やっぱ、百合は失恋系が好き
⚠️( 👑🍍 女体化 )
放課後の教室は、夕陽で赤く染まっていた。
カーテンの影がゆらゆら揺れて、黒板の文字すらも淡く見える。窓際の席で、うちはシャーペンをくるくる回しながら単語帳をめくっていた。
赫「 英語とかマジ無理〜 」
隣の机で、なっちゃんはノートをぱたんと閉じて、机に突っ伏した。
黈「 もー、またぁ?なっちゃんもうちょっと頑張ろう? 」
赫 「 みこ、厳しい … 」
ゞ「あ、ちゅっかー、これめっちゃ可愛くない?この丸の中のイラスト! 」
そう言って、教科書の端っこに描いてた落書きを指さす。小さな栗みたいなキャラが、笑って手を振っていた。
黈「 これ、授業中のノートやん… 」
ゞ「まぁ、かわええけど。 」
うちが苦笑しつつ返すと、なっちゃんは「でしょー?」と無邪気に声を上げた。
赫「 来年から、あーしら大学生なんだね 」
ノートを閉じながら、なっちゃんがぽつりとつぶやいた。
窓の外はもうすっかり夕焼けで、空が茜色から群青へと変わりかけている。教室に残ったのはうちら二人だけ。静けさの中、その言葉だけが妙に響いた。
黈「……せやね。なんか信じられんね。うちら、ついこの前まで高一やった気する…」
赫「 わかる〜! しかも大学とか、あーし全然イメージつかん! 」
黈「なっちゃんやったら、どこ行っても楽しくやれそうやけど… 」
なっちゃんはどこにいても、誰といても、場を明るくする。だからきっと、うちの隣にいる未来は多分ない。
黈「 ………… 」
赫「 … ? 」
勉強を切り上げて、一緒に玄関へ向かった。
靴を脱ごうとすると、ふと体育館の中が見えた。バスケ部の練習風景がちらりと見えた。
その瞬間、なっちゃんが立ち止まった。
赫「 ……… 」
ボールを追いかける影の中に、いるまくんの姿がある。 動きが軽やかで、いつも笑って、でもどこか大人びた同級生。
黈「 … なっちゃん ? 」
赫「 ! 」
声をかけると、なっちゃんは、慌てて振り返った。
赫「 な、なんでもない! 早く帰ろ ! 」
黈「 ぇ、ちょっ … 」
強引に腕を引かれ、 昇降口を出る。
なんでもない、なんて顔じゃなかった。
あんな表情、うちには向けられたことがない。胸の奥に小さな棘が刺さる。
二人並んで歩いた帰り道、公園の明かりがぽつぽつと灯っていた。ブランコの鎖が風に揺れて、かすかに軋む音がする。
赫「 … ちょっと寄り道しよ?」
なっちゃんが笑顔で言った。
黈「 はー … 」
公園のベンチに腰かけると、吐いた息が白く揺れた。街灯の光が落ち葉に反射して、金色に見える。
赫「 ねえ、みことってどこの大学受ける?」
なっちゃんがジュースの缶を両手で抱えて、首をかしげる。
黈「うちは、地元の教育学部かなぁ。英語の先生になりたいからさ。」
赫「 へぇ、みことが… 」
ゞ「 …… ふふっ、想像したら、ちょっと面白いね。『あれ、どこまでやったんやっけ?』とかなっそう 笑 」
黈「 そ、そんな事ないよっ … 」
ゞ「 … んで、なっちゃんは ? 」
赫「んー、経済か心理学かで迷ってる。あーし、カウンセラーとかも憧れるんよ 」
黈「似合う ゞ ! なっちゃん人の話聞くの上手やし! 」
赫「 そぉ? 」
ふたりで笑い合う。
この時間が、ほんまに好きや。
赫「 あ、そうだ 」
そんなとき、なっちゃんがカバンをごそごそ探って、小さな包みを取り出した。
黈「 … マフラー ? 」
赫「 うん、お婆ちゃんに編み方教えて貰って、作ってみたの。」
照れくさそうに広げられた毛糸のマフラーは、赤と茶色のあったかそうなやつ。
黈「 …… 誰にあげるん? 」
つい、口が勝手に動いてしまった。
赫「 ひ、秘密っ … ⸝⸝ 」
そう言って、さらに頬を染めて視線をそらす。
黈「 …… 」
胸の奥がじんと痛んだ。秘密にする相手。それが自分でないことくらい、察してしまう。
黈「 そっか 。 」
笑ってごまかすしかなかった。
その時、
赫「 わっ、 」
風が吹いて、木からはらりと紅葉が落ちる。
赫「見て!めっちゃ綺麗!」
なっちゃんがしゃがみこんで、手のひらに赤い葉を載せる。
黈「 うちも、拾おうかな 」
ふたりで並んで落ち葉を集める。小さな手のひらに、赤や黄色の葉っぱが次々と重なっていく。こんな時間がずっと続けばええのに。
けどその願いが、いちばん叶わんことなんやと、うちはもうわかってた。
気づけば、街灯が橙色に光り始めていた。
ふたりで拾った落ち葉は、ノートの間に挟んで押し葉にしよう、なんて笑いながら話して。気づけば、あっという間に時間が過ぎていた。
赫「そろそろ、帰んなきゃだね。 」
なっちゃんが立ち上がり、手についた落ち葉をぱんぱんとはらう。
黈「 そうだね。暗くなる前に帰ろっか。」
ベンチから腰を上げて、公園の出口へ並んで歩く。 ちょうどその時だった。
「 あれ ? 」
黈「 ! 」
正面から歩いてくる影に、うちは気づく。
汗ばんだジャージ姿、肩に掛けたバスケバッグ。 同じクラスの、いるまくん。
紫「 2人とも、 帰り?」
軽く手を上げて笑ういるま。
その瞬間、隣を歩くなっちゃんがふっと息をのむ音がした。
横目でちらりと見ると、頬がほんのり赤い。
赫「 … ⸝⸝ 」
黈「 …… 」
暗がりに照らされて浮かぶ横顔は、さっきまで落ち葉を拾って笑っていたときよりも、ずっと恋する乙女だった。
_あぁ。
この赤らんだ頬は、うちのためやないんや。
胸の奥に、静かに落ち葉が積もるみたいな寂しさが広がっていく。
うちはきっと少女漫画で言うところの空気が読めて、ヒロインの背中を押す‘’友達‘’なんや。
黈「 … 2人とも、うちこの後用事あるから、先帰ってるわ。」
そう言うと、なっちゃんはびっくりした顔で振り向く。
赫「 ぇ、ぁ … うん。気をつけて。 」
紫「 気をつけろよ。」
黈「 うん、じゃ! 」
そのまま背を向け、足を早めて走った。
心の中で、なんとなく決まった気がした。
もういいの。これで。うちの役目は、あの子の背中を押すこと。エスコートはしなくていい。
黈「 …ッ、」
翌日
放課後の教室。うちは窓際に座って、ぼんやり外を眺めていた。
黈「 … ぁ 」
夕陽に照らされたで、いるまくんとなっちゃんが並んで歩いている。
首にはなっちゃんが編んだマフラー。手も自然に恋人繋ぎで、その光景を目にするだけで、胸がぎゅっと痛む。
黈(やっぱり、もう終わりなんや。)
ぼんやり見つめていると、ガラッと教室の扉が開いた。
ガラッ
「 みことちゃん … ? 」
振り返ると、そこにいたのは同じクラスのすちくん。
黈「 … 忘れもの? 」
そう聞くと、すちくんは小さくうなずき、机の中取り出したのは橙色と黄色の編み込みマフラーだった。
翠「 これ忘れちゃって …」
この色、この編み方……
少し目がうるっとしたけど、なんとか堪える。
翠「 …… 」
すたすた…
そんな、うちを見て、すちくんはうちの方に近づいてきた。
黈「 すちく_ 」
マフラーをそっと首元に巻いてくれた。
黈「 … ぇ ?」
翠「 風邪ひいちゃうよ? 」
黈「 ! 」
柔らかい笑顔。顔が熱くなる。
あたたかいマフラーの感触と、すちくんの優しい視線。悲しさも、少しずつほどけていくような気がした。
窓の向こうのあの子は、もううちのものではない。 けれど、この温もりは、うちだけのものになった。
黈( うん … これでええ。)
胸の奥で小さく呟く。
秋の夕暮れが、静かに教室を包む。
コメント
5件
めっちゃ切ないけどいい話すぎる、 こんなにもマフラーを好きになったことはない、、
百合あんま見ないけど凪さんのは好きだぁ…🍍ちゃんだけいつも相手を友達に思ってるのが好きです。()マフラーになりたい(((できれば橙と黄の方
おぉ…最後の持っていき方が好きっ!!マフラー、お前はいい役割をしてくれるではないか。