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俺は「承知した」と頷いて、後ろに下がる。ジルとゼノにも下がるように言うと、俺は石壁に向かって両手を突き出した。 手のひらに意識を集中させる。急速に熱くなり白く光り出す。ここまで進んで来る間にわかったのだが、ブーツで踏みしめる土が固かった。ということは、石壁もかなり固いと見た。ある程度の強い魔法を使わねばならぬ。しかし強過ぎると石壁の奥の鉱石を粉々にしかねない。細心の注意が必要だ。
俺は、破壊された石壁の破片がこちらへ飛んでくることを想定して、結界を張ってもらおうと後ろを振り返ろうとした。だが、それよりも早く、俺の周囲に結界の膜が張られた。後ろを向くと、ゼノが笑って頷いた。俺も頷いて再び前を向く。そして赤い点が見えた辺りを壊すイメージで、光の玉をぶつけた。
ドンッ!と大きな音と共に、辺り一帯が白い光に包まれる。俺は鉱石の行方を見逃さぬよう、目を細めて凝視した。太ももに違和感を感じたが、そちらに目を向ける余裕は無い。白い光の向こう側で、砕け散った無数の石の中に、小さな赤い点がある石を見つけた。ジルが後方から光を当ててくれていたから見つけられた。
俺は石に飛びつき、しっかりと右手に握りこんだ。そして着地した瞬間に、その場に倒れてしまう。
「ラズール殿っ!」
「大丈夫かっ」
ゼノとジルが同時に叫び、近づいてくる足音が聞こえる。
俺は何が起こったのかわらかなかった。急いで上体を起こして立ち上がろうとするが、足に力が入らない。なぜだ。俺の魔法は完璧だった。疲れてもいない。なのになぜ…。そこまで考えてハッとする。そういえば太ももに違和感を感じた。もしかすると原因は…。
強引に立とうとして、両側から肩を掴まれた。
「待てっ、動くな!」
「ゼノ、ラズール殿を早く宿へ連れて行こう」
「わかった。とりあえず応急処置をする」
「処置?どういう…」
聞こうとして俺は口を閉じた。
ゼノとジルが、かなり焦っている様子だったからだ。そうか、やはり俺は怪我をしている。太ももに感じた違和感は、壊れた石壁から飛んできた石が当たったからなんだろう。だがその程度なら大したことはない。応急処置をしてもらえば、馬の所まで歩ける。
そう気楽に考えていたが、事態は深刻だったようだ。しかしどのように深刻だったかは、俺は知らない。応急処置をしてもらっている間に、気を失ってしまったのだから。