テラーノベル
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ユウがカナの家に来てから、三日が経った。
彼は人間のように食事はとらず、眠る必要もなかったが、昼はベッドで静かに横になり、夜になるとふわりと起き上がって窓から空を見ていた。
「夜って、こんなに近かったっけ……」
ユウはそうつぶやいた。
彼の目は、まるでかつての仲間を懐かしむように、遠い夜空をじっと見つめていた。
「ユウは、空にいたとき何を見てたの?」
「人間の街。家の灯り。子どもが手を振る姿。……でも、誰も僕の光には気づかなかった。
僕は、小さくて、どこにでもある光だったから」
ユウの声はどこかさびしげだった。
けれどカナは首を横に振った。
「私は見つけたよ。空から落ちてくる君を、ちゃんと」
その言葉に、ユウは微笑んだ。柔らかく、けれどどこか壊れそうな笑みだった。
ある夜、カナは眠れずにユウと一緒に外へ出た。二人で見上げた空には、無数の星が広がっていた。
その中に、ユウのいた場所があるのかもしれない。
「星って、誰かの願いを聞いてるんでしょ?」
「うん。僕たちは“祈り”に呼ばれて光る。でも、誰かの“本当の願い”じゃないと、僕には届かないんだ。
誰かに必要とされなければ、星はただの光で終わる」
カナは立ち止まり、ユウを見た。
「私は、君にいてほしいって願ったよ。それって、届いたのかな」
ユウは目を見開いたあと、ふっと息を吐いて言った。
「……きっと、君の願いが、僕を落としてくれたんだと思う。
“見つけてくれて、ありがとう”。そう言いたかったんだ、ずっと」
二人の間に、風が吹いた。夏の終わりの夜風だった。
空の星々は何も語らず、ただ静かに瞬いていた。
コメント
1件
良すぎてヤバい… 需要を有難うエグいわ………👍👍👍