『 雪降る世界に真紅の華を 』
ー 春待ち月 ー
2024年 5月1日
春が終わりに近づいて
桜の花も少なくなってきた
クラスが変わり、 教室には知らない顔も多い
朝、新しい教室に入る。
隣の席に座る女の子は
世界の秘密そのものみたいだった。
私が席に着くと音に反応して、
セーラー服のリボンを揺らし
花が開くみたいな笑顔を向けた。
「 あ、黒木燈ちゃん、だよねっ」
「 え、あ、うん、そうだけど 」
人懐っこい愛嬌ある笑顔
ずっと前からの友達みたいに笑いかけてくる
「 これからよろしくね、隣の席だし!」
噂に聞いた通りだった。
第一印象は
勘違いするくらい近いけど、なんか遠い
みたいな、
「燈って呼んでもいいー?」
「もちろん、!私はなんて呼べば…」
「一宮って呼んでっ!」
「…あ、うんえっと、?」
「…私、自分の苗字好きなんだ、笑」
私の疑問を汲み取る様に
さっきよりぎこちない笑顔で訳を話す
「そっか、うんっ、わかった。」
私に拒否する権利はない
彼女がそう呼んでと言ったから。
そういえばあの子は友達が多いのに
下の名前で呼ぶ子は見た事がない気がする
苗字か、苗字から取ったあだ名だけで。
あの子に言われると断れない
断ってはいけないと感じる