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現実逃避とばかりに、スマホゲームだけでは飽きたらず、エンドレスにに続けられるコンシューマーゲームにも手を出し、気づけば窓の外はすっかり暗くなっていた。

 

「うっ……同じ体勢でずっといたせいで首が痛い……」

 

上半身をもぞもぞさせながらベッドのヘッドボードにゲーム機を置き、代わりにテレビのリモコンを取る。

そして横になったまま、テレビの電源を入れた。

すると、ひとりの男性が女性のアナウンサーからインタビューを受けている映像が流れてきた。

 

『……近々INAGAKIの社長交代との話が出ており、現社長の息子でもある久遠(くおん)さんが次期社長として最有力候補だと言われておりますが、いかがでしょうか』

『……その件に関しましては、現時点では何も申し上げることはありません。ですが、私たちは常にどうしたら会社を発展させ社会に貢献できるかを考え、そして……』

 

「……INAGAKI、ってあのINAGAKIだよね……」

 

INAGAKIコーポレーション

 

世情に疎い私でも知っている。

船舶機器関連事業で発展し、今日では多岐に渡る事業を世界中で展開している超有名な一流企業だ。

 

「あんな大きな会社の息子で次期社長最有力候補だなんて、すごいなぁ……」

 

アナウンサーからの質問にひとつひとつ答える男性の姿を、ぼんやりと見るともなしに見つめる。

次期社長と目されているらしいが、年齢はまだ30代半ばというところだろうか。

涼やかで切れ長な瞳にすらりと通った鼻筋、少し薄めの唇と、冷たそうに見えるけれどそこが魅力的に映り、好みは別としても誰もが綺麗と思うであろう容姿をしている。

感情の読めない少し低めの落ち着いた声音もまた、男性の魅力を引き立てていた。

 

「イケメンで、お金持ちで、きっと頭もすごくよくて……きっとなんでも持っていて、手に入らないものなんてないんだろうな……」

 

その時──

 

ぐぅぅぅぅ~……

 

盛大にお腹が鳴り、これまでまったく感じていなかった空腹が一気に押し寄せてきた。

 

「……そういえば、いま何時だろして、って…………うっそ、21時回ってる!?」

 

まだ19時頃だと思っていた私は、がばりと起き上がる。

すると胃が刺激されたのか、再び大きな音が鳴り響いた。

 

「う~……晩ご飯、どうしよう……21時だしあんまり食べるもよくないよね……何か簡単であっさりしたもの……」

 

冷蔵庫の中の食材を、頭の中に思い浮かべる。

 

(確かソーセージあったよね……。ポトフか……でも野菜切るのめんどくさいな……だったら卵かけご飯? ……いや、今冷凍のご飯チンするのも卵割るのもしたくない……)

 

普段は特に苦にもならない、もしろ気晴らしにすらなる料理も、今は一切作る気が起きない。

 

「……なんだかなぁ……」

 

ゲームをしていた時は忘れていたけれど。

先ほどのオンラインミーティングでは自覚していた以上にダメージを食らっていたようだ。

空腹の悲しさも相まって、幸せ指数がどんどん下がっていきそうになっていくのがわかり、私はベッドから飛び下りもう一度大きく伸びをした。

 

「んん~!! 今後のことを考える前にまずは幸せ指数を上げなきゃ! ……ってことで……」

 

パーカーを羽織り、スマホをポケットに突っ込む。

 

「今日はもう、こんな時間に食べたら太るだとか気にしない! 考えない! コンビニディナーでひとり決起集会しよう!!」

 

テレビを見れば、インタビューはすでに終わっていて、男性の画像を背景にアナウンサーの女性がインタビューで感じたことなどを話していた。

 

(……私には一生縁のない世界の人だよね……)

 

そんなことを思いながらテレビを消し、エコバッグを掴むと、私はコンビニへと向かった。

 

*****

 

「ありがとうございました~!」

 

大好きなチキンの唐揚げにハッシュドポテト、それにコンビニサラダと缶チューハイを数本購入し、店を出る。

 

「……ふふっ、欲しいもの全部買っちゃった」

 

(ちょっと気分がすっきりしたな。でも……)

 

コンビニで好きなものを我慢せず買う。

こんな贅沢は当分控えたほうがいいかもしれない。

半年後には完全に無職になっているかもしれないのだから。

今はまだ数か月おきに印税が入ってきているけれど、これもいつゼロになるかわからない。

 

「久しぶりにバイトしようかな……」

 

外の世界に目を向けるためにも。

そんなことを考えてみるものの、私が過去にしたことのあるアルバイトはただひとつ、食品工場での製造作業だけだ。

そして、したいと思うアルバイトも、誰とも喋らずただ黙々と同じ作業をする仕事だ。

元々、人と関わることが嫌なのではないけれど、積極的に関わりたいとは思わない。

それにこういった黙々とする機械的な作業は、頭の中の妄想をかなり捗らせてくれる。

これまで書いた小説のネタはほぼアルバイト中に生まれたと言っても過言ではなかった。

……と考えれば、スランプ脱却に打ってつけのようにも思えるけれど、逆に何も思い浮かばずさらにスランプの沼に陥る可能性だってある。

もし本気でアルバイトをするのなら、真逆の仕事を探したほうがいいのかもしれない。

 

(接客とか? ……いやいや、それはさすがにハードル高いでしょ)

 

「……と、なると……」

 

リア恋しか知らない恋愛小説家、初めて三次元の恋を知る

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