この作品はいかがでしたか?
530
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__20XX年、男、女の他に“第二の性”が出来ていた。
オメガ、アルファ、そしてベータ。
いつの間にか、それが当たり前になっていた。
学校でも、一年に一回定期検診的なのがあって、変わっていないか調べられる。
俺は中一の頃にアルファになった。
番を作った訳でも無い。
ベータに比べて圧倒的に人数が少なく、俺も今なら言える、調子に乗っていた。
位の高い順からアルファ、ベータ。
そして最下層がオメガ。
1番人数が少ない、だが、到底良い扱いはされない。
俺もそれを分かっていた。
だから。
ばしゃん、と教室のドアの前で水が床に落ちる音が響く。
緑「……」
水を被って固まっている一人の男子生徒。
桃「ぁ、すちっ、?!」
後から入ってきたもう一人の生徒が心配そうに駆け寄る。
桃「あ”ぐッ、」
それに素早く蹴りを入れた。
「うわ、なつまたやってんの〜」
「飽きねぇなあ、w」
遠くから笑うクラスメイト達。
それを見て少し俺も気分が良くなる。
赤「だって此奴何か苛つくし、w」
まぁ、言ってしまえば虐めだ。
だけど誰も止めない。
それは此奴らが…
緑「オメガだからって、こんな事する必要無いじゃん、」
一人が呟く。
あー、名前何だっけ。
「緑丘もあんま口答えすんなよ、w」
クラスメイトの一人が煽る。
嗚呼、そうだ。
緑丘すち。
それと…
赤「桃乃、らんだっけ?」
疑問系で尋ねると、こちらを睨む。
赤(本当に)
桃「いだッ、?!」
赤「苛つく、」
紫「なつ、聞いた?」
赤「んぁ?」
隣で牛乳を吸いながら聞いてくるのは、紫音いるま。
昔からの幼馴染だ。
紫「んぁ、じゃねぇよ、」
ぺしっと後頭部をノートで叩かれる。
紫「今日診断日っしょ?お前のクラス。」
赤「そだっけ…」
いるまとはクラスが離れている。
紫「ま、どうせお前今年もアルファっしょ、ww」
ニカっと笑って見せる。
赤「だと良いけどなww」
検診といっても、採血されるだけの単純なものだ。
特に何かやって来てくれ、みたいな事はない。
「次、暇さん入って来て〜」
血を抜かれた後医師に一人ずつ呼ばれた。
赤(まぁやっぱ今年もアルファだろ、)
軽い気持ちでドアを潜る。
「はい、これ。」
毎年通り、診断書を渡される。
赤「…え。」
最初は、見間違いだと思った。
赤「こ、れって、」
「書いてある通りだよ、」
「暇 72さん、貴方……」
赤「え、」
性転移、初めて聞くという訳でも無いが、とても珍しい事だ。
文字通り、性が変わってしまう事。
俺の場合、
赤「アルファから、オメガに、ですか、?」
問い掛けると俯きがちで答える。
「まぁ、そういう事だね。」
赤「ッッッ、!」
身体から血が引いていく感覚がした。
あれだけ散々馬鹿にしてきたのに。
赤(最悪ッ)
紫「なつ〜おは、」
違うクラスの癖に、当たり前のように入っきているまが話しかける。
紫「珍しいな、彼奴ら虐めてねぇじゃん。」
いるまが指差す先には、何の変哲もなく椅子に座って話している2人の男子生徒。
赤(桃乃と緑丘、)
やばいな、彼奴らにバレたら一番ヤバイ。
赤「……どうしよう、」
昨日聞いた事を思い出し、机に突っ伏して唸った。
紫「うわ、どしたん?ガチで怖いんだけど。」
赤「むぅ、」
少し心配そうに覗き込んでくるいるまは新鮮で、横目で睨みつつ考える。
赤(……此奴には話しておくか、?)
それが妥当かもしれない。
1人は信用出来る奴が居ないと駄目か。
赤「ッ、あ”あ”あ”〜ッッッ!!!」
紫「うぉッ!何?!ガチでッ?!」
もう考えるのさえ面倒臭い。
赤(今度で良いや,)
そんなことを考えていた時だった。
赤「…ッ?!お”ぇッ」
急な吐き気が身体を襲う。
紫「は、なつ?!」
手を伸ばして背中をさすろうとしてくれる。
赤「ぅ、ごめっ、」
いるまを振り払い、トイレへ駆け出した。
赤「あ”〜、」
余りにも気分が悪かった為学校を早退し、家路に着く。
赤(なんか治ったな、)
思ったよりすんなり良くなり、やるせなさを背負う。
いるまには悪かった。
折角心配してくれたのに。
赤「今からでも戻るか。…」
赤(や、待てよ、?)
それって逆に怪しまれるのでは、と考える。
早退と言うか本当に早く帰ってしまっている。
スマホを取り出し時間を見るとなんと11時30分。
赤「今日彼奴学校だっけなぁ。」
彼奴、とは大学生、20才の兄の事だ。
大分前から二人だけで暮らしている。
仕事じゃ無かったらとりあえず病院に連れてってもらわねば。
原因不明の吐き気とか、怖すぎるし。
赤「ただいま〜」
家に着き、ドアを潜る。
微妙な異変に気がつくまで、それほど時間は掛からなかった。
赤「酒臭ッ!」
玄関からでも香る強烈な酒の匂い。
こりゃ一本どころでは無い。
それに、俺の兄は酒にそれほど、と言うか全く強く無い。
つまり。
赤「いふっ!!!」
靴を脱ぎながら叫ぶ。
暫くするとリビングに続くドアが開く。
碧「あり、やっぱり冴てんねぇ、もうおにーちゃん褒めちゃう。」
何時ものふざけた口調で言ってくる。
赤「てめぇは義兄ちゃんじゃねぇ!」
イラっとする馬鹿馬鹿しさだ。
此奴はいふ。
何か、まぁ。その、
俺の本当の兄ちゃんの彼氏だ。
赤「で、ないこは?」
問い掛けるまでも無かった。
褪「なつぅ〜〜」
どたどたと足音を立ててやって来て、抱きつかれる。
赤「ガチで酒臭ッ」
しかも昼から。
此奴らは何をしてるんだ。
赤「社会人謳歌してんな。」
皮肉気味でないこを渡していふに言う。
碧「良いでしょ、別に。」
ぷく、と頬を少し膨らませる姿はまだ子供の様だ。
もうそれに俺も諦める。
赤「はいはい、良いよ。」
そう言っていふを横切ろうとすると、顔を顰める。
赤「…何。」
どうせ愚痴だろう。そう思い少し止まってやる。
碧「もしかして、や、ぇ〜」
赤「はぁ?」
何だ此奴。
めんどくさ。
赤「はよ言えや、てか病院に…」
碧「お前オメガやったっけ?」
赤(…え)
ぞくっと首筋が冷える。
不思議そうに焦点の合っていない目でないこが俺を見る。
褪「あぇ〜?そうりゃっけぇ、?」
赤(、)
まずい、そうだった。
いふはアルファなんだった。
そう。此奴はないこの番だ。
俺の兄はオメガ。
だから必然的に遺伝子的なものがあるのかも知れない。
赤(嫌…でも何で分かった、?)
考えても分からなかった為、
赤「違ぇし、寝る。」
と吐き捨てて2階へ登った。
碧「……」
赤「ッ、はぁ、ッ」
やる事も無かった為、ベッドに横になった所学校の時より酷い吐き気がする。
赤「痛っ、」
おまけに激しい頭痛。
病院に行くべきか迷う。
だが彼奴らは酒飲んでるし、このまま歩いて行くのも無理だろう。
そう思って布団の上で丸まり、無理やり目を閉じた。
赤「おはよ」
あれから無事朝を迎え、欠席日数を増やしたくないという理由で学校に来た。
周りでは、クラスメイトが心配してくるが、いるまが居る気配は無い。
赤(後で謝っとくか、)
とりあえず席につくと、此方をじっと見てくる2人組が居た。
赤「あ”?」
気分がまだ少し悪いのを悟られぬよう、強気で声を出す。
すると案の定違う方を見て話し出した。
「どしたん?この頃彼奴らに突っかからんやん?」
取り巻きに居た1人が聞いてくる。
痛い所をつかれてしまった、まずい。
赤「あ〜、何となく飽きたから?、w」
適当に言い訳をすると、すんなり信じて貰えた。
なつは前から気分屋だしな、という謎の評価を貰って。
赤「…」
1限目は国語で、訳の分からない字をすらすらと並べていく教師。
皆必死に置いて行かれぬよう板書している。
俺もその1人だ。
ちらっと横を見ると、特にノートを取る様子が無い桃乃。
余裕さにイラッとしそうだったが、そんな事さえ考えて居ても頭痛が来そうだった為辞めた。
赤「…ッ」
まだ耐えられる位ではあるが、腹痛がする。
同時に昨日の頭痛と吐き気が来る。
赤(ヤバい)
最初は良かったが、どんどん昨日の状態より酷くなってくる。
赤「…ぁ、」
消え入りそうな声で呟く。
そうだ、思い出した。
こんな状態のないこを見た事がある。
“発情期前のオメガ”を。
赤(もうすぐヒートじゃんッ、)
これは本当にまずい。
抑制剤も持ってないし、何より周りに彼奴ら2人しかオメガが居ないため貰うことも出来ないだろう。
此処は、、
赤「先生、気分悪いので保健室に、」
すると早退の事もあってか心配そうに承諾してくれた。
少しずつ廊下を歩き出す。
身体が熱い。
涙が滲んでくる。
緑「____。」
桃「_______?」
教室の方から教師に話し掛ける生徒の声がする。
赤「…、!」
大事な事を思い出した。
赤(保健室の彼奴…アルファじゃ無かったか、?)
もし俺の記憶が正しければ、そうだった筈だ。
そしてそうだったら、俺のヒートが来たら襲われてしまう確率も低くは無い。
赤(終わった、)
まずは人気の無い所へ。
そう思い、向かったのは校舎から大分離れ、今は使われていない旧体育館倉庫だった。
__後ろから着いてくる影に気付かずに。
赤「ふ、ッ、」
倉庫に着き、運動マットに座る。
少し、というか凄く疲れた。
暫くは安心出来る、後は耐えるだけ。
そう思った。
その時だった。
桃「はっけ〜ん。」
緑「らんらん、大きな声出したらバレちゃうよ。」
赤「ぇ、」
入って来たのは緑丘と桃乃だった。
声も出なくなり、呆然と2人を見詰める。
桃「ぅわッ、凄い匂い、」
此方に近づいて来て言う。
匂い…もうヒートが来てしまった様だ。
緑「大分拗らせたんでしょ、」
ここで1つ疑問が上がった。
赤(此奴ら、こんな態度でかかったか、?)
嫌、今はそんな事考えてる場合じゃ無い。
赤「お前らッ、んでこんな所いんだよッ!」
声を振り絞り威嚇すると、
桃「は?」
赤「んぇ、ッ」
声と目から明るさが消え、思わずすごんでしまう。
緑「こ〜ら、怖がらせちゃったら駄目じゃん。御免ね?」
頬に手を伸ばされ、抵抗できない儘撫でられる。
桃「…俺達、知ってるんだよね。」
急に話を切り替えられ、まだ上手く作動していない頭で着いていけない。
桃「暇さん、や、なつがオメガだって事。」
赤「へ、」
間抜けな声が出る。
緑「御免ね、これ見ちゃって。」
ポケットから取り出した紙には、生徒全員の性別が書いて合った。
緑「これは校長だけが持ってる奴何だけど、落ちてたんだよ。」
一気に鳥肌が立つ。
しかも。
赤「さっき、匂いがするって、」
すると桃乃が意地悪くにやっと笑う。
桃「なつ、性転移しちゃったんでしょ?」
桃「実は俺達も、何だよね。」
血の気が引く。
赤「ちょ、ちょっと待って!」
焦って転んでしまう。
緑「わ、危ないよ。」
緑丘は穏やかににこにこと笑っている。
いつもムカついて居たこの顔が、異常に怖く思えて来る。
桃「あ、すち。」
緑「分かってるよー」
緑丘が茶色の小さな瓶を取り出し、桃乃に渡す。
それを口に含んだ。
赤「ん”ぐッ」
顎を掴まれ、唇を重ねられる。
口の中に入って来たのは、甘ったるい液体だった。
赤「はッ、何すんだよ!」
精一杯の威嚇。
だがそれも相手にされない。
緑「ちょっと黙って。」
そう言って近付いてくる手にはロープの様な物が握られている。
赤「は、離せ、」
ぐるぐる手足を縛られ、身動きが取れなくなる。
桃「大丈夫大丈夫、殺しはしないって、w」
緑「ただちょっと、我慢比べしよっか。」
赤「どういう、事、?」
話の意図が読めなくて戸惑う。
緑「ヒート中のオメガと、それを目の前にしてるアルファ。」
緑「どっちが先に手出しちゃうかな〜?ww」
赤(ッ)
つまり、そういう事だ。
これまで俺がやってきた分。
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