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九章 出来ればミルクが欲しかった
ドアの先、思ったより細く、白く、小さい化身を見て驚いた。
少し三白眼気味なった青い瞳は何を考えてるのかは分からない。
ただ、灯る暖かいハイライトが俺の虹彩に吸い込まれた。
「Tervetuloa」
祖国は違う低い声に動揺を退かしながら、少し屈んだ。
「今回はお忙しい中受け入れてくださりありがとうございました」
と、綺麗に頭を下げて片手を繰り出した。
フィンランドさんは慣れたように手を出した。白樺のようにスラッとした手だ。
ヒヤッという感覚がして、上を向いた。
不思議そうな顔をしていた。
「…!」
俺が慌てて握り返すとフィンランドさんは手を引いて家に招き入れた。
カタンっと音を出しながらドアを閉める。
リビングには薪の音がこじんまりと鳴っていた。
「長旅だったな」
大きな声じゃない。
貫くような声でもない。
静かすぎて此処ではよく目立った言葉だった。
シーッとした都道府県の会議、いつもzoomの隅っこで薄い呼吸をしている俺には、この空気で喋るのが不思議で、異国的だった。
少し彼に見惚れて返した。
「…はい」
俺は荷物から紙袋を取り出して、フィンランドさんの前に差し出した。
「こちら!つまらないものですが」
お納めくださいと言わんばかりに突き出した。
期間限定 伊藤久右衛門 宇治抹茶味のキットカット。
フィンランドさんは、それのパッケージを見つめた後、暖かい木のテーブルに置いて、台所の方へ行ってしまった。
抹茶苦手!?
いやでも!海外で抹茶は人気あるって(静岡が)言ってたし(盗み聞きした)
苦いのが苦手なのか?
俺が静かな絶望を体験していると、
ヒゥーッヒヒィーンっと、やかんの蓋が湯気で持ち上がる時の音がしてきた。
台所の暖色のライトがつきフィンランドさんの影がくっきりと写っていた。
フィンランドの本体が見えたのはそれからすぐの事だった、右手には大きなコーヒーポットを左手には器用に二つのマグカップを持っていた。
テーブルの奥のイスに腰を下ろした彼はジッと俺を見つめながら反対側の席に赤いマグカップを置いた。
俺はその流れに乗って、厚い上着と手袋、ネックウォーマーを脱いでその席に腰を下ろした。
トポトポッとマグマップにコーヒーを注ぐフィンランドさん。
フィンランドさんは自身の青いマグカップにコーヒーを注いだのち、自分の赤いマグカップに静かにコーヒーを注いだ。
丁寧に俺にマグカップカップを向けた。
その後、キットカットをパッケージのギザギザに沿って開けて。
中から五個くらい出して、更に個包装を破った。
パキッと音が鳴ってキットカットが割れる。
「このお菓子は日本だと、こう食べるんだろう?」
そう言い、割れた片方のキットカットを差し出した。
流石に、友達と交換する為に割れるようにはなってはいないのだが、そんな事は言えなかった。
俺はその片割れを貰った。
少しあたったフィンランドさんの手は冷たかった。
チョコは溶けない。
俺が受け取ったのを確認したのち、フィンランドさんは一口でほうばって、コーヒーを嗜み出した。
「美味いな」
俺も一口で食べた。
繊細な味はよくわからなかった。
ただ、コーヒーとはとても合うことはすぐわかった。
ふふーんっと鼻歌が少し漏れたフィンランドさんは少し意外だったが、こっちは机をそのリズムに合わせて叩くのが楽しかった。
[追記]
あまりに進む食の組み合わせにドンドン、フィンランドさんのマグカップのコーヒーは無くなり、コーヒーポットのコーヒーも減っていく。
もう!もう無理!この人に合わせながらコーヒーを飲むのは無理!
水のようにコーヒーを飲むフィンランドの横で俺は目眩に襲われた。
額には汗が水滴を作っていた。
幸せそうにコーヒーを飲むフィンランドを正面に俺は失神した。
フィンランドという国がコーヒーの消費が世界一だと知ったのは、フィンランドさんが用意してくれた部屋のベッド上だった。