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恵
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#連載小説
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星キラリ

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夜が明け、美少女探偵と加賀美は大広間で朝食の席についた。
昨夜のラブラブな空気は朝の光に溶け、代わりに猫神家の面々が揃っている。上座には猫神八千代。その左右に孫の猫神あかねと猫神みお。叔母の猫神おりん、双子の猫神うめと猫神さくら。仮面の遠い親戚・ネコキヨと、弁護士の猫塚れいら。黒いメイド服の猫見こまが、盆を抱えて厨房から出てきた。
今朝のメニューは、群馬名物の大盛りパスタだった。
こまが説明しながら、大きな皿を並べていく。
「群馬は、大盛りパスタのお店が多い県なんですニャ。高崎や前橋の周辺には、地元の方が当たり前のように『大盛り無料』を掲げる洋食屋さんやイタリアンがあって、観光客も驚くほど盛りがいいんです。昔から『腹一杯食べさせる』文化が根付いていて、ソースもミート、ナポリタン、クリーム、和風まで種類が多いんですニャ。うちでは上州麦豚のミートソースと、下仁田ネギを効かせた和風パスタを用意しました。麺は多めに茹でてあります」
湯気の立つ皿が並ぶ。ミートソースは赤く照り、挽肉の旨味が鼻をくすぐる。和風の方はネギの甘みと醤油の香りが穏やかに広がる。みおがすぐにフォークを持ち、あかねが「熱いから気をつけて」とたしなめる。おりんが上品に絡め、うめとさくらが同時に「おいしいニャ」と声を揃えた。ネコキヨは仮面のまま静かに口を運び、れいらが隣で小さく頷く。こまは自分の分は後回しにして、八千代の皿を少し手前に寄せた。
姫はナポリタン寄りのミートを一口含み、目を細めた。
「……麺がしっかりしていて、ソースが絡みますでごぜぇやす。大盛りなのに、くどくない」
加賀美も短く「うまい」とだけ言い、フォークを進める。こまの説明通り、群馬の「大盛り」は量だけでなく、食べ飽きないバランスを意識しているらしかった。
食事の途中で、八千代が金色の瞳を上げた。
「まだタタリを止められないのかい」
姫が思わずフォークを置く。
「あんな拉致監禁みたいな真似、やめてくだせぇ!」
加賀美も続いた。
「あのような行為は、警察としても許せません」
八千代はきょとんとした顔をする。
「なんのことだい? 生贄のこと? あれは冗談だ」
「なら、私を縛って空室に入れたのは誰でごぜぇやすか……?」
姫の声が微かに震える。誰かが、低く呟いた。
「タタリより、遺産よね……」
「だから妾はまだ往生しないよ! 不謹慎な! 失礼も大概にせよ!」
八千代が怒り、二股のしっぽが座布団を叩く。それからは、皆が無言でパスタを食べた。麺の音だけが、広間に小さく響く。
——しばらくして。
「うぐぐ……」
八千代の喉が鳴った。体が強張り、次の瞬間、上座から崩れるように倒れる。こまが悲鳴を上げて駆け寄り、水を持ってくる。しかし八千代は飲めない。背中をさすり、介抱するこまの手が、震えていた。八千代は苦悶の末、口の端から少量の血を吐き、動かなくなった。
「キャー!」
みおがあかねに掴まり、うめとさくらが立ち上がる。
おりんが青ざめ、れいらが即座に脈を確認しようとする。加賀美は八千代の口元に顔を寄せ、短く嗅いだ。
「……アーモンド臭。青酸を疑う」
姫は心配のあまり、八千代の冷たくなりかけた手に触れた。
その瞬間——不思議なことが起きた。
「ウニャー!」
八千代が大きく背伸びをし、まるで居眠りから覚めたように上体を起こした。
金色の瞳がぱちくりと瞬く。姫は安堵に膝から力が抜け、
「良かった……!」
とこまも泣きながら喜んだ。生きている。確かに、生きている。
加賀美が静かに言った。
「事件が起きた以上、応援を要請します」
八千代はそれを手で制した。
「一族の恥を晒すわけにはいかん。警察はお前さんだけでいい。何より——タタリを早く止めてくれ」
「それでは……」
「頼む。老い先短い猫又の頼みじゃ」
加賀美は一拍置き、短く頷いた。
「了解しました」
辺りはまだ騒然としていた。おりんが、指をこまへ向ける。
「毒なら、一番に疑わしいのはメイドニャ! 料理はメイドが作っているから、毒など入れ放題ニャ!」
こまは泣きながら首を振った。
「やってません! 私は、やってませんニャ……!」
八千代が咳を一つし、声を張る。
「妾は生きておる。証拠もないのに、この子を疑うんじゃない」
一同が、少しだけ静かになった。
パスタの湯気は、まだ皿の上で揺れていた。誰が毒を盛ったのか。タタリはまだ消えていない。猫神家の朝は、穏やかではない。
続く。
コメント
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うわあああ第74話読み終えた!!!😭💕 朝のラブラブ空気から一転して、まさかの毒殺未遂…!!!八千代がパスタ食べて苦しみ出すシーン、めっちゃドキドキしたよ…!!そんで「ウニャー!」って突然生き返るの、まさかの展開すぎて笑っちゃったけど良かったね…!笑 加賀美がすぐに「アーモンド臭…青酸」って嗅ぎ分けるところ、やっぱ探偵ものならではのカッコよさあるよね✨ おりんが真っ先にこまを疑うのもミステリーテイストでゾクゾクする…。群馬の大盛りパスタの蘊蓄(うんちく)も勉強になったし、日常と非日常のバランスが絶妙な回だったよ!次回も気になる〜🌸