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「えっ?村を周りたい?」
翌日。昼前に目覚めた俺に、女性陣からお願いがあった。
「うん。あのお爺さんの話を聞いたら他人事じゃないなって思ったの。もちろんみんなね」
「そうか。具体的には何をするんだ?」
三人の話を纏めると、通り道にある村に寄って状況が良さそうならスルー。悪そうなら食べ物を寄付したいそうだ。
「別に金に困ってないからいいけど。でも、原因がわからないなら一過性のモノに過ぎないか?」
「何だかどこかの王様みたいな考えだね。流石未来の国王陛下!まぁそれは調べてみないとね!それからだね」
確かに行ってみないとわからんな。
行動力の聖奈。判断力のミラン。車酔いのエリー。
おい!みんな!この中にいらねー奴がいるよなぁ!?
うん。俺だな。エリーは技術者として必要だし、運転はその気になれば聖奈さんも出来るだろう。近くならエリーも転移できるし旅には支障は無い。
いくら考えても必要ないのは……
いや、必要不必要で仲間になったんじゃないんだ!
それに俺にはデザートを2人に分け与えるという大切な仕事があるしな!
そう言えばデザートも今はないんだった……
「あそこを曲がった所にあります。ここで降りましょう」
ミランの指示に従い車から降りて、俺は車を置きに戻り、こちらへと戻ってきた。
一々車を屋敷に転移させなくてもいいんじゃ?
どうせこんな所には殆ど人が通らないんだし……
もちろん聖奈さんとミランに却下された。
エリーはどっちでもいいらしいが…多数決に勝てん……
多数決はダメだって前に決めたのに……
民主主義には勝てん……
俺達は道を逸れて村へと向かった。
ここの村は外から見る限りエンガード王国の村と大差ないように見える。
木の柵と空堀に囲まれた、見る限り長閑な村だ。
「こんにちは!」
聖奈さんが門の中に声をかけた。そう。昼間なのに門が閉まっていたのだ。
「誰だ?」
中から何某か問われる。
「旅の冒険者です。村の中に入らせてもらえないでしょうか?」
「悪いが村には入らせられない。分けられるモノもない」
二言も言わせない程の断り文句だ。どうする?
「知っています。それの調査に来たのです。もちろん徴税官でもないので安心してください。後、食料も支援できます」
何の調査かな?別に何の権限も、依頼もないよね?
「…本当か?」
何やら門の向こうで話し合いをしているらしい。身体強化魔法を使っていないから内容まで聞こえないが。
すると木の門がゆっくりと開いた。
「さっきは済まなかったな。食糧の支援は助かる。正直、限界でな…」
「いえ。まず何を恐れていたのですか?」
そうだな。飯が無いならせめて森に獣を狩りに行くとかするだろうからな。
「隣村の元村民達だ。向こうはこっちより食糧事情が厳しくてな。遂には残った若者が野盗になってしまった」
「そうでしたか。入っても?」
村の中に入ることに成功した俺達は、広場にて詳しく事情を聞いた。
やはり蝗害ではなかった。単純な気候による水不足と猛暑で不作となり、春を待てなかったようだ。
ここは田舎なので、この国の王都などの情報は皆無だったが、この地域を収めている領主もかなり厳しい状況で、二ヶ月に一度くらいの割合で徴税官が食糧を徴収しにくるようだ。もちろん大勢の兵を連れて。
「山にいた鹿や猪なども、もういなくなってしまった。
うちの村も口減らしをしなくてはならん状況だ」
そう話してくれたのは40歳くらいの男性で、今の村長。前の村長は口減らしの為、自害したらしい。
やべぇな食糧難……
「心中お察しします。セイくん」
「ああ」
俺は雑用係。魔法の鞄から家にストックしている食糧を取り出した。
「少ないですが、春までもう少しです。頑張ってください」
「驚いた…何も持っていなかったから、嘘でもつかれているのだろうと期待していなかったが…それは魔導具か?」
「はい。貴重な品なので黙っていてくださいね」
聖奈さんは一応口止めしていた。まぁこんな小さな田舎の村では噂は広がらないだろうけどな。
村長は藁にもすがる思いで、俺達を入村させたんだな。
村の人口は現在40人。俺たちが持って来た食糧では一月分くらいしか持たない。
後2ヶ月もしない内に春は来るが、あくまで春が来るだけで、いきなり食糧難が解決するわけではない。
「どうするんだ?」
「一度王都か水都で仕入れしたいかな。出来れば隣の村の分まで」
うーん。そこまでする必要があるのか?確かに助け合いは大事だし、必ず必要だと思うが……
あまりにも一方的過ぎないか?
まぁ、多数決に勝てないから従うけど。
俺も見殺しにしたいわけじゃないからな……
「わかった。じゃあ今晩は、みんなでリゴルドーに行こう。水都でもいいけど、爺さん達に言った手前…」
「そうだよね…帰りづらいよね…」
うん。他人なら構わんけど、身内だとちょっと恥ずかしいな。子供達に野宿も出来ないと笑われたらイメージが……
いや、俺にはロクなイメージがないからいいのか?
その夜、村を出た俺達はリゴルドーの家に行き休んだ。
久しぶりのベッドは俺達を深い睡眠に誘った。
「じゃあ私達は王都で集めるね!」
「ああ。頼む。俺とミランは水都だな」
二手に分かれて食糧を買い集めることになった。魔法の鞄は聖奈さんに持たせた。水都には馬車があるからな。
俺達は馬車を3回満車にするくらい買い集めて、聖奈さん達を迎えに行った。
聖奈さん達は魔法の鞄は使わずに店に配達させていた。
えっ?…ずるくない?
そんなウ◯バーみたいなこと出来るのかよ……
え?大量に買えば大体の店で出来るって?
ミランさん。そういうのは早く教えてね。
sideミラン
その日の夜、また女子会なるものが開かれました。
女子会と言うのは、うら若き乙女が男子禁制で行うお喋りのことだと、セーナさんから聞きました。
「ミランちゃん?知ってて買い出しに時間を掛けたでしょ?」
うっ…やはりセーナさんは誤魔化せなかったでしたか……
「はい。セイさんと水都を馬車で揺られるのは楽しかったです」
「もう。開き直ってるし…」
「ミラン、ずるいです!私もセイさんと馬車デートしてみたかったです!」
「エリーさん。その後、屋敷での荷物の積み下ろしが3回ありましたよ」
「やっぱりいいです」
はい。エリーさんはセイさんと、というより、馬車デートがしたいだけですよね。
「セーナさんは向こうの世界で2人でドライブしたと聞きましたよ」
「うっ…セイくんのお喋り…」
女子会は基本楽しいです。ただ、誰かが抜け駆けをすると、たちまち吊し上げの会になるので気が抜けません。
side聖
「じゃあ行くぞ」
買い出しを終えた翌朝、みんなを村の近くに転移させた。
食糧は魔法の鞄に詰めてある。後は往復あるのみだ!
「ほ、本当にいいのか?返すアテはないぞ?」
村に行き、隣の村の分まで食糧を提供した後、村を後にした。
村人には過剰に感謝されたが、実際に向こうの立場に立つと過剰ではないか。
子供や口減らし対象の親の命を救ったのだから。
「名乗ったけど大丈夫か?」
「別に悪い事をしてるわけじゃないんだからいいでしょ?」
まぁそうだけど……
ここはカッコよく『名乗るほどのモノじゃない』って言いたかったなぁ。
「よし、ここまで来ればいいだろう」
村から見えない所まで来たので、俺は車を取りに転移した。
その後は何事もなく進み、村を見つけたら食糧を支援して回った。
無くなればまた買い出しだ。ちなみに皇国にも買い出しに行ったが…やはり何事もなく、聖奈さんがガッカリしていた。
『トラブルが起きないんだから、もう皇国を名乗るのをやめてよね!』
それはあんまりだろ……
この食糧難の国の名はザイール王国。人口150万人の小さな国だ。全てがエンガード王国の半分くらいの規模といえる。武力は低いが農業に特化した国で、近隣国はこの国から定量輸入している。
何故定量輸入が成り立つかというと、武力の弱いこの国の生き残る為の外交政策だからだ。要は…他国に足元を見られている。
不作だと今回のように国が破綻しかねない。これを機に輸出入の条約を見直してくれ。
国民が死ねば国も無くなるからな。
「凄い行列だね…」
「あれには並びたくないぞ」
「地獄のようです…」
「迂回をお勧めします」
うん。ここはミランリーダーの意見に従おう。
俺達の視線の先には、ザイール王国の王都が見える。王都に向かう行列が凄まじいのだ。
なんならテントを張って並んでいる。それ並んでいるっていうのか?
王都の門は固く閉ざされている。多分王都も大変なのだろう。
「流石にあれを助ける食糧はないな」
「うん…いくら今までの王都に比べて人口が少ないとはいえ、5万人以上の食糧は買えないね。買った街が食糧難になっちゃうもん」
これは近隣国に任せよう。今まで圧力外交で良い思いをして来たんだ。少しは返してやれ。
「じゃあ、人がいなくなるまで歩くぞ」
俺達は城壁に大勢の人が群がる王都を横目に通り過ぎていく。
食糧難の怖さを目に焼き付けながら。
たったパン一枚で、人は人を殺せる。
〓〓〓〓〓〓〓〓小話〓〓〓〓〓〓〓〓
女子会にて。
エリー「二人だけずるいです!私だけドライブデートお預けです!」
聖奈(嫉妬してるエリータソカワユス…)
ミラン「エリーさん。ドライブという事は車酔いになるという事です。そもそもエリーさんの方がずるいと思います」
エリー「何でですか!?」
ミラン「バイクという乗り物に2人乗りしてましたよね?」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜
聖奈「っていう事があったの。エリーちゃん一度も口で勝ってないのに、何度も挑戦して面白いよ!」
聖「うん。女子会は良い。だが内容が俺なのはやめて」
聖奈「じゃあ今度ミランちゃん達を連れて、男の子と遊んできてもいいの?」
聖「聖奈。そんな事をしたら俺は引き篭もるぞ?いいのか?」
聖奈(いや、脅し方…情けなっ!)
以下、作者の心の声……
後書きの小話が長い時はネタが思いつかない時です!覚えていてください!
本編が長い時は考えが纏まらない時なのです!忘れてください!