康二Side
敵の呪いのせいで絶体絶命だった俺、照兄、さっくんの三人。意識を乗っ取られ動けなかった俺を助けてくれたのは、ふっかさんだった。
ふっかさんの声に合わせ、戦いを再開した俺ら。でも呪いがどんどん体を蝕んできていて、なかなか思うように戦えない。
🧡「くっそ、悔しいな……」
みんなの役に立ちたいのに、これじゃまともに戦えない……反応速度も少しずつ鈍ってきていて、もういつまで持つのか……
💜『ねえ、聞こえる?』
🧡「え、ふっかさん?」
敵にサンダーを撃ったところで、脳内にふっかさんの声が響く。これは、戦いの時にだけ使えるふっかさんのテレパシーや。
💜『三人とも、呪い結構進行してるよね?ここは俺に任せて、先に上行っててくんない?』
💛「は?何言ってんだよ、お前を残してなんて……」
💜『俺は三人にここで死んでほしくないの!上あがったらあべちゃんとかラウール達と合流できるからさ。なるべく動かなくて済むように、俺の術で飛ばすから。ね?』
ふっかさんの声はいつになく真剣だった。まあ確かに、ここで俺たちが戦い続けても……
俺は悩む照兄より先に返事をした。
🧡「わかった。そう言うふっかさんも死なんといてな?」
💜『俺がこいつら相手に死ぬわけないだろ?』
💛「……わかったよ。佐久間もそれでいいよな?……ん?佐久間?」
さっきから、さっくんの返事や反応がない。待って、なんか、嫌な予感が……
さっくんが戦っているはずの方を見ると。
🧡「えっ!?さっくん!?」
うなだれてその場で立ち尽くすさっくんがいた。まとっているオーラは、明らかに“向こう側“だった。
💜「くっそ、遅かったか!」
ふっかさんはさっくんの異変に気づくと、対峙していた敵を一掃して俺の隣にやってきた。
💛「おい、佐久間!何やってんだよ……!?」
照兄の声にも全く反応しないさっくん。嘘やろ、さっくんが……!
🐰「アハッ、やっと1人来てくれた〜!ようこそ、“佐久間くん“……?」
ウサギがそう言うと、さっくんはゆっくりと顔をあげる。その目は、真っ黒に輝いていた。
🧡「ふっかさん、どないしよう?!」
💜「……大丈夫。佐久間のことは俺に任せて」
すると俺の隣にいたふっかさんは、瞬間移動でさっくんの隣まで移動した。意識を乗っ取られたさっくんは、ふっかさんめがけてナイフを振り上げる。
その攻撃をふっかさんはさらりと避け、不意をついて耳元で囁いた。
💜「いいのかよ、お前の嫁たちがどうなっても……」
🩷「はっ!!それだけは!!」
嫁、というフレーズに反応してそう叫ぶと、さっくんの目の輝きは黒からピンクに戻った。こんなところでもブレへんなんて……
💜「ハハッ、やっぱ単純だな」
🩷「んなっ?!どういう意味だよ深澤!!」
🐰「う、嘘でしょ……?!今完全に堕ちたはずなのに!」
想定外の出来事に慌てふためくウサギ。この精神状態なら、ふっかさんのエスパーも効きやすいやろうな。
💛「ふっか、今のうちに!」
💜「わあーってるよ。そんじゃ、目瞑って?」
言われた通り目を瞑ると、体が少し浮く感覚がした。
おそるおそる目を開くと、俺たちはもう最上部の扉の前にいた。
🧡「ふっかさん、大丈夫かな……」
🩷「絶対大丈夫だよ、あいつが死ぬ訳ないって……」
喋ってる途中で、さっくんの言葉が止まった。と思えば、ふらりとその場に倒れ込んでしまった。
🧡「さっくん!!」
わずかな体力を振り絞ってさっくんの隣まで動く。あの場から離れたせいか分からんけど、呪いが急激に進行しているみたいや。確かに俺も、体と胸の痛みが増している。
🧡「なあ、さっくんがもうほんまにヤバいかもしれ……照兄!!」
照兄の方を見ると、照兄は胸を押さえてその場にうずくまっていた。
💛「ごめん、康二……俺ももう、限界かも」
そう言って、照兄も倒れ込んでしまった。
🧡「そんな、やめてや!照兄、さっくん……!!」
残された俺も、もう4人を探しに行けるほどの体力はない。少しずつ、痛みも増す。
🧡「あかん……俺らこのまま、ここで……」
呪いの痛さと一人の辛さから目から溢れる涙。そのまま一人泣いていたところに、やっと4人が現れた。
涼太Side
🧡「――って言う訳や」
一通り話し終えた康二の目には、また涙が溜まっている。
❤️「なるほど、そんなことがあったんだね」
💚「来るの遅くなって本当にごめん!俺のせいだ……」
パン!と手を合わせて謝る阿部。
❤️「いや、阿部のせいじゃない。俺が道に迷ったのが悪いよ」
💚「いやいや!舘様は絶対悪くないよ!!俺がゆり組で倒れたのが……」
かばい合う俺たちを見て、すっかり元気を取り戻した康二が止める。
🧡「ちょちょ、2人のせいやないって!!そんなに言い合わんといてや!」
❤️「……ごめん」
💚「ごめんね……」
💙「……それにしても、照が呪い見破れないって珍しいな?」
腕を組んで何かを考えていた翔太は、不意にそんなことを口にした。
🧡「確かにな。それふっかさんも言っとったわ」
体育座りをしていた康二は、あぐら座りに座り直しながら相づちを打つ。
すると突如、佐久間と照を集中的に回復していたラウールが阿部を呼んだ。
🤍「ねえ、あべちゃん!ちょっと来てくれない?」
💚「ん、どしたのー?」
🤍「この呪い、思ってたよりも複雑で……分析してくれないかな」
💚「わかった、任せて」
阿部はそう言うと淡い緑色の霧を作り出し、佐久間と康二の体を覆う。
💙「ラウールが分かんない呪いなんて……」
❤️「珍しいね」
💙「おう」
大体のものは1人で回復させてしまうラウールが分からないとは……やはり相手の本拠地に来ているわけだから、効力も強まっているのかもしれない。
💚「なるほどね。ラウ、これは……」
分析を終えた阿部とラウールの間を謎の単語が飛び交う。その後ラウールが術を出すと、霧がかった2人の体が一際光った。霧が晴れたかと思えば、2人はとても落ち着いた表情をして静かな寝息を立てていた。
🤍「よし、これで大丈夫そう!ありがと、あべちゃん」
💚「いえいえ!」
阿部とラウールもその場に立ち上がり、全員でふう、と息をつく。
❤️「2人とも、回復ありがとう。あとはふっかが来るだけだね」
🤍「ふっかさん無事だといいんだけど」
💙「あいつは大丈夫でしょ」
みんなで階段の方を確認する。
するとそこに……
💜「あ〜〜疲れた〜〜ラウ回復してぇ〜〜」
一瞬にして現れたふっかがラウールの前でゴロンと横になった。
💙「ほらな」
🤍「ふっかさん!?」
💚「珍し!ふっかがそんなに甘えるなんて」
💜「これはもう無理だよあべちゃん〜〜敵多すぎてクタクタ〜〜」
🧡「ふっかさん……ふっかさん……!!」
康二は目に涙をたくさん浮かべてふっかに飛びついた。
💜「おわっ!ちょ、」
🧡「良かった、良かった無事で……!!」
💜「……大丈夫だよ、こーじ。俺はあれくらいじゃ死なねぇよ」
ふっかは腕の中の康二の頭を優しく撫でる。その腕や頬には血が流れていて、結構激しい戦いだったことが分かる。
🤍「ごめん康二くん、ふっかさん回復しないとだから……」
🧡「あ、ごめんラウ!」
康二はラウールの言葉を聞いて、涙を拭きながら慌てて立ち上がる。ふっかは横になったまま、ラウールの術を大人しく受けている。
🤍「結構激しかったんだね……」
💜「獣人はやっぱ慣れないや。いててっ」
2人の会話を聞きつつ佐久間と照の様子を確認する。すると、
🩷「ん……」
❤️「あ、」
佐久間がゆっくりと目を開けた。
❤️「みんな!佐久間が!」
俺がみんなに言うと、同じタイミングで照も目を覚ました。
💚「照!佐久間!!良かった、やっと起きた……」
俺と一緒に照と佐久間のそばにいた阿部が、穏やかな笑顔でそう言う。
🩷「あべちゃん、涼太……!良かった、みんな無事だったんだね」
💙「俺たちの心配はいいんだよ、2人が大丈夫で良かった……」
💛「……ごめん、俺としたことが」
💚「そんな、気にしないでよ」
俺たちの会話を聞いていたらしいふっかが、元気よく言う。
💜「大丈夫大丈夫!リーダーだからって無理すんな!」
💛「わ、ふっか!……良かった、無事で」
💜「俺が死ぬわけないだろ〜?」
そう言って俺たちの方に動こうとしたふっかは、ラウールに厳しく止められる。
🤍「ねえ、ふっかさん動かないで!!まだ終わってないんだから!!」
💜「んぇ、マジ?ごめんごめん」
🧡「照兄〜〜さっくん〜〜!!」
ふっかの代わりかのように、康二が照と佐久間に飛びつく。
💛「おお、」🩷「うわっ!」
🧡「無事で良かった〜〜」
また顔をべしょべしょにして泣く康二。3人のことをとても心配していたんだね。
💛「ねぇ康二、泣きすぎ!」
照が康二の頭を撫で、笑いながら言う。
🧡「うぅ、だってぇ〜」
🩷「これから蓮も助けに行くんだよ?ここでそんなに泣いてどうすんの!」
バシン!と康二の背中を強く叩く佐久間。
🧡「いった!さっくん強すぎやて!!」
🩷「にゃはっ、康二ごめ〜ん」
佐久間がそう言った後、少しの静寂が訪れる。
どうやらみんな、同じことを考えたみたいだ。
💛「……みんな、もう大丈夫?」
照が問いかけると真剣な表情で頷くみんな。
もちろん、俺も頷く。
扉の奥には、1人フリーズと戦う目黒がいる。こんなところで立ち止まっていては行けない。
💙「……早く行くぞ!」
翔太が先頭に立って走り出す。俺たちも後に続いて、目黒が待つ広間へと突入した。
(続く)
長い間、更新をストップしていて申し訳ありませんでした💦
スランプに陥ってしまい、文章をなかなか書き進められませんでした…😭
スランプからは抜け出せたので、これからはノンストップで、最後まで楽しんでいただければと思います!
突然更新をストップしてしまい、申し訳ありませんでした…🙇♀️
ひいらぎ
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