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「ナイト! どこ? いたら返事して!」

ジェシーの声が、真っ白な廊下に響く。しかし反響するばかりで、答えは返ってこない。

「どうする? 二手に分かれていく?」

樹の問いに、ジェシーは「そうだね」と言いかけて口をつぐんだ。

視線の先にスーツを着た男が現れたからだ。その冷ややかな目に、5人の足も思わず止まる。

「ようこそ我が研究所ガイルへ、ファンタジアさん。自ら足を運んでくれるだなんて、捕まえる手間が省けますよ」

男は笑った。しかしぞっとするような笑みである。

「さあ、どうかな。捕まえられるのはあんたたちだろうけどね」

北斗が挑発するが、男は動じない。

「モルガナイトはどこだ、いるんだろ。感電させられたくなかったら、とっとと俺らのとこに連れてこい!」

高地が叫ぶと男はさらに笑みを広げる。

「いい度胸ですね。やってみたらどうですか?」

一般人ならありえないほどの、ファンタジアに対しての恐怖心の薄さだ。それに痺れを切らした樹が、高地の雷よりも早く氷の魔法を放つ。

しかし一度男の胸に当たった氷は、キラキラと光を乱反射させながら跳ね返る。

「え? くそっ、なんでだ」

見かねたメンバーが次々とそれぞれの魔力を発動させるが、どれも跳ね返っていく。

「さすがだな、我が研究チームが開発した特殊な薬の効力は」

その言葉に、5人は苦虫を食い潰したような顔になる。残る慎太郎は、ならばと懐から剣を取り出し、手のひらで毒を塗った。

「まずはお前を倒してからだ」

男のほうも、見通していたかのようにポケットからナイフを出して構える。反射的に4人も戦闘態勢に入る。

しかし、とっさに拳銃を構えた高地と北斗は、お互い顔を見合わせた。ダメだよな、と北斗の口が動く。高地が眉をひそめてうなずく。

一般人に発砲することは、ファンタジアの法律で禁止されているのだ。

「……ジェットとトパーズはナイトを探しに行って、ここは俺らでなんとかする」

樹が言った。銃しか持っていなかった2人は、ほかの3人が男と交戦している隙に駆け抜けて奥へと進んだ。


「誰もいないね。どこ行ったんだろ」

「ほかの奴らはきっともう逃げたんだろうな」

北斗と高地は広い研究所を駆け足で探索しているが、そこはがらんとしていた。しかし、2人にとっては好都合だ。

「とにかく先行こう」

階段を上り、フロアをしらみつぶしにくまなく探す。どの階にも大我はいなかった。

やがて辿り着いたのは、最上階だった。だがロックされた自動ドアに阻まれ、奥に進めない。

「ジェット、このドア消せない?」

「んなことできるわけねーだろ! デカすぎる。トパーズこそ、電気で何とかできないの?」

うーんと考えたのち、「センサーをぶっ壊すしか…」

ドアの上にある四角いセンサーを目掛け、雷を放出させる。北斗が一瞬つむった目を開けると、高地は取っ手を横に引いて開けようとしているところだった。

「マジかお前、すげーな」

「まあな」

開いた隙間に身体をねじ込んだ途端、けたたましい警報が鳴り響く。このフロアは特別に仕切られているのだろうか。

しかし2人は構うことなく、走り出した。奥にガラスの部屋が見えていた。

「ナイト!」

透明なガラス越しには、上体だけを起こして驚いた顔をしている大我が。その頬は少しこけ、澄んだ桃色だった瞳はくすんでいる。

「トパーズ…ジェット…」

足がもつれそうになりながらも駆け寄る。

「今助けるからな!」

「大丈夫かナイト?」

高地の問いに、大我はうなずいてみせる。北斗が扉にかかっている南京錠を手に取った。「これなら消せるな」

「気を付けろよ」

北斗は意識を集中させ、手先に魔力を向ける。ぱっと、鍵が跡形もなく消滅した。

扉を押し開け、大我のもとに走り寄った。北斗の腕が、そっと大我の細い身体を抱きしめる。

「ごめんな、すぐ助けに来れなくて。怖かっただろ」

ううん、と大我は首を振る。「みんななら…絶対来てくれるって、信じてた」

その瞳に涙が浮かぶ。だんだんと、輝きが戻っていった。

すると、

「ナイトっ、あぁ良かった!」

慎太郎の声がする。ジェシーと樹も駆けつけてきた。3人とも大我を見つけて安堵のため息を漏らした。

「とりあえず逃げようか。まだ誰かいるかもしれないし、一刻も早く離れたほうがいい」

そう言って、樹は大我を支えて立たせた。

6人は来た道を戻る。そしてあの入り口までやってきたとき、大我は倒れている2人の男を見て足を止めた。

「あいつら…俺が散歩に出かけたときに、襲ってきて連れてった奴だ。仇を討ってくれたんだね」

「でもな、実はこいつらフェイラーだったんだよ」

ジェシーの言葉に、大我と北斗、高地は驚きの声を上げる。

「ほら、牙生えてるだろ? 開発した薬で隠してたんだよ。一般人を装って」

倒されたときに、その効能が切れたのだろう。

「だから、俺らすごいお手柄だよな」

と慎太郎が自慢気に笑う。そして6人は車に乗り込み、久しぶりに全員であの家へと帰っていった。


続く

瞳に秘められた宝石

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続き楽しみにまってます!!!

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