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近くの店で昼食をと思ったけれど、どこも一杯だ。
まだ少し早いのにねと言えば、この店が一番人気だと食堂を教えてくれる。
並んでるよ、これ。
これならギルドに戻って食べようということになり、はじめて普通メニューを注文することにした。
どれにしようかなとメニューを見ていれば、フラットも興味津々だ。
ウエイトレスさんに、とりあえず肉を焼いてもらうことにして、フラットの希望で十枚お願いした。
それとは別にランチプレートが気になるらしい。じゃあ、俺もと二つ頼む。大盛りでね。
ギルマスは? と聞けばまだ悩んでいる。
「今日は僕の用事で付き合ってもらってるから、ごちそうしますね。薬草採取で頑張りましたから」
それでも、お前、と困っているけど、僕もCランク冒険者ですよといえば折れてくれた。
「じゃあ、ゴチになるぞ」
そう言って、ランチプレートとパスタを頼んでいる。そういえば、いつものワンプレートにのってるパスタも美味しかったなと思っていれば、わぁう! と聞こえる。
『ナギ、パスタ、食べたい』
じゃあ、半分こな、とパスタを追加した。
食事のあとは、職人さんとご対面。
大工さんは二人いる。
強面だけど、ギルマスも一緒にいてくれるから大丈夫だ。
「で? そのガキが家を買ったのか?」
ガキ、言うな! まぁ、ガキだけども……
「お前、言葉に気をつけろよ。こいつは六歳だけどCランク冒険者だぞ。それにお前たちに仕事を依頼する依頼主様だ。敬え!」
あはは、敬えってなんだよそれ。
「そ、そうか。それはよろしくな。俺はデク、こいつはボットだ」
「ナギです。この子はフラット。僕が六歳でフラットは二歳です」
おおっ? と驚いてるけど、なんで?
「フラットだっけ。お前二歳か」
そろそろ三歳だけどね。
すごいな、と恐る恐る触ってるよ。噛まないから大丈夫ですよ。
後ろの人たちは、日本で言う左官業(タイル貼ったりする人)と屋根とか外装をする人、水道の工事をする人たちだった。
どこをどんな風にするのかと聞かれたので、俺の考えを話せば、聞いたことのないやり方だと興味深げだ。
かなり丈夫で使いやすい家になりそうだな、と楽しそうなんだけど。
倉庫の中も見てもらったら、多少足りないものはあるけど、木材は概ね大丈夫そうだと聞いて安心する。あと、床を塗るのはどうするかと聞かれたので、倉庫を探せば石のレンガみたいなのが出てきた。
「お風呂の床とか、通路とかにこれは使えませんか?」
全く問題ないし、風呂には贅沢だと言われた。でも、他に何が使える? 木がいいけど腐るから使いたくない。
それならと見つけてくれたのは、タイルというか、でっかい石のタイルみたいだ。これならいいだろうと聞いたのでそれでお願いする。
水道は井戸なんだと相談したら、こういうのがあると絵を描いてくれる。魔道具らしいんだけど、ポンプみたいなものだ。かなり高額だけど家の中で操作できるから便利だと聞いた。
ふうん、まあ便利だけどね。外でも使えるのかと聞いてみれば、それはくみ上げ式の手動ポンプがあるらしい。同時につけられるの? と口に出しちゃったけど、問題ないと聞いて安心した。裏庭が広いから、フラットにプールを作ってやりたいかなと思ってたんだよ。まあ、それはできたらってことだけど。
一応話して見れば、面白いなと賛同されてしまった。それなら、馬小屋がかなりデカいので、馬車を停めてた部分の壁を取っ払って、屋外にすればいいと聞く。屋根のある外ってことかな。うん、それはいいね、といっておいた。
ここは、馬車に荷を積むときもここで積み込んでいたらしい。そんなスペースがあったから出たアイディアらしいけど、うん、この世界ならではでしょう。
いつから取りかかるかと聞かれたので、すぐにでもと伝えれば、日当も適正価格で提示してもらった。ギルマスが俺がこの街を故郷にしてくれるかどうかの話しだから安くしろよと言って、いや、脅してくれたので、適正価格でやってもらえることになった。
屋根の材料があるから屋根も張り替えると聞いたので、天窓をつけてもらうようにお願いした。どうやらこの天窓は開けることもできるようで、夏は空気が抜けるから下から操作できるようにしてくれるみたい。なんだか倉庫の材料はわりと高級な家用らしくて、かなり得したね。
じゃあ、材料は大丈夫だと思うけど、外壁も今張っているものの上から張ってもらうことにしました。今は横張りなので縦に張ってもらうことにした。それなら隙間風も防げるからね。
あと、塀も少し丈夫にしてもらう。
柱を丈夫にしてもらって、板も分厚いものに張り替えてもらうことにした。そしてちゃんとした入り口用の扉を作ってもらう。風も通って目隠しになるようにと考えてくれるらしい。倉庫の間の塀は取っ払ってもらっうことにした。最終的には、今の材料では足りなくなりそうだ。追加の材料も見積もってくれると聞いたので、安心だ。
部屋の部分は、床を上げて靴を脱いで使いたいと言えば驚いている。その方が家の中に汚れを持ち込まないから。
なるほどな、と納得顔だね、デク。
そのために玄関というエリアをもうけること、フラットが足を洗うための給排水と洗い場。そのまま足を拭く部分は床より一段低く広さは……
いろいろと指定するのだが、ボットのメモがどんどん増えて行く。
それと最後に、小さな爆弾を投下する。
家の半分、北側にロフトを作りたいと伝えた。ろふと? と聞かれたのでこんな感じでと絵を描いて説明する。まあ、屋根裏みたいなものかな。それはいいなと大賛成してくれたけど、なんで北側かと聞かれた。別にどこでもいいんだけど、高い場所に熱気がこもるから、南や西に作ると夏には暑くて上がれないと話した。なるほどな、と良い情報を聞いたと嬉しそうに笑ってくれた。
床の下地も、日本式でお願いする。
束石をおいて束を立て、大引きを入れて根太を入れる。その上に下地板をはって床材だと伝えれば、ひっくり返りそうになる。そんなに手間をかけるのかと聞かれたけど、それほどの手間じゃない、俺にとってはね。
「すぐに慣れると思います。僕も手伝いますので」
そうか、と受け入れてくれて助かった。
ナギの親父は大工かなんかだったのか? と聞かれて、そんなもんですよ、といっておいた。だって、俺は転生者だから。なんて話せないしね。
じゃあ、と鍵をひと組預けて、屋根に上がる足場を作るからと動き始めた職人さんたちをじっと見ていた。
俺がいないと設計図なんかはないからね。書いてもいいけど、多分わからないだろうと思う。それなら魔道具を見に行くか、とギルマスとデク、そして水道屋さんと一緒に家を出た。フラットは? と聞けば楽しそうなのでここで見ていると言うので、じゃあ、と毛布を一枚外に敷いてやれば、ごろりと転がった。
あちらこちらと買い物に歩いた。
これほどの店があったのかと感心しちゃうんだけど、今まで気づいてなかった俺はどうなのよ。
魔道具屋さんにいって、水の魔道具を買った。
ギルマスお勧めの店だから。というか、ドールーハの知り合いらしいので、話しはスムーズにできたよ。
安い買い物じゃないけど、快適生活のためには欠かせない。水の浄化も同時にできると聞いた。素晴らしいでしょ。
これでキッチン、風呂、トイレ、フラットの足洗い場、全てをまかなえるらしい。だいたい、大きな屋敷で使うものだからね。魔石か魔力をためられる水晶で使うらしいけど、うちは魔石込みでギルドに出すから、魔力をためる水晶にしてもらったんだ。
魔力が減ってくると色が変わるらしいので、安心だね。
また何かあれば来るからと言って店を出た。
その後も買い物をしまくったよ。
まあ、ステキな家にするための必要経費だからいいんだ。
さっそく、とデクたちに床組みの手順を教えたよ。
いろいろ材料もあったし、束石代わりの石もあったから。なんでこんな石が? と聞けば、石造りの建物を作るときにはどうしても余りがでるらしい。それを買ったんだろうと聞いてなるほど納得だ。日本でもいろいろとそういう半端材は出たからね。
束の入れ方、大引きの置き方、根太の入れかたなどを少しやってみせれば、すぐに覚えて作業を始めてしまった。
上には捨て板と呼ばれる板をいれて床材を貼ってもらうことにした。
壁の断熱材はどうするか聞かれたので、当然入れて欲しい。天井にもとお願いすれば納得してくれた。その方が快適だからね。
その他、少々質問されたけど、問題なく理解してくれたので、お任せすることにした。
それで今朝。
依頼ボードの前にいるんだけど、やっぱり俺が受けられそうな依頼は薬草採取とかゴブリン討伐とかオオネズミ討伐くらいだね。じゃあ、今日は久しぶりにオオネズミ討伐にするかなとフラットと相談して決めた。
しばらくは薬草から離れたいかな。なんて、また薬草採取に戻りそうだけど、それはその時だね。
これお願いします。
「おはようございます、ナギさん。えっと、オオネズミの討伐ですね。はい、じゃあ受け付けました。街の外ですから気をつけて。街道から少し入った場所にいるようですよ」
はい、と依頼書を受け取って朝食を取る。
いつものようにたくさん食べて、行ってきます! とギルドを出た。
パン屋さんでサンドイッチとホットドッグを爆買いする。いつものことなので、笑顔で袋に入れてくれた。
フラットの背に乗って、街をゆっくり進んでゆく。
地図は既に頭に入っているので問題ない。
『ねえ、街から出たら走っていい?』
「うん、いいよ。いつも街の中だから窮屈でしょ。しっかりつかまるから、合図してね」
わかったぁ~と可愛い声が聞こえる。
まだ二歳だもんね、フラットは。
ゆっくり街を歩いて民家がなくなったとき、フラットから合図か来た。
しっかり毛を掴んだら、ググッとスピードが上がる。そしてゴウ! と風を切って走り始めた。
二十分くらい走ったとき、街道は下り坂になる。
もう少し走れば狩り場の近くになるね。
やっと到着した狩り場では、オオネズミが穴を掘っている。なんでかな。
うん? 虫を掘ってるの?
いや、違う。何かの生き物かな。うん、そうみたい。あれなに? ミミズ! そうだ、少し大きいけどミミズだよね。
でも、ミミズの魔物もいるって聞いたけど、それとは別かな。
鑑定っと……
うん、ミミズはミミズだけど、魔物の子供だよあれ。
このあたりって魔物がいるのかな。
でっかいミミズなの? なんか記憶の片隅にはあるんだけど。
そっちに絡まれたらヤバいよね。
じゃあ、さっさとオオネズミを狩りますかね。でも、これって狩らない方がいいんじゃないかな。だって、ミミズの魔物、思い出したワームだ! ワームにならない方がいいでしょ。でも、そうじゃないから討伐依頼が出てるんだよね。
仕方ない、やりますか。
フラットと二人で尻尾を残したまま狩ってゆく。
オオネズミはもうなれちゃった。まあかわらずデカさにはビビるけど。
三十分くらいで二十頭以上狩った。残りは逃げて行っちゃったんだけど、追わなくていいよね。依頼は十頭だし。
アイテムボックスに獲物を収納して、フラットとお茶の時間にする。
狩り場から少し離れてから、草原にシートを取り出した。
探索しても魔物の気配はないね。
じゃあ、と火をおこしてお茶を入れて、鍋も一緒にかけてスープを作るんだぁ。
こういうときには干し肉が便利。
ぐらぐら沸いたお湯に放り込めば、肉のうまみと塩味が良いスープに仕上げてくれるんだよ。このままじゃ固くて食べられないし。そして野菜を大量投入。ギルド近くの八百屋さんで見つけた野菜だ。たくさんはなかったけど、種類は豊富。白菜みたいなやつとキノコを入れたんだ。
サンドイッチとホットドッグを大皿に取り出せば、嬉しそうにフラットの尻尾が揺れる。
もちろんスープも大きいボウルに注いだよ。
二人でお茶とおやつの時間を楽しんでからシートを片付ける。
ここって、薬草もあるけど、採取しない理由が理解できたので採取を諦めたんだ。残念だよ、ほんと。