テラーノベル
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「……レンブラントさん、ここでそういう冗談は」
「冗談じゃない、本気だ」
「っ……!!」
レンブラントは大事なことを隠すことはしたが、嘘は一度も吐いたことはなかった。だからこそ彼に惹かれた。信じることができた。
そう。わかりきっていたことなのに、ベルは今、心の底から驚いていた。
「ベル」
自己防衛から意識を飛ばしそうになる自分を引き留めるかのように、レンブラントが低い声で名前を呼ぶ。
黙り続ける勇気がないベルは、小さな声で返事をする。
「は、は……い」
「あんたは俺と結婚するんだ。わかったな」
こんな横暴なプロポーズをしたんだから、ドン引きするほど偉そうな顔をしていると思いきや、レンブラントは雷の音に震える子犬のような怯えた表情をしていた。
「返事は?……頼む」
彼が隠そうとしている真意を覗いてしまったベルは、これ以上困らすことはできなかった。
でもここで、こんな偉そうなプロポーズをした銀髪軍人の思い通りになってやるかと変な意地がむくりと湧き上がり、むぎゅっと唇を引き締める。
そしてキッと強く睨み付けながら口を開いた。
「後で後悔しても知りませんよ?」
「するか、馬鹿」
鼻で笑うレンブラントは、今までで見た中で一番嬉しそうだった。
そんな彼は、今にも泣きそうにくしゃりと顔を歪める。
「……惚れた女が死ぬまで一緒にいてくれることがこんなにも嬉しいとは思わなかった」
堪え切れないといった感じで逞しい腕に抱え込まれて、ベルも鼻の奥がつんと痛くなる。
「で、あんたは俺に何を強請ってくれるんだ?」
「えっと……じゃあ……ですね」
「ああ」
まごまごするベルをレンブラントはじっと待つ。不可能を可能にする笑みを浮かべて。
そんな彼に向け、ベルは不可能でしかない願いを口にした。
「あのね私、あなたに────をしてほしいの」
「なるほど。そう来たか」
レンブラントは笑った。しかしすぐに、苦い顔になる。
「今すぐ叶えてやりたい。だが悪い。一年待ってくれ」
「……一年?」
「最大で、一年だ。それ以上は絶対に待たせない」
国を揺るがす重要な交渉をするかのような生真面目な表情を作るレンブラントに、ベルは意地の悪い笑みを浮かべる。
「じゃあ、その間、浮気してもいいってこと?」
「できるもんなら、やってみろ。ただし、浮気した男を俺は殺すけどな」
「私じゃなくって、相手を!?」
「当たり前だろ?俺は愛妻家になる予定なんだ。妻を責めるなんて外道のすることだ」
妙に凛々しく言い切ってくれた彼は、どうやら凶暴な愛妻家を目指すようで──
「ベル」
啞然とするベルの顎を、レンブラントは優しく持ち上げる。
「覚悟しておけ」
飢えた獣のようなギラギラとした視線はベルを捕らえて離さず──二人は自然に唇を触れ合わせていた。
あの日、雨の中で感じた唇よりもっと熱い痺れが身体中に広がる。同意の上でのそれは、違った意味で鼓動が早くなる。
長く口付けされ苦しくなって一度唇を離せば、名残惜しそうな溜息と共にレンブラントの舌が下唇をなぞった。
「……甘い」
低いかすれ声を聞いたら、意味も無く身体が震える。ベルは感情のまま、レンブラントの太い首に手を回していた。
「……レンブラントさん」
こんなにも気持ちが高揚するのは初めてで、我ながら大胆なことをしてると思う。でも、そんな自分を止められなかった。
けれども、なぜかここで視界がぐるりと回った。一拍遅れて、レンブラントの手によって自分がベッドに押し倒されたことに気付く。
「寝ろ」
「……は?」
彼の紡いだ言葉が理解できなくて起き上がろうとすると、それを制止するように上から覆い被さられてしまった。
ベッドに肘をついたまま、ベルは動けなくなってしまう。
「頼む、ベル。寝てくれ」
ここで懇願するレンブラントの意図がわからず、ベルは瞬きを繰り返す。
「俺としたことが迂闊だった……本当に迂闊だった。こんな状態であんたにキスをしたら、止められなくなることに気付けないだなんて……くそっ。ちょっと考えればわかったはずなのに」
苦々しい顔で言い捨てるレンブラントに、ベルは視線を泳がせる。
彼が言いたいことはよくわかった。聞き返す必要などない。今は絶対に、どんなことがあっても、何があっても、全力で寝なければならない時だ。
「……レンブラントさん」
「……なんだ」
「おやすみなさい」
「ああ」
ベッドに横たわるベルは、ぎゅっと瞼を閉じた。
数秒後、大きな手が優しく頬を撫でた。
紫倉 紫
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日暮ミミ♪
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臣桜
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コメント
1件
「おい、寝ろ」「おやすみなさい」って、この流れ…!プロポーズからのキスで止まれなくなった自分を自覚して咄嗟にブレーキかけるレンブラント、めちゃくちゃ男前だったわ。しかも愛妻家宣言からの「浮気した男は♡♡♡」って台詞、全然怖くないというかむしろ信頼できる。ベルが「後で後悔しても知りませんよ?」って強がるところに、この二人の関係性が凝縮されてるなあ。おやすみの後の大きな手、想像しただけで胸がきゅんとする。