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6 ◇ちっとも怖くなかったわ
本格的に寒くなる前でよかった。
生活に最低限必要なものを追々揃えていくとしてと……。
祖父母の家のリビングには、生前取り付けてあったエアコンがあるのが
大いに役立ちそうだ。
私は翌日出社し、もう1日次の日有給を取ることにした。
2日間彼をホテルに滞在させ──
そしてこの有給を取った日の午後早めに、彼を迎えに行った。
◇ ◇ ◇ ◇
「ゆっくりできた?」
「はい、固いベンチじゃなくてふかふかのベッドで寝られて―――。
屋根のある暮らしがどれほど有難いかって、すごく感じました。
ほんとにありがとうございます」
「良かったわ。美代志くんに公園で出会えてほんとによかった。
幸運だったわ~」
『それはこっちの台詞なのに……。
俺は由香さんのことをほんとうにすごい女性だと思った』
「それを言うなら、僕の方こそ、ですよ。
はじめての日、こんなおっきい男で怖くなかったんですか?
あそこには、誰もいなかったのに」
「私ね、まだ小学生と中学生だけど息子がいるのよ。
上の子にはもう身長抜かれてて。
だから、男子には慣れてるし、心配のほうが勝っちゃってたから。
それに美代志くんはイケメンさんだからちっとも怖くなかったわ」
「怖がらずに声を掛けてもらって、有難いです。
僕、本当はこの先どうなっていくのかと困ってました。
住所がないと真っ当なところに就職もできないじゃないですか」
「身寄りがないって、ほんと大変よね」
「……」
「ひとまず、美代志くんの家へ行きましょう。
結構広いのよ~。しばらく空き家だったから、掃除なんかも
行き届いてないけど、一緒に綺麗にしていけばいいわ」
俺は由香さんと『俺の家』へと、由香さんの運転する車で向かった。
古い家だと聞いていたが、恐縮するくらい広くて素晴らしい家だった。
帰り際、由香さんからまとまったお金を渡され……
『明日は、会社に行く日で夜ご飯は持ってくるけれど、朝食と昼飯は
自分で調達するように』と申し渡された。
トイレは、水道が使えるようになるまで井戸水を使えばいい(タンクに入れる)と
教えてもらった。電気代だけは、ずっと払っていると聞いた。
『12月は結構就職するのにはタイミングがいいから生活が落ち着いたら、
就活頑張りましょう』って仕事のことも親身になってもらっている。
由香さんに足向けて寝らんないや。
◇ ◇ ◇ ◇
こんな風に由香と美代志の11月は慌ただしく過ぎ去ろうとしていた。