テラーノベル
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第58話
「リナ。おかえり……その人は?」
ニルスさんは、ソースに鋭い視線を刺した。
「腐れ縁仲間です。ちょっと、客室を使いますね」
「あぁ、分かった」
そう言ったリナたちの背中を追った。
取り敢えず、紅茶を注いで、茶菓子を出した。
「……取り敢えず、剣を取ればいいんだ。そしたら、次のミッションが出るだろう」
「ミッションって、ゲームの世界じゃないんだから……」
ゲーム……あ、ニホンって所にある娯楽だっけ……? リナがそんな事、言ってたっけな。
「ゲームの世界なんて、作らないさ。僕をなんだと思ってるんだい?」
「何でも無い何か。それ以上でも、それ以下でもない。それで、ミッションって何?」
「そんなの分からない。君たちの行動によって」
そう言って長い前髪から、鋭い金色の瞳が見えた。
「……死ぬ可能性も、少なからずあるって事?」
「あぁ。大いにある。ソラーレは、今まで同じように身体を失くしてきたんだから」
「うるさい。ノアに変な事、教え込まないで」
「変な事じゃない。ソラーレの武勇伝だ」
ソースがドヤッとするとリナは顔を歪めた。
「だから……貴方は……」
「まぁ、そのミッションに耐えられるかどうかは分からないけどね。己の勘を感じ取れ。そして、この世界をその手で守ってくれ」
「……神様なんだから、そのくらいできないのか?」
「ハハッ。力が強いからこそ、できないんだよ。僕も、この世界には思い入れがあってね……僕だと、少し指先を動かすだけで、世界は滅亡する」
面倒事を押し付けられたな……まぁ、拒否権はないのだろうけど。
「取り敢えず、明日取ってくる。今日は疲れた」
そう言ってリナは、階段を上がっていった。それと同時に防音結界を解いた。
「……取り敢えず、僕も戻るとするよ。ありがとう。ノア」
「それにしても、貴方。よく、こんな人を側においておく事ができますね」
「あははっ。少し、処理したくらいでごちゃごちゃいいんじゃない。その依頼をする前に処理をする人だったんだから……」
殺し屋。でも、それは……
「貴方が、指示していたんですよね? 何となくではありますが」
「ほう。勘が鋭いな。獣人は、人間より知能が低いはずなのにな」
「それは、俺にも前世があるからじゃないか? それも勘だ」
……全部、何となくの勘だけど、当たる気がする。
確かに、獣人は人間より知能が低いはず。血が混じってるだけで、就職率はガクンと下がり、その後なんて、皆無。
「あははっ! ノアも思い出したくなったのか……これは思い出させたくなかったたんだけどな」
そう言って俺のおでこに手を添えた。
❂
俺は、孤児で犬の獣人。銀髪に、赤い瞳。
そして、小さな村に住み着いている。
「コラッ! 犬の食い物じゃないっ!」「野良犬は、野宿でいいわ」「私の息子を傷つけないで」
俺は存在するだけで、そう言われる。
だから、旅に出た。
捨てられていた破けたフード一枚羽織って少し大きめの……世界一の剣士がいる村に着いた。
その剣士は女の子で、黒い髪は虹がかかったように、綺麗だった。瞳は黒く、光が灯っていない。
最初に小さな窓から見えた彼女はそうだった。
「おいっ! ■■■っ! 出てこい!」「■■■。これで終わりだ。弱虫。出てこいっ!」「俺たちは、黙ってても引かないぞ。出てくるまでな」
ノイズか入って、人の名前までは聞こえない。だけど、リナの前世の名前というのは勿論わかった。
「やめろっ! 相手は女の子だし……怖がってるだろ。それに、ここまで追い込んだのは、うっ……」
蹴られた。獣人の中でも、犬は弱い方だ。
だから、舐められる。それだけの条件で判断される。
この街の名前は『カナル』という街。大きな河川が通っていて、水害が酷い街の一つ。
「グハッ……何だよ。急に……何人もで、独りの女の子を責めるなんて、その子が追い詰められるだけだろ」
「強いんだから、俺たちくらいチョチョイのチョイだろ。お前も分かれ」
そう言って俺のお腹を踏み潰しながらその男は、報告を待った。
❂
あ? 一体何を……
「彼女はそんな、人生を歩んで、自殺した。それこそが、残酷で完璧な世界。それで、自由になれる」
「……平和主義者が一番、残酷な未来を選ぶという事。あってますか?」
「そうだね。それに、これ。見覚えあるよね?」
「はい。この前の……」
「あぁ。そうだ。それを、ノアの、前世の視点に変えたんだ。まぁ、あの後はノアらしかった」
そう言って遠くをぼんやりと見つめていた。
「その後は見させてくれないのか?」
「ノアの頭は処理が追いついていない。今は無理だ」
確かに、分からない事だらけだからな……
「まぁ、その内だ。紅茶、美味しかった。ありがとう」
そう言い残してソースは、店を出て行った。
こはる
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#切ない
こはる
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コメント
1件
読み終えました……ノアの過去が少しずつ見えてくる感じ、すごく好きです。特に「平和主義者が一番残酷な未来を選ぶ」ってソースの台詞、胸に刺さりました。リナの前世も重そうで、そこにノアがどう関わっていくのか気になります。獣人差別の描写もリアルで、彼の孤独が切なかったです。続き、楽しみにしてます🌙