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ゆゆゆゆ
ゆゆゆゆ
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ジョン・ドウは、その日から露骨に分かりやすかった。
「おはようございますジェーンさん!!」
朝一番、ロビーで待ち構えていたかのような勢い。
ジェーンは一瞬だけ視線を向ける。
「……おはよう」
それだけ言って通り過ぎる。
「はい!!おはようございます!!」
(よし、挨拶できた!!)
なぜかガッツポーズをするジョン。
——完全に浮いていた。
その様子を、少し離れた場所から見ていた二人がいる。
「……ねぇ、あれ」
くすくすと笑いながら肩を揺らすのは
シェドレツキー。
「分かりやすすぎるでしょ」
隣で腕を組んでいるのが
デュセッカー。
「一直線すぎて逆に清々しいな」
ジェーンが去っていくのを確認してから、二人は同時にジョンの方へ歩いていく。
「やっほー、ジョンくん」
「うわっ!?びっくりした!!」
「何してんの、あんなとこで待ち伏せして」
「待ち伏せじゃないです!!偶然です!!」
「いや無理あるって」
シェドレツキーは笑いながら肩を叩く。
「で?」
デュセッカーが少しだけ身をかがめる。
「好きなんだろ」
「っっっっっ!!?」
ジョンの顔が一瞬で真っ赤になる。
「ち、ちがっ……いやその……」
「否定しない時点で確定だ」
「いやもう顔でバレてるし」
「……っ……」
ジョンは観念したように顔を覆った。
「……はい……」
「やっぱりね〜!」
シェドレツキーが楽しそうに笑う。
「でもさぁ、あれじゃ無理じゃない?」
「無理って!?」
「だって会話、秒で終わってるじゃん」
「うっ……」
痛いところを突かれる。
「……どうすればいいんですか……」
弱気な声。
その瞬間——
二人の目の色が変わった。
「いい質問だねぇ」
「任せろ」
ジョンは嫌な予感しかしなかった。
その日の昼。
社員食堂。
ジョンは一人でパンケーキを食べていた。
(落ち着く……やっぱ甘いの最高……)
そこへ——
「隣、いい?」
顔を上げると、ジェーンが立っていた。
「えっ!?あっ、はい!!どうぞ!!」
(なんで!?!?)
心臓が爆発しそうになる。
ジェーンは無言で席に座る。
その直後。
「いや〜偶然だねぇ」
「本当にな」
左右に、あの二人が座った。
(絶対偶然じゃない!!)
「ねぇジェーン」
シェドレツキーがにやにやしながら言う。
「ジョンくんさ、料理めっちゃ得意なんだよ」
「えっ」
ジョンが固まる。
「パンケーキとか、店レベルらしいよ?」
「いやいやいやいや!!」
「へぇ」
ジェーンがちらっとジョンを見る。
(見た!?今見た!?)
「……そうなんだ」
「今度作ってもらいなよ」
「勝手に話進めないでください!!」
完全にパニック。
デュセッカーがさらに追撃する。
「あとこいつ、紅茶もやたら詳しい」
「やめてくださいって!!」
ジェーンは少しだけ沈黙したあと、
「……じゃあ」
ぽつりと呟く。
「今度、お願いするかも」
「…………え?」
思考停止。
「“かも”だから」
そう言って、何事もなかったように食事を続ける。
ジョンは数秒フリーズしたあと——
「は、はい!!!」
声が裏返った。
食堂の端。
二人はひそひそと笑う。
「ちょろい」
「いやでも、あれは悪くない反応だったな」
「ジェーンも完全無関心ではない、か」
「面白くなってきたな」
その頃ジョンは——
(今度っていつ!?何作ればいい!?紅茶も!?え、待って準備しないと!!)
完全に一人で大混乱していた。
でも。
ジェーンがほんの少しだけこちらを見た気がして。
それだけで、全部どうでもよくなるくらい嬉しかった。