テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
永遠の命が欲しいとか、不老不死になりたいとか、そういう話題はどの国においても持ち出されるものである。
現に、この日本の、東西に別れた島国に生きていた僕にもその話題はやってきた。
まあ、問いかけてきた相手が家族でも友達でもなく秘密結社と呼ばれるところからだったのが、運のツキだったのだが。
あれよあれよと連れ去られ、ザ研究所みたいなところに入れられて早X年。どうやら僕はもう年を取らないらしい。
それを知ったのは、気が狂いそうなほど真っ白な部屋で変な黒白のマスコットのようなやつらに囲まれている生活がヒーローの手によって終わったときであった。
普段はふよふよと動いてるアイツらが紙の束を床に投げ捨て、バタバタと忙しく駆けていっていた。それを俺はぼーっと眺めて、座り込んでいたら、派手な音をたてて部屋の壁が壊された。
無駄に広い部屋に外からの新鮮な空気が入り込み、冷たく肺を刺す。
空いた穴から身をのりだし、俺と目があった瞬間、良かった!無事かい?とヒーローに声をかけられたとき、安心と安堵が襲ってきてちょっと泣いた。
そんな出来事があったのが、数ヶ月前。
「自分の名前は言えますか?」
「あ、佐伯イッテツ……です。」
病室というより、取調室に近い部屋で聞かれた質問に言葉を返す。人と話すのが久しぶりすぎて、最初はカスみたいな音しか出なかったが、リハビリを経てなんとか話せるまでに回復した。
説明を受け、分かったことは4つ。
まず、捕まった時からけっっこうな時が経っていること。親も友達もきっともういないくらいには。
次に、僕を拉致った黒白マスコットは秘密結社のKOZAKA-Cというらしい。人々に小さなイタズラをしてガッカリポイントなるものを集めているんだそうだ。近年SNSの普及に伴い急激にその数を増やしているらしい。
そして次、そいつらを倒すため立ち上がったのが、僕を助けてくれた『ヒーロー』という職業につく存在。日本は東と西で冷戦のような状態にあるが、そのどちらにも。さらに言えば、海外にもヒーローはいるらしい。
東では科学が発展していてデバイスと呼ばれる変身装置を使ってデバイスに適応する人間が戦い、西では古来より伝わる術や血筋をもつ人間が戦う。男の子の夢みたいだなと頭の隅で思った。
そして、最後に。
僕はもう21歳から年を取ることはないらしい。さながら、21+∞歳とでも言おうか。秘密結社によりかけられた∞の呪いは複雑に噛み合っていて解くのが難しいらしい。だから、これから僕の手がしわくちゃにねることも、腰が曲がることもないのである。それってどこのなろう系?
と、まあ長く話したが本題はこっから。
【朗報】なんと僕!デバイスの適応する数値バカ高い!!!
ヒーローという職業を聞いてからずっと思ってた。何それ格好いい!!って。
説明のため見せてもらったデバイスに触れた瞬間〈これだ〉という感覚があった。
それはガラケーのような見た目をしていて、するりと手に馴染んだ。
ピロンと音がしたかと思うと、目の前が紫煙に覆われた。なーんという鳴き声と、体が軽くなった感覚。デバイスは、
︿ω︿という表示を画面に映す。 慌てた医者に手鏡で見せられた姿は、赤紫と黒を基調とした服に豹柄のファーを見にまとい、頭に機械の猫耳のようなものをくっつけたヒーローの格好。叫んだね。ktkrって。
そっから、デバイス適応値のテストをして、性能や身体の上昇がどれくらいなのか調べて、ヒーローについての座学を受けさせられて、エトセトラエトセトラ。
しかし、ヒーローになれるという僕の胸の高鳴りが最高潮になったところで、僕はまた、白い部屋に閉じ込められた。
最初は、血液検査とか、そういう軽いものだった。けど、僕の∞の呪いとデバイスが適応した結果、とあることが判明した。
九つの残機。九回までならば死んでも生き返る能力を、僕は手にしていた。
それは煙草を吸った煙から作り出すことができ、猫のような形をしている。なーんと鳴く猫を見た瞬間、医者やら研究者やらの偉い人たちの目が変わった。
またもや閉じ込められた白い部屋。
段々と、投与される薬の量が増えていく毎日。今まで薬の説明をしてくれていた医者も、今はカルテに向き合いブツブツと話すだけで。また、一人になった気分だった。
寝ている時間が、日に日に増えていった。
ベットに埃がたまっていく。
会話をする人間が、減っていった。
皆、俺よりも資料に夢中である。
手足の感覚が、なくなっていった。
指一本も動かせなくなった。
目を閉じた。
白い部屋が広がっていた。
目を閉じた。
ぼんやりと視界が歪んでいた。
目を閉じた。
もうなにもかんがえられなかった。
次に目を開けたとき、周りには白衣を着た人間が、ずらりと僕を囲んでいた。
「まさか、黒豹デバイスの特性を見れる日がこようとは……」 「この機能を調べればより多くのヒーローたちにも!」 「どんな死因にも対応できるのか」「クローン技術が確立できれば、西にだって研究所を持てる」「デバイスを調べろ!いいか国家機密になりえるぞ 」「あぁ、面白い。」
誰も、僕を見てはいなかった。
そこからの生活はモルモットにでもなった気分だった。最初の死因は衰弱死らしい。投与されていたのはゆっくりと死に向かわせるものだった。
飢餓で死のうと残機で生き返ればあっという間に健康体に大変身。食事は与えられず、食べ物が運ばれてきた日は毒入りだと察せられた。
衰弱死、溺死、ショック死、転落死、震死、煙死、圧死、餓死、焼死、絞死、窒息死、中毒死、凍死、爆死、失血死。
多分、途中から白衣のやつらもおかしくなっていって、なんの意味があるのか分からない殺され方もあった。
痛みに叫んで、喉が潰れて。白目を向けば柔いそこに刃物が迫る。
骨がひしゃげて、皮膚がめくれて。
途中から、自分がなんなのか、分からなくなっていった。
注射器が怖かった。どんな痛みに苦しむのだろうと考えて。刃物が怖かった。拷問器具みたいなものも見た。人の目が怖かった。無機質で、静かに狂っていた。
代替わりが、あったんだと思う。
思えばアイツらもよぼよぼになってたし、真っ白な部屋も壊れかけていた。
なーん、と声が響いた。
もう見飽きたその顔が迫って、僕の胸に溶けていく。心まで死んだんだな、と不意に思った。
さて、よゐこの皆。
どこぞの浦島よろしく、白い部屋から出ればそこは別世界のような東が広がる日本において、僕は立派に∞をやっています。
気まずそうな、扱い方を探るような目にはもう慣れた。そうだよなあ?先代が人体実験してたやつをどうしたらいいかなんて知ったこっちゃないよなあ?
しかし、それでも無視は出来ないし、立場的にも野放しにはできないので。
「ヒーローに、なってくれませんか。」
そんな、馬鹿げた提案をされた。
どうやら、彼らなりに考えたらしい。
∞の呪いと九つの残機をもった元モルモットをどうしたらいいかを。
そして考えた結果が先程の発言である。
馬鹿なのか、と思った。
ヒーローとは人のため世界のために悪を倒し、皆を助けるものである。そこには大きな大義名分がなければそんな大それたことできない。少年漫画の主人公を集めたような人種なのだ、それは。
そんなヒーローを、勝手に呪いつけられて残機持たされて実験台にさせられた俺様になってほしいと、こいつらは言うのだ。
ハッキリ言おう。無理である。
しかし、その無理とは、首に爆弾を仕込んだチョーカーをつけられる前であったり、白衣の人間を前にパニックを起こして過呼吸になっていたり、お外に出るのが久しぶりで右も左も分からない。なんてことがない場合にのみ、言えるものとする。
歪んだ視界のまま、ろくな抵抗も出来ずに首を縦にふった。
だって、どーせ決定事項なのだ。
こんな変なやつヒーロー協会の管理下に置いておかなければ大問題。
人体実験の内容なんて自分等の代は大して知らない。
おまけに、ヒーローになれば世間の目と同じヒーローの目がいつも付きまとう。
非常に良い考えと思えたんだろう。
人生二度目の、ヒーロー座学が始まった。
佐伯イッテツ(21+∞ )
生まれがいつか、自分がなんなのかさえ曖昧。心がぶっ壊れて廃人確定コースだったが、残機使用により、バラバラなものを無理やり型に嵌め込んだ。
先代ヒーロー協会に強い恨みあり。
ヒーローに対しては複雑。
このたび、ヒーロー見習いとなった。
Oriensの皆さん
佐伯が人体実験なうの時にヒーローになっていた。数ヶ月後に新人がくると聞いてわくわく。佐伯の事情や、先代のヒーロー協会については知らない。
Dyticaの皆さん
人外二人を除き、佐伯人体実験期にヒーローになった。東のことについて、蛸と狼はちょっとだけ知ってるかもしれないし、知らないかもしれない。
先代のヒーロー協会の偉い方々
黒豹デバイスの可能性に溺れ、倫理観と人の心を失った人々。一度始めてしまったら、正気に戻ると心が壊れるので押し進めるしかなかった。皆揃って今は墓の中。
現ヒーロー協会の偉い方々
先代のしたことについてはよく分かっていない。呪いと残機か~、ほなヒーローさせる?くらいの感覚。ドでかい恨みを抱えた死ぬほど優しい男がいることにまだ気がついていない。