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私は自分の葬式をホオズキに抱かれながら眺めた。
ホオズキは私を抱えて、私の葬式に連れてきてくれたのだ。
葬儀場は交差点の角にあり、切れ間なく車が行き交っている。
車の走る音がなかのホールまで聞こえてくるあたり、この葬儀場はかなり安い費用で葬儀をあげられるのかもしれない。
建物も埃っぽくてヒビだらけ。
大切な身内の葬儀をするためにはまず選ばないだろう。
「生きてる人間ってホント醜いよな。お前に同情するふりして、心の中では楽しんでやがる」
ホオズキのうんざりとした言葉に私はけらけらと笑った。
「私のことも醜いと思う?」
「お前は昔も今も自然体でキレイだよ。44階のマンションから幽体離脱して俺に会いに来てたあの頃からずっと」
44階のマンションに住んでいた私が、母親に気づかれず、真夜中にホオズキとの逢瀬を続けられた理由。
それは幽体離脱をしていたから。
私は母親からの仕打ちにたえきれなくなり、しょっちゅう身体を脱ぎ捨てていたらしい。
ホオズキに指摘されてやっと謎が解けた。
しかしだ。
「幽体離脱のどこが自然体なのよ?」
私がない首を傾げているつもりで聞くと、ホオズキは少しだけ考え込んだ。
「身体を脱ぎ捨てて魂だけでふらふらしてるところ?」
「なにそれ、うれしくない。もっと愛を囁け!」
ふてくされる私の頭を撫でてホオズキがにやりとする。
「お前が人間のしがらみから解放されるまでずっと待ってたんだぜ? 俺が直接手を下したら、今ごろ俺たちは離ればなれだ。愛のために我慢したんだぞ?」
これこそ究極の愛だ、なんて抜かしやがるこの男。
「これが究極の愛……」
それを嬉しいと感じて赤面する私。
頭のぶっとび具合が実にお似合いのカップルだと思う。