミ。非常に興味深い。……ズルッ。ふむ、見た目のインパクトはありますが、味は良いですね。歯が黒くなるリスクもありますけど、それに見合う価値のある味です」
ブラックが楽しそうに食べていると、バナナが上品に箸を動かした。
黄「やっぱり海に来たらこれだな。『特製海鮮丼』。ほう、魚が新鮮で光っているな。マグロもタイも、脂が乗ってて最高だ。今度作って皆に振る舞ってやるか」
青「バナナって食べ方上品だよな、流石元王子ってところだ」
黄「そうだろうか?まあ礼儀は叩き込まれていたからな」
そんな会話をしていると、店員さん2人がかりで巨大な皿が運ばれてきた。
「お待たせいたしました。『海テラスカフェ特製・海の幸ピラフ』……の、超特大盛りです」
店員さんが2人掛かりで運んできた「それ」がテーブルに置かれた瞬間、カフェのテラス席から全ての音が消えた。
それはもはやピラフという名の料理ではなかった。皿の上にそびえ立つ、黄金色の巨大な岩山。エビやカニが岩肌に張り付く化石のように見えるほどの、圧倒的な物量。
「………………え?」
最初に声を漏らしたのはブルーだった。スプーンを握ったまま、目の前の「料理」と先生の顔を何度も往復させて見ている。
その隣で、レッドが担々麺の箸を止めて絶句していた。
赤「おい、先生……。それ、何人前だ? 10人前……いや、20人はあんぞ……」
黒「……すまない先生、本当に食べ切れるのですか?人間の限界を優に超えていそうですが」
ブラックが未知の生命体を見るような目でピラフを見つめる。
緑「すまない先生すげぇ!よくそんなに食えるな!」
赤ちゃんはブラックとは違い、尊敬の眼差しで先生を見つめていた
す「あはは!僕はこれくらい食べないと、みんなのエネルギーに追いつけないからね! さあ、冷めないうちにいただきます!」
バクッ、バクバクッ!!
すまない先生がスプーンを動かし始めた。それは「食べる」というより、重機が土砂を「削り取る」ような凄まじいスピードだった。
超特大盛りのピラフが、とてつもない速さで削れていく。
青「先生ヤバすぎるだろ」
ブルーがポツリと呟いた。
銀「だな、今までいろんな先生を見てきたけど、あんなに俺達とは違うって思ったのは久しぶりだぜ…」
銀さんがレモンバーガーを食べる手をとめて先生を見つめていた
金「はぁぁぁぁっ!そんくらい俺でも余裕で食べれるわ! 」
マネーがそういい叫ぶも、赤ちゃんの「絶対無理だろ」と言う言葉で一気に静かになった
黄「先生、喉に詰まらせないでくださいよ?たくさん食べるのはいいことだと思いますけど」
バナナが海鮮丼のマグロを口に入れながら、ドン引きを通り越して感心したような声を出す。
すまない先生は、生徒たちの視線など気にせず、幸せそうに頬を膨らませていた。
「ん~! カニやアサリの旨味がご飯一粒一粒に染み込んでいて……最高だ! たくさん食べれちゃうよ!」
8人はテラスを吹き抜ける柔らかな風を感じながら、賑やかに、そして幸せそうにスプーンを動かした。
青「……それにしても、さっきの水中トンネルは凄かったな」
ブルーが、カレーのシーフードを噛み締めながら呟く。
青「兄貴がサメを殴るなんて言い出すから、焦ったぜ」
ブルーの言葉に、レッドが担々麺のスープを飲み干して笑う。
赤「あれは冗談だ、でもまぁ…いざとなったらするけどな」
金「はぁぁぁぁっ! ショーと言えば、俺のあの濡れ方は芸術的だっただろう!」
黄「マネー、それはただの不注意だ」
バナナの鋭いツッコミに、一斉に笑い声が広がった
食事が済んだあと、すまない先生は、空になった超特大盛りの皿を満足げに眺め、何処までも続く水平線を眺める
す「とてもきれいだ…」
テラスには少しだけ涼しい風が吹き始めた。
お腹が満たされた8人の顔には、午前中の緊張感も、ショーの時の激しさも消え、ただただ穏やかで幸せそうな笑みが浮かんでいた。
緑「ふぅ……食った食った。先生、次はどこ行くんすか?」
赤ちゃんが満足そうにぐぐっと背伸びをする
す「そうだね、最後はあそこしかないだろう?」
先生が指を差したのは、水族館の出口付近にある、色とりどりのぬいぐるみが並ぶショップだった。
緑「お土産タイムだー!!」
赤ちゃんの叫びを皮切りに、8人は再び立ち上がる。そしてお土産ショップへと足を運びに行った
8人が座っていた席に、またさわやかな風が流れた






