テラーノベル
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翌朝、教室の窓から射し込む光は、昨日の夕日の温もりとは違い、鋭く、冷たさを含んでいた。
校庭に映る影も、どこか硬く見える。
東野 翔はいつも通り、クラスの中心に立っていた。
「東野、昨日のテストどうだった?」
「翔、こっちの問題がさ…」
友達が次々に声をかける。今日も、翔は全てに笑顔で応え、軽口を交わす。誰もが振り返る人気者。
しかし、その笑顔は外の世界での仮面でしかなかった。
教室の端に目をやると、西野紬が静かに本を読む姿が見えた。
外ではクールでおとなしい彼女。周囲の視線を気にせず、存在を主張しない。
しかし翔は知っている。二人きりになると、紬は明るく、少し抜けた自分を見せることを。
そして、翔の前では本当の私でいられることを。
授業中、翔はノートに手を動かしながらも、心の中で昨日の21:29の時間を反芻していた。
「昨日は本当に、素の自分でいられたな…」
紬も同じ気持ちで、授業の合間に小さく笑みを浮かべる。
外ではクールに振る舞わなければならない。
人気者や静かで落ち着いた自分を演じる必要がある。しかし、心の奥では翔と過ごした時間が温かく残っている。
昼休み、翔は友達と話しているが、視線は紬に向いていた。紬も、離れた席から翔を見つめる。
互いに近づきたい気持ちがありながらも、学校では距離を保たなければならない。
「外では、どうしても距離ができる…」翔は心の中でつぶやく。
紬も同じ思いを抱いていた。
「翔の隣にいたいのに、学校では無理…」
心の中は、いつもこの繰り返しだ。
放課後、校庭の片隅にある小さな神社のベンチで再会する。ここでは互いに本音でいられる時間――21:29が待っている。
紬がベンチに座りながら、少し息をつく。
「翔、今日も外では距離を置かなきゃいけなかったね」
「うん…でも、ここに来ると全部忘れられる」
二人だけの時間は、学校での距離感を忘れさせる魔法のようだった。
翔は紬の手をそっと握る。
「昨日みたいに、また本音で話そう」
紬も頷く。「うん、そうしよう」
21:29の静かな夜風が二人の間を通り過ぎ、髪を揺らす。翔と紬の指が絡まり、心臓が互いの鼓動を確かめるように打つ。
「学校では見せられないけど、ここでは本当の私を出せる」紬が呟く。
「俺も同じだ」翔が応える。
その日の夜、二人は言葉にならない想いを互いの存在で感じた。
学校での距離感があっても、この21:29の時間があれば心はつながる。
翔は心の中で思う。「学校では仮面をかぶるけど、紬といるこの時間だけは本物の自分でいられる」
紬も同じく思う。「外では無理でも、ここでは翔と本当の私でいられる」
夕闇が校庭を覆い、街灯が一つずつ灯る。二人の21:29は、今日も確かに始まった。
互いに名前を呼ばず、仮面をかぶる学校の世界とは違い、この時間だけは二人の心が直接触れ合う。
「ねぇ、翔…いつか学校でも、こんな風に近づけたらいいな」紬がつぶやく。
翔は静かに微笑む。「その日が来るまで、俺たちの21:29を大事にしよう」
夜風が二人の頬をなで、木々の葉がざわめく。
外では仮面をかぶる二人も、この小さな時間だけは本当の自分を見せられる。
二人の心は、今日も互いに触れ合った_学校でのすれ違いにも負けず、21:29の時間は二人の絆を確かに結んでいた。
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