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羽海汐遠
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自転車和尚
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天楽°
38
#塩レモン
comi
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「うっ…ん…」
私は目を覚ました。
「…っ!?」
周りは、どす黒い霧のようなもので包まれた異様な光景。
「ここはっ…!?」
私以外も倒れていた。
唯一、春子だけが呼吸を荒くして立っていた。
「春子っ…?」
「はぁっ…はぁっ…」
「っ…!」
『精神世界』身体と離れた精神の世界に自身と対象を誘う。前身大地界に属す。
「春子がっ…やったの…?」
「…分からないっ…」
春子は大粒の涙を流していた。
「なにが…トリガーに…」
私は、ふと1年前の事を思い出した。
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「春子好きな人いないの?」
「えぇ〜言わないよぉ」
ある日、香織が席を外している時に春子と適当に話をしようと思って、恋バナをしてみた。
こんなものは、ただ空気感を崩さない為だけにやっていた。
「だって春子全然そういうの教えてくれないんだもん」
「…だって、香織に知られたら…」
「…?」
「…これ、奈緒ちゃんだけに言うからね?誰にも言っちゃダメだよ?」
「わかってるよ」
内心、言う気もないし興味もなかったが、聞いた時衝撃を受けたのを覚えている。
「…私、叶太が好きなの」
「え…?」
「叶太って、虐められてるじゃん?香織とか、悠真君に。だからあんまり言えないの…」
「そう…だよね」
「でも叶太は、真弥が好きなんじゃないかって思うんだよね」
「…!」
春子が唇を噛み締める。
「簡単に人を助けれるって…良いよねっ…」
「…」
確かに叶太は、真弥に好意を抱いているようには、見えた。
今思えば、春子が香織に本格的に手を貸し始めたのは、これが理由だったのかもしれない。
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「春子…」
トリガーは、愛する人の死…。
「もうっ…いやなのっ…」
春子が肩を震わせている。
「ん…なにがっ…おきた…」
皆続々と起き始めた。
「春子が…開花したの」
「何っ…!?」
「ここはどこなの?」
「精神世界。春子がここに私達を連れてきたの。」
皆が春子を見る。
「っ…皆、何かいるっす」
黒い霧の奥に、何かがいる。
「…早々に殺しておくべきだった。保護型も、お前も…。」
「っ…」
真弥と、倒れた八雲がいた。
「真弥っ…」
「っ…!!!ロアぁあぁ!!!!」
ギリスの向く方向を見ると、宙に吊り下げられた女性がいた。
「ん゛ーっ!!ん゛ー!!!」
口を閉じられている。
「お前よくもっ…!!」
ギリスが真弥に殴り掛かる。
しかし、その手はすり抜けた。
「なにっ…」
「精神世界は…あくまで精神の世界だ、お互いに実体へのダメージは入れられない」
真弥が春子を睨む。
「邪魔なゴミ虫が…」
私は、1歩前に踏み出した。
真弥の元へ、歩く。
「…なんだ」
あぁ、真弥、ようやく私達は。
「真弥…ようやく私達は、目を見て話せるね」
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「…」
八雲が静かに起きた。
「お前…」
「ねぇ、真弥。どうして、急にこんなこと…」
「ふっ…どうして?別に急じゃないな。私とこいつが共存していた時、何度も内側から訴えたよ。『もう良い人を演じるな』とな。」
真弥が八雲を見る。
「お前ら、こいつの行動は厄介だっただろ?」
「…?」
「こいつは、善と悪のバランスを持たない状態。それは私も同じ。こいつは考えもなしに悪を消すためだけに動く。それがどういうことか、分からないのか?」
「うるさい!!!」
八雲の拳が真弥をすり抜ける。
「…」
「私は今まで復讐の機会を待っていた。私は感情的に優位ではない。だからいつも真弥は善の方へ行動し続けていた。…私はただの感情のひとつでしかなかった…」
「…!」
「しかし、今まで私が不利な状態で拮抗し合っていた善と悪の感情が分裂して私はようやく私として、1人の者として!!自分の復讐の野望を叶えられる日が来たっ…!!」
真弥はエトロアさんの方を向く。
「ありがとうなぁ…可哀想な善いエトロアさんよ…」
「ロアを離してくれ…頼む…」
グースが弱々しくお願いする。
「…やだなぁ…私は純粋な悪だ、そんな情を誘うような頼みをされたってできねぇよ」
真弥が、私達の方を向いて、急に真剣な顔になった。
「…こいつがどれだけ危険なのか、分からないのか?」
八雲を指さす。
「…どういうこと」
「こいつは悪に対して考えなく全力で向かってくる。それが何を意味するのか。」
「…!?」
何を、言ってるの?
「…まさか『精神世界』…はるか昔の大地界に属す妖精王の力を開花させるとは…厄介だ。あぁ、交渉でもしようか」
「いきなり何を…!」
「まあまあ落ち着け、悪くない話をくれてやる」
真弥が八雲と春子を指さす。
「こいつらを私によこしてくれれば、お前らの命は助けてやる。」
「何をっ…!!」
「グース、ギリス。お前らには、いい条件じゃないか?それに、それ以外も自分の命が助かる」
「そんなことっ…」
「いや、いい条件だ」
「!?」
ギリスの返事に私は驚きを隠せなかった。
「それでロアを返してくれるんだろ」
「もちろんだ…ただし、能力までは返せない」
「いやそれでもいい、ロアが帰ってくるなら…」
「……………」
「僕の…大切な人だから」
「待ってよギリス!!ここまで一緒にやってきた仲間を見捨てるつもり!?」
愛菜と香織がギリスに問い詰める。
「僕達は元々敵同士だっただろ、これも運命じゃないか?」
「…………」
「グース!!何とか言えよ!!」
悠真がグースにそう言った時だった。
「…大切な人、か」
「そうさグース!ダイヤとハートのジャックは、歴史的に結ばれてキングとクイーンになる!」
「…………」
「…なんで、浮かない顔してるんだ?」
「ん゛ーっ…ん゛ー!!」
「………ロア?」
エトロアさんは、明らかにグースの方をみて何かを訴えている。
「…ギリス、一つだけ…謝っておく…」
「…は?」
「俺は…ロアと交際している」
「…………は?」
「お前がいるから、黙っていたんだ…」
「あ〜…もう、ちょっと!!あんた達の恋事情なんてどうでもいいんだって!!とにかく春子と八雲は渡せないんだよ!!」
内田さんが我慢の限界で声を荒らげた。
ギリスが崩れ落ちて、グースも黙った。
「ははっ…中々面白いな、こいつは上出来」
真弥がエトロアさんの方を見て笑う。
「私はな、お前らにも気を使ってあげてるんだぞ?だって、八雲をほっとくということがなぜ危険なのかも分からない奴らに預けておかない選択肢を与えてやってるんだからな」
「…さっきから、なんで八雲が危険かは言ってくれないんすね」
「聞くか?別に私は、いいんだがな」
八雲が真弥を睨みつける。
「こいつはなぁ、制御装置の無くなった殺人マシーンと同じなんだよ。なんでかって?お前ら知ってるだろ真弥のあの強過ぎる正義感。あれを制御していたのは紛れもなくこの私なんだ」
真弥が自分の胸に手を当てる。
「私がいなけりゃ、こいつはどうなると思う?目の前にある悪をただひたすらに殺す殺人マシーンだぞ?私は逆返せばこいつの冷静な部分だったんだよ!!!」
私は、なんだか腑に落ちたような気がした。
真弥の正義感を制御するものが本当に彼女なのだとしたら…。
「…だとしても、殺戮は許されないよっ…」
愛菜が弱々しく言う。
「知らねぇな、私は何せ、善の部分を持ってないからな」
ゴゴゴゴゴゴ…
「精神世界がっ…」
真弥の抵抗により、精神世界に歪みが現れてしまった。
「このままじゃ壊される!!」
パキンッ!
「!」
歪みによってエトロアさんの口を塞いでいたものが外れた。
「っ…春子ちゃん!!精神世界を保って!!八雲ちゃん!!あなたは彼女で!彼女はあなた!!精神のみの世界になった今!あなた は彼女に1番近い存在なの!!」
「…!」
「なにを言う!」
もう一度真弥がエトロアさんの口を封じようとした時、八雲がその手を掴んだ。
「!なぜ触れられ…!」
「お前はもう必要ないんだよ!!!!」
その瞬間、真弥が霧の中に引き込まれて言った。
「っ…!?」
「悪は必要ない!!お前はこの空間で一生彷徨っていろ!!」
「…お前らっ…後悔するぞ…そいつを選んだことをっ…!!」
ズズズ…
真弥が霧に飲まれていった。
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「うあっ!!!」
私達は放り出されるように外に出た。
「皆無事!?」
目の前には、エトロアさんがいた。
「ロア!」
「ごめんなさい、心配かけて」
「真弥は!?」
「…精神世界に閉じ込められたままだよ、もう安心して」
エトロアさんの言葉を聞いて、私達は一息ついた。
「…ロア」
「グース!」
エトロアさんとグースが抱擁する。
「会いたかった…」
「ロア…どうして僕に言ってくれなかったの」
「…ギリスディア、彼女を通して全ては見ていたわ」
「…どうして…」
「隠していたこと、本当にごめんなさい。でも私は、ダイヤとハートの歴史に逆らってグースを選んだ。そこは、譲れなかったの」
「…」
「まあまあ、失恋の傷は痛いだろうけど」
「忘れなよぉ〜」
香織と春子がいじるように言う。
「ぅ…通りでロアの捜索に前のめりだったはずだ…」
ギリスが項垂れる。
「…終わったの…かな」
愛菜が呟く。
「終わってないと困るね」
内田さんが顔の汚れを拭きながら答えた。
八雲は、遠くを見ていた。
「…嬉しくないんすか、八雲さん」
「…もう、八雲って名乗る必要もないよ」
「…真弥、おかえり」
「ただいま、慶斗」
そんな2人をみて、私は嬉しい気持ちになっていた時。
「…奈緒」
「…ん?」
悠真が私を抱きしめた。
「!?!?」
「…奈緒には、色々助けられたな。命も、心も。」
「えっ…いや、そんな」
「ありがとう」
「いいって…」
「奈緒、好きだ」
「ええぇっ…」
パンパンッ!
エトロアさんが手を叩く。
「ちょっと皆各々盛り上がっているところ申し訳ないけど!これからの話をしようよ!」
「これからって?」
「もう…正直地球には居られないと思うんだ」
「まぁ…たしかにな」
「そこで…フィゲルダに来てみない…?」
「えっ…!?」
「でも私達は人間だよ?」
「もちろんそうなんだけど、大地界なら、暮らせると思うの」
「…!」
「どう…かな?」
「いけるならいきたいね」
「どう思う?真弥!」
八雲…いや、真弥は下を向いていた。
「真弥…?」
君は…私だ。
私も…君だ。
私達は…同じ…。
目の前のこいつらは…悪だ。
苦しいあの日々を。
忘れるな。
「…真弥?」
目の前のこいつらは。
「真弥?大丈夫?」
あの苦しい日々を。
「ちょっと…真弥って。」
私に送らせた。
「真弥!!」
悪だ。
「真弥!!!!」
全員が、私を見ている。
悪党共が、私を見ている。
私を苦しめた、人間共が。
こいつらは
悪だ。
「真弥、返事してよ!」
目の前で声をかけてくる奈緒に。
心配そうに見てくる他の皆に。
さあ、言ってあげよう。
「悪党は、殺さなきゃ。」
私は笑顔で、そう言い放った。
To be continue.
コメント
1件
うわっ…第11話「正義を。」めっちゃ重くて切なくて最高だった…!😭💕 真弥と八雲がついに分離したと思ったら、春子の能力開花やギリスとグースの恋愛事情とか情報量やばくない?最後の真弥の「悪党は、♡♡♡なきゃ。」がマジでゾッとした…season 1 ENDってこんなとこで終わるの!?続き気になりすぎるよおおお!!😫🔥 八雲(真弥)の心の闇、まだまだ終わらないんだね…続き待ってる〜!!✨