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#ntjo組
ゆかボンド
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読み終わりました!みどりの「肉」連呼との攻防、もうおなじみの光景になってきましたね(笑)。そこに現れた恭也さん、見た目は怖そうなのに「めちゃくちゃ驚いてる」って正直に言うギャップがたまらない。しかも、みどりとゲームで普通に打ち解けてるの、めっちゃ和みました。最後の「みどりを見つめる目」の描写、あれ絶対何か知ってそうな感じですよね…気になる。
それから、三日が経った。
「…………」
俺は大学から帰ってきて、自分の部屋のドアを開けた。
「ただいまー」
「おかえり」
「…………」
返事が返ってきた。
俺はゆっくりドアを閉める。
「……なんかもう慣れたな」
部屋の中には、みどりがいた。
俺が拾った、小さなドラゴン。
三日前までは段ボールの中に入っていたこいつも、今ではすっかり俺の部屋に馴染んでいる。
馴染んでしまっている。
「今日どうだった?」
「大学」
「そうじゃなくて」
「普通」
「お前、俺より会話下手じゃない?」
みどりは俺の言葉を無視して、テレビを見ていた。
「……それ俺のゲームじゃん」
「やってる」
「勝手に起動したの?」
「うん」
「どうやって?」
「こう」
みどりがコントローラーを持ち上げる。
小さな手で。
「…………」
なんだろう。
色々とツッコみたい。
でも、もう疲れた。
「……まあいいや」
「うん」
俺はカバンを置き、冷蔵庫を開ける。
「飯、何にするかな……」
「肉」
「却下」
「なんで?」
「高いから」
「肉」
「却下」
「肉」
「却下」
「肉」
「…………」
俺は冷蔵庫を閉めた。
「今日は卵かけご飯」
「肉は?」
「ない」
「…………」
みどりが悲しそうな顔をした。
「そんな顔してもないものはない」
「…………」
「やめろ」
「…………」
「その目やめろ」
「…………」
「分かったよ。明日買うから」
「うん」
「お前、絶対分かっててやってるだろ」
その日の夜。
俺はゴミをまとめて、玄関を出た。
「ちょっとゴミ捨ててくる」
「うん」
「お前は絶対に外出るなよ」
「分かった」
「本当に?」
「うん」
「……じゃあ行ってくる」
ドアを閉める。
ゴミ袋を持って、廊下を歩く。
そして、角を曲がったところで。
「お」
「……?」
声がした。
顔を上げる。
そこには、一人の男が立っていた。
派手な金髪。
鋭い目つき。
そして、口には煙草。
「……あ」
近所に住んでいる男だった。
名前は、恭也。
二十五歳。
俺より少し年上で、近所の人間からは「兄ちゃん」だとか「アニキ」だとか呼ばれている。
見た目だけなら、完全に怖い人だ。
実際、初めて会ったときは俺も少し怖かった。
「お前、らだ男だろ」
「そうですけど」
「大学生の」
「はい」
「最近、見ねぇと思ったら」
「?」
恭也は煙草をくわえたまま、俺の後ろを見る。
「……なんか飼ってんの?」
「…………」
俺の心臓が止まりかけた。
「な、なんでですか?」
「いや」
恭也は首を傾げる。
「さっき、お前の部屋から変な声聞こえた」
「…………」
「『肉』とか」
「…………」
「『高い』とか」
「…………」
「あと、なんかゲームの音」
「…………」
俺は天を仰いだ。
「…………終わった」
「何が?」
「いや、なんでもないです」
恭也は不思議そうな顔をした。
「まあいいけど」
「はい」
「そういや、お前ゲームやるんだっけ?」
「まあ、普通に」
「今度やろうぜ」
「え?」
「俺、結構強いぞ」
「……本当ですか?」
「嘘ついてどうすんだよ」
そのとき。
俺の部屋から音がした。
「らだ男ー」
「…………」
恭也がこちらを見る。
「…………」
俺も恭也を見る。
「…………今の何?」
「テレビです」
「喋ったけど」
「最近のテレビって喋るんですよ」
「へぇ」
恭也は少し考える。
「便利になったな」
「そうですね」
俺はその場を離れようとした。
――が。
「らだ男ー」
「「…………」」
恭也が煙草を口から外した。
「テレビ?」
「…………」
「本当に?」
「…………」
「見せてみ」
「いや、それは――」
恭也が俺の肩に手を置く。
「気になる」
「…………」
俺は観念した。
「……分かりました」
部屋のドアを開ける。
「ただいま」
「おかえり」
「…………」
みどりがこちらを見る。
そして。
「誰?」
「近所の人」
「へぇ」
恭也が固まった。
「…………」
「…………」
「…………」
数秒。
誰も喋らない。
やがて。
「……ドラゴン?」
「はい」
「…………」
恭也はみどりを見る。
みどりも恭也を見る。
「こんにちは」
「……おう」
恭也は普通に返事をした。
「…………」
「…………」
「…………」
俺が口を開く。
「驚かないんですか?」
「いや」
恭也は煙草を灰皿に置いた。
「めちゃくちゃ驚いてる」
「ですよね」
「でもまあ」
恭也はみどりを見る。
「かわいいな」
「でしょ?」
「お前が言うな」
「なんで?」
「なんでもない」
みどりが恭也に近づく。
「ゲームできる?」
「できるぞ」
「やる?」
「やるか」
「おい」
俺を置いて話が進んでいく。
「……え?」
みどりがコントローラーを持つ。
恭也が隣に座る。
「何のゲーム?」
「これ」
「お、懐かしいな」
「…………」
俺は立ったまま二人を見る。
数分後。
「……強っ」
「だろ?」
「もう一回」
「いいぞ」
「…………」
なんなんだ、この状況。
三日前まで、俺は一人暮らしだった。
それが今では。
部屋にドラゴンがいて。
近所のアニキが勝手にゲームをしている。
「…………」
俺はソファに座った。
「……まあ」
悪くないかもしれない。
「らだ男」
「ん?」
「腹減った」
「お前はそればっかりだな」
恭也が笑う。
「じゃあ、なんか食いに行くか?」
「肉」
「お前は黙ってろ」
「肉」
「…………」
俺は財布を確認した。
そんな俺の表情を察したのか恭也が立ち上がって、
「じゃあ俺が出す」
「え?」
「近所のよしみだ」
「いや、悪いですよ」
「いいって」
「…………」
みどりを見る。
みどりは目を輝かせている。
「肉」
「…………」
「肉」
「…………」
「…………」
「……分かったよ」
俺は立ち上がった。
「今日だけだからな」
「やった」
「お前、ドラゴンなのに現金なやつだな……」
こうして。
俺の生活に、初めて一人の「近所のアニキ」が加わった。
「らだ男。」
「ん?」
「このドラゴン、どこで拾った?」
「…………」
俺はみどりを見る。
みどりも、俺を見る。
「……道端」
「ふーん」
恭也はそれ以上、何も聞かなかった。
ただ。
みどりを見つめる目だけが、ほんの少し変わっていた。