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キャンバスが裂ける重い音が、誰もいない放課後の美術室に響いた。
「ごっめーん、手が滑っちゃった(笑)」
美術部の副部長で絶対的なエース、森 美彩がカッターナイフを片手に、私を嘲笑う。
私、福島 心は美術部の中学3年生だ。
中3の入学と同時に外国から、この日本の中学校に転校してきた。
この学校には運動部と吹部と美術部がある。
途中から運動部と吹部に入るのは難しかったから、途中からでも入れる美術部に入部した。
静かに作品と向き合える場所だと思って入部したのに、まさかここが底なしの地獄だとは思いもしなかった。
「っ……」
何ヶ月もかけて作った卒業制作。
一瞬にして無様な姿になった作品を見て、唇を噛み締めながら俯く。
「泣かないでよ〜、わざとじゃないんだし」
頭上から美彩のバカにしたような声が聞こえる。
消え入るような声で謝りながら、私は床に膝をつき、汚されたキャンバスを拾い上げた。
悪いのは私ではない。
でも、ここで一言でも反論すれば、明日からの嫌がらせがさらにエスカレートする。
それを知っているから、私はただ謝るしかなかった。
壊された作品を手に取り立ち上がると、上からバシャッと水が降り掛かってきた。
「あんたがここにいるから悪いんだよ。邪魔だから躓いちゃっただけ。わざとじゃないし」
バケツを手に持った、同級生の美術部員、大野 千聖がニヤニヤといやらしい笑みを浮かべながら言う。
「うるさい、黙って」
美術部の部長、佐岡 颯斗が私を睨みながら突き飛ばす。
私は美彩と千聖と佐野の3人に虐められている。
先生は見て見ぬふりだし、他の部員たちは自分がターゲットにされたくないから助けてくれない。
「………..」
何も言わずに部室を出る。
「かわいそ〜」
後ろから美彩のバカにした声が聞こえたけど、無視をしてトイレへ向かった。
「さい…あく….」
そう呟きながら髪をタオルで拭く。
卒業制作の締切まで、残り1ヶ月。
「あれだけ頑張ったのにっ…..」
あんなボロボロな物は提出できないから、新しい作品を作らないといけない。
あの努力が…..全部無駄になった….。
さっきまで我慢していた涙が、一斉に溢れ出す。
「こんな部活っ…..入るんじゃなかったっ….」
1度入った部活は、新しい年になるまで辞める事ができないからいじめからは逃げられない。
「もう….嫌だっ…..」
その日は、声を押し殺して涙を流した。
コメント
1件
ああもう、めちゃくちゃ胸が痛む話だった…。最初から最後まで心がぎゅってなったわ。 まず、福島心の置かれてる状況がリアルでつらい。卒業制作を何ヶ月もかけて作ってきたのに、平気で壊す美彩の冷酷さ。それを見て見ぬふりする先生や部員たち。逃げ場がなくて「謝るしか能がない」ってとこが本当に苦しかった。 特にラストの「声を押し♡♡♡て涙を流した」で完全にやられた。音もなく泣くしかできない絶望って、これ以上ないほどつらいよな…。 でも「卒業制作の締切まであと1ヶ月」ってとこに微かな希望も感じた。これからどうなるんだろう、続きが気になりすぎる🔥 花咲りりぃさん、キャンバス裂ける描写とか水かけるシーンの生々しさ、めっちゃ刺さりました! 次話も楽しみにしてます!