テラーノベル
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放課後、あーしは成瀬と帰る前にもう一度サッカーグラウンドに来ていた。
「試合観てたでしょ」
グラウンドを整備する歌代の後ろ姿に声をかける。
「そんな暇じゃねーっての」
「ふーん?」
「…まぁ、一点決めたってのは耳に入ったかも」
「ふっ。……どうよ?」
「ちゃっかり点数決めてんじゃねーか」
「うるさーい。あーしの取り柄は器用さなの!…じゃなくて、ちょっとは褒めてくれても良いんじゃない?」
わざとらしくドヤ顔をして見上げてみると、歌代は困ったように眉根を寄せて頬をかいた。
「……頑張ったんじゃねーの?」
「え?なーに?聞こえないんだけど〜」
「あーもう!…手、出してみろっ」
「手?」
耳まで赤くなっている歌代に促されるまま、あーしは片手を差し出す。
ーするりと、あーしの手は一回り大きな手で包まれていた。ゴツゴツした掌から柔らかな温もりが伝わる。
「よく頑張りました。今日楽しめたんなら、それが一番だな。…あと、お前の取り柄はもっと有るよ。実は無邪気なトコとか、友達思いなトコとか……知れば知るほど、他のヤツも好きになるんじゃねーの?もちろん、お前自身もな」
それだけ言うと、歌代はグラウンドを出て行ってしまった。
ー手のひらに何か違和感を感じる。広げて見ると、一口サイズのラムネの包み紙が乗っかっていた。
パッケージの花丸マークが可愛いらしくて頬が緩む。口の中に入れたラムネ菓子は懐かしい甘さの余韻を残し、しゅわっと溶けてなくなる。
「……“も”ってなんなの」
秋風が首筋を滑っていく。髪がふわりと揺れて、歌代とお揃いの色に染まった耳元で爽やかにそよいだ。
ー溶けてなくならない感情が胸の中でしゅわっと弾けた気がした。
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