蘇芳.side/
「桜さん!また喧嘩に巻き込まれて勝ったって聞きましたよ!やっぱり桜さんは最強ですね!」
「さすがだよねぇ〜」
「うるせぇよ。あいつらが弱かっただけだろ」
朝から桜くんはみんなに囲われてる。いつも通り喧嘩に巻き込まれて、一人で解決したのだろう。それでも、桜くんは自分の実力を過信しない。
「ふふふ。桜くんが強いんだよ。やっぱり優しいね」
こんなに風に言えば
「そっ//そんなことねぇ!//あいつらがっ//
弱ぇーんだ!//弱ぇーやつらが調子に乗っててムカついたからだし//」
こんなに風に顔を真っ赤にして返してくる。なんて愛らしいんだろう。喧嘩ではすぐに噛みついて、手が付けられないのに、
本当はすごく初心で可愛らしい。褒められれば顔を真っ赤にし、ムキになる。たまに笑う顔は、見ている皆んなを幸せにする。そんな人だ。だから、そんな桜くんには人が集まってくる。俺もその一人だけど……。
でも、最近気付いてしまった。
多分俺は桜くんに恋してる。
それに気が付いてからは少しだけ距離を取ることにした。こんな気持ちはきっと初心な彼を混乱させてしまうから。
元々ふらふらしてるから、誰にも怪しまれることはないし、大丈夫。きっと諦められる。
そう、思っていた。
「蘇芳さんって、最近桜さんとなんかありました?」
「えっ……?」
予想外だった。
「……どうしてそう思ったの?」
「あっ!いえっ!なんか桜さんとの距離がいつもより遠いなって感じたんで!あっその気のせいだったらいいんですけど……」
「…大丈夫。気のせいだよ……」
「そッうですよね!失礼しましたぁ!」
まさかにれくんに勘付かれるなんて。
(いや、でもにろくんはよく俺達のこと見てるから。他の人は、ましてや桜は鈍いし、ね。)
若干の焦りはしたけど、ここで辞めるなんて出来ない。きっとあと少しの辛抱だから。
桜.side/
「桜さん最近蘇芳さんとなんかありました?」
にれが突然聞いてきた。
なんだか最近、蘇芳に避けられてる気がする。確証?はない。でも、そんな気がする。
にれが聞いてきた事で少し意識したのもある。でも、やっぱりおかしい物はおかしい。朝だって
「桜くんが強いんだよ。やっぱり優しいね」
いつもの口調で言ってはいたけど、いつもなら、俺のすぐ後ろから声を掛けてくるのに
今日はにれの後ろから声を掛けてきた。あいつはふらふらしてるけど、芯があるやつだ。
俺をからかうにしても、あんな風に少し離れたところからするやつじゃない。でも、他のやつとは普段と変わらない距離。つまり、
俺だけ。
(もしかして、俺が蘇芳を好きなことがバレたのか?だから……)
俺は蘇芳のことが好きだ。でもこれは、仲間としてってことじゃない。つまり、、、そう言うことだ。もちろん、これが普通じゃないことはわかってる。けど、好きなもんは仕方がない。思ってるだけならいい、、、はずだ。だから、せめてバレないように気をつけて普段通りに過ごしてた。もし、知られたらまた、
『一人になる』
それだけは避けなくちゃならない。もう、
一人は嫌だから……。
「くそッ!」 / ガンッ
前までは、平気だったのに、一人だったくせに、
「あいつも結局、、、」
『今までの奴らと変わらないのか?、、』
ぽたぽたッ、、
「ヒッグ、、ァグ、、フヴ、、」
(なあ蘇芳、、、お願いだから嫌わないでくれ、、、諦めるから。)
久しぶりに流した涙は、酷くしょっぱい味がした。
END