6人のもとに、写真を撮り終えた鑑識員が近づいてきた。
「死因は胸部を刺されたことによる失血性ショックかと。それが致命傷と見られ、ほかに刺傷などはありませんでした」
大我はうなずいて先を促す。
「部屋には被害者のものと見られる身分証明書があり、殺害されたのはこの部屋に住む麻宮総一郎さん。都内に本社をおく大手貿易会社、『アサミヤグループ』の代表取締役社長。資産は多くあるはずですがその他金品や貴重品なども残っているため、強盗目的ではないだろうと」
「うん。争った感じでもないし、顔見知りの犯行だな。みんな、被害者の周辺を洗おう」
ほかのメンバーを振り返って命じた。
「…あ、そういえばこの人ニュースで見たことあるかも」
そのとき、高地が声を上げた。
「俺もあります。確か海外との貿易だか出資だかで有名なんですよね。上場企業だったと思います」
北斗も言う。
「なら、経営陣とか周りの人が怨恨をもっている可能性はありますね」
ジェシーが続いた。それに樹が返す。
「それもあるかもしれませんが……、社長で独身というのはないはずです。だから若い妻の保険金目的かも」
だんだん推理が広がっていったのを、大我が制した。
「あの仏壇は、恐らく奥さんだ。最近か昔かはわからないが、同居人の気配がないということはしばらく独りだったんだろう。まあ、人間関係が明らかになっていけばわかるよ」
そしてさっさと家を出ようとするところを、ジェシーが呼び止めた。
「主任、凶器が残されてないかだけ確認してきます」
そして部屋中を見て回ったが、首を振りながら戻ってきた。
「たぶんないかと…。キッチンの棚の中には包丁をしまうラックがあって、空いているスペースはありませんでした」
「だろうな。凶器が落ちてるなら鑑識が見つけてる」
と言ってから、大我ははっとした顔になった。
「ラックに空きがないんなら、この家の物っていう可能性は少ない。だから計画的な犯行か」
なるほど、とみんなもうなずく。
そして6人は事件現場を後にした。
車の中で表情を失っている慎太郎を見て、北斗が声を掛ける。
「そんなショッキングだったか? あのホトケさん」
「いや……あれが普通なんですもんね。頑張って慣れます」
まあまあ、と大我が微苦笑する。
「初めてなんだからしょうがない。これから色んな死体を見ることになると思うけど、慣れれば大丈夫だから」
それに突っ込んだのは高地だ。
「いや、どんな死体でも動じないのって大我だけだから。俺でも腐敗とか損傷が激しいやつはまだダメだし」
それに、慎太郎はほっと息をつく反面怖さで震えた。
本庁の刑事課に戻ると、早速被害者について調べ始める。
パソコンに向かうそれぞれの表情は真剣で、慎太郎も気持ちを引き締めた。
続く
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