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M_Yuzu
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広いリビングには、空腹を誘うたこ焼きの香りが漂っていた。
岩本と阿部の引越し祝いという名目で始まった、たこ焼き&鍋パーティー。
各々が持ち寄った惣菜などをつまみに飲みながら、皆、向井が焼くたこ焼きが出来るのを待っていた。
「はい!食べてや!」
慣れた手捌きで、焼き上がったたこ焼きを皿に盛り付け、向井はテーブルに置いた。
待ってましたとばかりに箸が一斉に伸びる。
「うまそ〜」
阿部も取り皿を受け取って、たこ焼きに手を伸ばす。
と、隣に座る目黒が、箸でつまんだたこ焼きを差し出してきた。
「ほら、阿部ちゃん」
たこ焼きを口元に持っていく。
「えっ、あ、俺に?」
「ふーふーして。熱いから」
戸惑う阿部に目黒は言う。阿部は戸惑いながらも言われるままに、差し出されたたこ焼きを吹いて冷ました。
「はい」
何回か阿部が息を吹いた後で、目黒は阿部の口にたこ焼きを押し込んだ。丸ごと一個口に入れられ、阿部は手で口を覆う。
「あふい」
中身が熱すぎて口を閉じられず、両手で口元を隠したまま、顔をしかめた。なんとか早く冷まそうと、涙目になって奮闘する阿部を見て、目黒は微笑んだ。
「赤くなって、可愛い」
「………熱かったの!」
なんとかたこ焼きを飲み込み、阿部は恥ずかしそうに言う。すると今度は左側から、箸でつままれたたこ焼きが伸びてきた。
「阿部、冷ましたから食べな」
岩本が口元にたこ焼きを持ってくる。慌てて阿部はそれに息を吹きかけ、口を開けた。
さっきよりは冷めているが、中はまだ普通に熱い。
悶えながら二個目のたこ焼きを攻略すると、すかさずグラスのウーロン茶を口にした。
「高速ふーふー、めっちゃ可愛いな」
「うるさいな」
岩本に指摘されて、阿部は赤面しながらぶっきらぼうに返す。
「二人とも、阿部ちゃんのペースで食わせてやれよ」
深澤が苦笑して言った。岩本はちょっと口を尖らせ、ちらりと一瞬、目黒を見る。
「……だって」
「だってじゃねーよ」
言い訳しようとする岩本を、深澤は笑いながら遮る。そして自分の取り皿を差し出した。
「照、俺にも取って」
たこ焼きを顎で示して言う。
「…ふっかは自分で取れば」
「何でだよ!取ってくれたっていいだろ!」
不貞腐れる岩本に苦笑しながら、深澤は身を乗り出してたこ焼きを取った。
「そろそろ鍋も食べられるよー」
向井の隣のガスコンロで鍋の様子を見ていたラウールが言った。
蓋を開けると大量の湯気と共に、出汁と野菜の美味しそうな匂いが立ち上った。
「うわ、めっちゃ美味そう」
佐久間が早速、取り皿を手に身を乗り出す。
「この出汁なに?」
匂いに目を細めながら、渡辺が尋ねた。
「これは舘様ブレンドのオリジナル出汁だよ」
「え、じゃあ、絶対に美味いやつじゃん」
ラウールの説明に渡辺が返すと、キッチンで作業をしていた宮舘が、満足そうに口元を歪めた。
「俺、取り分けるよー」
ラウールが取り分け役を買って出て、差し出される取り皿に、具材をよそっていく。
「あべちゃん、これくらいでいい?」
他のメンバーのものより小盛りに盛り付けられた器を、阿部はありがたく受け取った。
「康二とダテも食べたら?」
くたくたに煮た白菜を口に運びながら、渡辺が促した。
「キリがいいから食べるわ。ラウ、俺にもよそって」
向井が焼き上がったたこ焼きを皿に上げて言う。宮舘もボウルを冷蔵庫へ入れると、戻って来た。
「何作ってるの?」
「タコとオリーブのマリネ。あと少し冷やしたら食べられるよ」
阿部の問いに宮舘が答える。それを聞いたメンバー全員が、期待をあらわにした。
「白ワインに合うやつじゃん。さすがダテさん」
深澤が嬉しそうに言う。その時、佐久間があることに気づいた。
「あれ、あべちゃん、飲んでないの?」
見ると阿部はウーロン茶を飲んでいる。
「いや、前の反省を踏まえて…」
阿部は気まずそうに言った。
「ええ?あべちゃんの惚気と暴露、楽しみだったのに!」
ラウールがすかさず声を上げる。
「聞きたいよなあ?幸せな話はなんぼあってもええんやし」
向井も頷く。
「あべちゃん、飲も飲も」
佐久間がはしゃいだ口調で言って、ワインのボトルを差し出してくる。
「飲まないって!」
以前の飲み会を思い出して、阿部は強硬に飲酒を固辞した。また聞かれるがままに、色々暴露するわけにはいかない。
「えー、残念」
ラウールは、あからさまにがっかりしたふうに言う。が、次にはニヤリと笑った。
「じゃあ、素面のあべちゃんに聞くしかないか」
「せやなあ」
向井が同調する。
「聞きたいような、聞きたくないような…」
目黒は複雑な表情で呟いた。
「えっ?いや、答えないし」
阿部はウーロン茶を飲み、きっぱりと言う。
「…風呂、一緒に入ってんの?」
唐突に渡辺が聞いた。
「はっ!?え、な、なに?風呂?」
阿部の声が裏返る。その何も隠せていない反応に、岩本を除く全員がどっと笑った。
「あべちゃん、狼狽えすぎ」
佐久間が指摘する。みるみるうちに阿部の顔が赤くなった。
「そういうのって、どっちから誘うん」
向井が追撃した。
「へ?ど、どっちが?」
「照だろ?」
ニヤニヤ笑いながら深澤が岩本を見る。
「違う。阿部」
岩本はきっぱりと言い切った。彼もまた顔が赤い。
「はあ!?違うじゃん!」
岩本の言葉に阿部は、思わず声を荒らげた。
「昨日はひかるが——」
「昨日?」
宮舘が聞き返す。
場が、静まり返った。
「阿部…お前は…」
岩本が、顔を両手で覆って、消え入りそうな声で呟く。阿部は自分が、盛大に墓穴を掘ったことに気がついた。
「直近は昨日か〜」
ラウールがニヤけるのを隠しもせず、二人を見る。
「仲が良くてよろしいですね」
目黒は面白くなさそうに、棒読みで言った。
「え、一緒に入って何すんの?」
完全に酔った渡辺が尋ねる。
阿部は耳まで真っ赤になって、口をぱくぱくさせた。
「なんもしねーよ!何聞いてんだ!」
岩本も慌てて声を上げる。
珍しく狼狽えている岩本を見て、佐久間が楽しそうに笑った。
「何もしないわけない」
「だよなー」
渡辺と深澤がケラケラ笑い合う。
「………っ、セクハラだかんな!お前らあぁあ!!」
ついに阿部が爆発した。
「うわあ、あべちゃんキレたあ。…あ、舘様、タコのマリネお願いします」
ラウールが阿部のブチギレを意に介さず、宮舘に言う。
「はいよ」
飄々と返事をして、宮舘はキッチンへはけた。
向井と目黒が、キレる阿部を宥める。
「お前ら照見ろよ、地蔵みたいになってんぞ」
佐久間が苦笑しながら言った。キレる阿部とは対照的に、岩本はただ目を閉じて、じっと座っている。
「現実逃避してんなあ」
もう挽回のしようがないと悟ったのだろう。
気配を消している。
「はい!この話、もう終わり!」
阿部が赤面したまま、テーブルを叩いて言った。と、同時に宮舘が小皿に盛られたマリネを持ってくる。
「お待たせ」
柔らかく微笑み、皿を並べる。美味しそうなそのビジュアルに、話題は自然と収束した…はずだった。
「あっ」
目黒が小さく声を上げた。掴もうとしたグラスが手元で滑って倒れる。白ワインが跳ね、阿部のTシャツにかかった。
「ごめん、阿部ちゃん」
慌ててグラスを起こし、目黒は謝る。
「大丈夫」
阿部は微笑み、ワインがかかったと思われる裾の方を持ち上げて、確認しようとした。
「あべちゃん、そこ、どうしたん?」
急に佐久間が言った。
「え?」
「そこ。ぶつけた?虫刺され?」
佐久間が何を差しているのか分からず、阿部はTシャツをまくって脇腹を見た。
赤い、打ち身のような——跡。
それを見たメンバーたちは、一斉に黙った。
「あっ」
阿部がはっと何かに気づく。そして、そっとTシャツを戻した。
「え?何?」
佐久間はまだピンと来てない。岩本も状況が分からず、不思議そうに阿部のTシャツをちょっとめくって、脇腹を覗き込んだ。
そして表情を引きつらせる。
阿部と岩本が気恥ずかしそうにするのを見て、じわじわと佐久間も意味を理解し始めた。
「あー、そう、そういう…、なるほど、…ごめん、ごめんね!」
慌てて取り繕う顔は赤い。
「まあ、いいんじゃない。見えないとこだし」
宮舘が淡々と言う。
「仲良しでええやん」
向井もさらりと言って、たこ焼きを阿部の前に置いた。
冷めたそれを俯き頬張りながら、阿部は全身が熱くなるのを感じた。テーブルの下で岩本の太腿をつねる。
どうせなら酔っていれば良かった、と阿部は思った。
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何回もコメントさせていただいてますが、本当に皆でわちゃわちゃして💚と💛をいじりまくるメンバーとの会話が大好きです。ありがとうございます。