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kn「………」
常備している除光液で、机の落書きを消す。
油性ペンで書かれた文字の内容は、見ない。
完璧には消すことができずに多少残ってしまうが、しょうがない。
自分を見て笑う声が聞こえるが、いつものことだ。
気にしていたらキリがない。
今日は花瓶が置かれていないだけ、まだマシだと。
br「おっはよ〜」
教室に、彼の声が響いた。
朝からお気楽でいいな、なんて妬みながら、机と向き合う。
「あ、ぶるーくくんおはよ〜!」
「おは、ぶるーく」
br「うん。おはよう!」
足音は、当たり前だがこちらに近づいてくる。
面倒だ。
さっさと終わらせて、この場から離れたい。
力を入れ過ぎた片手に、感覚はない。
それよりも昨日帰ってから手当をした傷と痣の方が痛い。
彼が席に着いたのとほぼ同時に、一度席を離れる。
雑巾と除光液を片付けてから、教室を出ようとする。
きっと、朝から彼の元へクラスメイトは駆け寄る。
そんな空間にいるくらいだったら、トイレにいた方が居心地がいい。
それなのに、袖を誰かに掴まれた。
適当に振り払おうとしたが、何故か離そうとしてくれない。
br「…きんとき、おはよう」
kn「…お、はよう」
掠れた声が、彼の耳に届いたのだろう。
彼がにこ、と笑うと嬉しそうに言う。
br「どこ行くの?トイレだったら僕もついて行っていい?ちょっとお腹痛くてさw」
内心、少し引いてしまった。
思考を読まれているのではないかと思ってしまう。
そこで彼の目を見そうになって、視線をずらす。
彼は俺と関わってはいけない。
それは彼自身の為にも、自分自身の為にも言える。
だから、少しでも遠ざければならない。
kn「…いや、違う」
br「じゃあどこ?あれ、忘れ物したとか?」
kn「…違うから。」
少し緩んだ手を振り払い、早歩きでその場を離れる。
kn「………」
今思えば、何故昨日は話そうと思えたのか不思議だった。
初対面で無視は悪いと思ったのか、少し期待してしまったのか。
どちらにせよ、馬鹿なことをしたことには変わりない。
あぁ、面倒臭い。
このまま教室に戻らなくてもいいだろうか。
彼奴等の視線が嫌いだから。
誰もかも見ているだけだから。
転校生が話しかけてくるから。
わざわざ「おはよう」を言うためだけに、引き留められたから。
それを、彼奴等が見ていたから。
それが原因で、余計に痛くなるから。
____自分を守ることしか、考えられないから。