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シベリアの戦場は、まるで氷の墓場のようだった。雪の中、拓真と亮太は崩壊寸前のライカントロピー研究施設の最奥に立っていた。壁には弾痕、床には機器と血の跡——そのすべてが、この狂気の戦いの結末を物語っている。
拓真は震える手でUSBを握りしめた。そこには、狼男化を逆転させる唯一のウイルスが入っていた。
「亮太、これさえあれば……」
「……手遅れだろ。」亮太の声は冷たかった。彼の瞳は赤く光り、すでに人間としての理性を失いかけている。
彼らの背後で、ロシア軍とアメリカ軍の戦闘は激しさを増していた。轟音、銃声、遠吠えが響く中、彼らは決断を迫られていた。
アメリカ軍は最終兵器「ブラックウルフ」を使用し、施設焼き尽くそうとしていた。指揮官ジャクソン・リードは無線で叫ぶ。
「全隊、目標は施設の完全破壊だ!ウイルスの流出を防ぐため、犠牲は覚悟しろ!」
ロシア軍は最後の砦を守るため、アレクセイ・ザイツェフ将軍の指揮のもと、施設を死守する覚悟だった。
「敵を一人たりとも通すな!ロシアの誇りにかけて!」
中国軍は密かに裏で動き、研究データを奪取しようとするスパイを送り込んでいた。彼らの真の目的は、戦争を利用して次の覇権を握ることだった。
拓真は亮太を見つめた。
「お前も……あちら側に行くのか?」
「……いや、最後まで人間として戦いたい。」亮太は静かに微笑み、手にした銃を構えた。
その瞬間、ライカントロピーの研究責任者だったDr.クラウスが姿を現した。
「ハハハ……お前たちは何も分かっていない。このウイルスは、もう誰にも止められん。」
彼の目が異様に光り、次の瞬間、体が狼へと変貌していく。
「亮太、やるぞ!」拓真が叫ぶ。
亮太が駆け出し、銃弾を連射するが、クラウスの怪力に吹き飛ばされる。拓真はUSBを施設のコンピューターに差し込むと、システムをハッキングし始めた。
「解除コードを……見つけた!」
画面には「ウイルス拡散阻止」の文字が点滅し、数秒後——
世界中のライカントロピー薬のシステムが無効化された。
シベリアの戦いが終わったころ、世界は新たな秩序のもとに動き始めていた。アメリカ、ロシア、中国、それぞれが大きな痛手を負ったものの、ライカントロピーの脅威は去った。
拓真は、戦場跡を見つめながら、静かにこう呟いた。
「亮太……お前の戦いは無駄じゃなかった。」
亮太の姿は、そこにはなかった。しかし、拓真の胸の中には彼の決意が確かに刻まれていた。
遠くで狼の遠吠えが聞こえる——だが、それは、もはや人間を脅かすものではなかった。
—END—