服が完全に乾いたところで、おれは広域スキャンを使って人や村を探し続けた。スキャンスキルが上がったおかげもあり、人間以外の構造物も探せることが出来ている。
「アック様~! これなんかどうですか?」
「いいけど、こんな杖をどこで拾ってきたんだ?」
「それがですね、この先の草地に落ちてたんですよ~!」
「落ちてた……?」
「はいっ! きっと使い古しちゃって捨てて行ったんじゃないでしょうか」
このまま調子よく村を探せそうだと思っていたが、この期に及んで自分の装備が貧相なことに気付いた。このままでは誰かに出会ったとしても船乗り装備では不審に思われてしまいかねない。
このままではまずい――そう思ってガチャを引こうとしたが、
「アック様。ガチャを使おうとしてますか?」
ルティが声をかけてきた。珍しいこともあるものだな。
「この格好じゃ村が見つかっても恥ずかしい思いをするだけだしな」
「それでしたら、ぜひぜひわたしを頼って下さいっ!!」
「何かアテでもあるのか?」
「むふふ……実はこう見えてわたし鼻が利くんですよ~!」
ルティはドワーフ娘に違いなく、獣に近くも無い。それがいつから野生側になったんだ?
シーニャが言うなら納得も出来るのにな。
「どういう風に利くんだ? 近くの食べ物でも探せるとか?」
「違いますよぉ~! 全く! アック様はわたしのことをどういう目で見ているんですか~!」
「いつも元気そう」
「元気が取り柄で……えへへ! ――って、そうじゃなくて!! 実は父から継いだスキルがありまして~」
ドワーフのおっさんから継いだスキルがあったとは初耳だな。実はあのおっさんは凄かったのか。
「……一応聞くけど何のスキルだ?」
「金目の物を探すことが出来ちゃうスキルです。これのおかげで今まで助けられてまして」
もしや『トレジャーハンター』とかいうレアジョブ?
ただのハンターならどこにでもいるが、お宝だけを見つけられるジョブは滅多にいない。今まで金回りが良かったのはそういうことだったのか。何気に商売も上手いし、倉庫も容易に手に入れることが出来ている。
今まではレアガチャスキルだけで何とか出来ていたが、ルティにもガチャに似たスキルがあるなら任せても良さそう。本人から自信のある発言が飛び出したし納得してもいいかも。
「そういうことなら、ルティ。おれの武器を探し出せるか? フィーサがいない以上何か手にするものがないと不安だからな」
「お任せくださいっ! では早速行ってまいります!」
周辺には人や魔物の気配が無い。そんな中でそうたやすくレアな武器が手に入るとは思えない。
そう思っていたが――
「見つけて来ました!! 魔法の杖です! どうぞっ」
ええ?
あまりに早すぎるだろ。
「……うーん。無いよりはましだ。だけど魔法の杖は必要無いんだよな……」
「魔法を出さずとも杖で攻撃出来るじゃないですか! それじゃ、次行ってきます~」
「次……? ――って、落ち着きが無い奴だな」
まさか本当にその辺に武器やら防具やらがあって見つけてきている?
そうだとしたらレアガチャで出すより効率が良すぎるぞ。
「はふーはふー……戻りましたっ! 今度はこれですっ!!」
「鋼鉄鎧……鎧だけか。ルティ、これをどこで?」
「それがですね、所々にある草地に武器とか防具とかが大量に落ちてまして、そこから拾ってきたんですよ~」
「草地に落ちてた……? 周りに人の気配は無かったのか?」
偶然にしても早すぎるしスキル効果にしても怪しい。
「アック様の言う通り見当たらなかったです。きっとアック様の為に、武器たちが見つけて欲しかったんじゃないかなぁと思うのですよ~」
そんなスキルがあるわけないだろ……。
まさか盗品なのでは?
もちろんルティが盗んだ物ではなく、何者かが一時的に置いていた可能性の話だ。
――などと考えていると、
「そこのドワーフの女ぁ!! そこを動くんじゃねえ!」
野太い男の声が離れたところから聞こえてくる。どうやら後をつけられて追われていたようだ。そう上手い話は無いと思っていただけに予想通りだった。
スキルは確かに本物でそれ自体責められない。だが肝心のルティはぼんやりとしていて、状況が上手く呑み込めていない感じだ。
「アック様、もしかしなくてもわたし追われていたんですか?」
やはり全く気付いて無かったか。
「そうだと思うぞ」
「やっつけますか?」
「いや、まずは言い分を聞かないことには……」
「それはそうと、杖と鎧を身に着けて襲撃に備えちゃいましょう!」
杖だけは持っておくとして鎧はどうするかな。よりにもよって盗賊の物を拾ってきたというのもルティらしいが。悪気が無いとしても盗賊はよく思わないだろうな。
「お頭ぁ! ドワーフ娘と弱そうな野郎がいますぜ!」
「おぅ! 舐めた真似をしやがるもんだな、おい」
「どうします? やっちゃいますか? 野郎の手には杖が見えますぜ!」
盗賊団か。ラクルの周辺では見かけないが、見知らぬ土地にはつきものだな。
「アック様。どうされますか~?」
「うう~ん……」
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