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玲央はじっと身を潜めながら、暗闇の中の気配を探った。
冷たい夜の空気が肌を刺し、焚き火を消したことで一層寒さが身に染みる。
パキッ……
再び、枝を踏みしめる音が響く。
人の気配が近づいてくるのは間違いない。
(……ゼノの部下か、それともスタンリーか?)
玲央は息を殺し、慎重に様子を伺う。
足音の主は警戒しているのか、慎重な動きでゆっくりと近づいてきていた。
「……いるのは分かっているぞ。」
低く落ち着いた声が響く。
玲央の目が鋭く光る。
(……やっぱりスタンリー。)
敵に見つかるわけにはいかない。
玲央は音を立てずに後退しながら、逃げ道を探った。
だが、スタンリーもまた経験豊富な軍人。
足跡やわずかな空気の流れで、玲央の動きを察知している可能性が高い。
「逃げるか? いい判断だが、無駄な足掻きだ。」
——次の瞬間、銃声が森に響いた。
バンッ!
玲央のすぐ横の木の幹が弾け飛ぶ。
(……狙いが正確すぎるねぇ。)
玲央は苦笑しながら、木陰に身を隠した。
スタンリーの射撃は威嚇ではない。
本気で仕留めにきている。
(でも、撃つってことは捕まえる気はないってことか。)
玲央は冷静に状況を整理する。
スタンリーは「千空の仲間」という可能性がある玲央を、生かして確保するよりも、排除する方を選んだ。
——つまり、千空たちが危ない。
(……急がないとねぇ。)
玲央はすぐに次の行動に移った。
「ちょっと、悪いねぇ……!」
木の陰から飛び出し、一気に反対方向へ駆け出す。
スタンリーの視線が玲央に向いた。
バンッ! バンッ!
続けざまに銃弾が玲央を狙う。
だが、玲央はそれを察知し、木々の間を縫うように走る。
(このままじゃ持たないな……!)
玲央は逃げながらも考えを巡らせる。
スタンリーを完全に撒くのは難しい。
ならば、どうするか——
選択肢は一つ。
「——こっちまで、来れるもんなら来てみな!」
玲央は大声で挑発し、あえて開けた岩場へ飛び出した。
暗闇の中、スタンリーの視界にもはっきりと姿が映る場所。
当然、狙われるリスクは高まる。
だが、玲央の狙いはそこではない。
「……フッ、いい度胸だな。」
スタンリーが銃を構える——その瞬間。
ゴゴゴゴゴ……ッ!
突然、大きな地響きが森に響き渡った。
スタンリーが一瞬だけ動きを止める。
「……これは?」
その隙を突き、玲央は一気に崖際へと駆け上がった。
(このタイミングで自然現象……? いや、そんな都合のいい話はない。)
だが、玲央はすぐに気づいた。
(違う、これは……千空たちの仕掛けだ!)
遠く、森の奥に閃光が走る。
まるで、科学の狼煙のように。
(……これは、チャンスだねぇ!)
玲央は崖の上から、すぐに別のルートへと逃げ込んだ。
スタンリーの注意は一瞬だけ森の異変へと向けられた。
——その隙をついて、玲央は影の中へと消えた。
(……千空、まさかそっちも動いてるのか?)
玲央は胸の高鳴りを押さえながら、確信した。
これは、戦いの始まりだ——!