テラーノベル
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サウンドチェックが終わるころには、会場のスタッフ全員がすでにスクラッチャーズの扱いに慣れていた。
カキが照明を勝手に操作し、ミステーが意味の分からない説明をする。
アオノが機材を元に戻し、マサカゲが予定表を確認する。
メバルは受付へ向かい、K-Tは会場全体を見回って安全を確認していた。
ユナは、先ほど助けてもらったアオノのそばにいた。
「さっきはありがとうございました」
「いえ。危険を避けただけです」
アオノは工具を整理しながら答えた。
「スクラッチャーズの皆さんって、いつもあんな感じなんですか?」
「いつもより静かなほうです」
「これで!?」
「本番前なので、かなり抑えています」
そのとき、カキがステージの上から叫んだ。
「アオノー! このボタン押したら、虹色になる?」
「押さないでください!」
アオノが振り返る。
しかし、カキはすでにボタンを押していた。
照明が一斉に点滅し、会場全体が派手な色に包まれる。
「きれいだね」
ミステーが言う。
「きれいだけど、予定にない!」
マサカゲが走ってくる。
「カキ、ミステー、照明に触るなと言っただろ!」
「でも、お客さんが喜んでるよ、マサっち!」
「喜んでいるんじゃない。驚いているんだ!」
メバルが受付から戻ってきた。
「またやったのね」
「メバルちゃん、これは芸術的な演出で――」
「はい、そこまで」
カキとミステーの襟首をつかむ。
「え、ちょっと待って!」
「ステージから出ていきなさい!」
二人は仲良くステージの端から放り出された。
ユナは目を丸くした。
「本当に投げるんですね……」
「危険なことをするからよ」
メバルは平然としている。
「でも、あの二人も悪気はないみたいです」
「悪気がないから困るのよ」
メバルはそう言いながら、転がったカキのヘルメットを拾い上げた。
「怪我してないでしょうね?」
「メバルちゃん、心配してくれてる?」
「してない。イベント中に倒れられたら困るだけ」
「それを心配って言うんだよ」
ミステーが言った。
「あなたは黙ってなさい」
ユナは、メバルが本当は優しい人なのだと気づいた。
その後、K-Tが会場に戻ってきた。
「入口付近の混雑を確認した。誘導スタッフを増やす」
「Kさん、了解です」
マサカゲが返事をする。
K-Tはユナにも目を向けた。
「楽しめているか?」
「はい。とても」
「それならよかった。困ったことがあれば、近くのスタッフに声をかけてくれ」
落ち着いた声だった。
その声を聞くと、なぜか安心する。
ユナは胸の奥が少しだけ熱くなるのを感じた。
そこへ、カキが割り込んできた。
「ユナさん、Kさんはこう見えてすごいんだよ!」
「余計なことを言うな」
K-Tが止める。
「だって、警察用バスを持ってるし!」
「えっ?」
ユナが驚く。
K-Tはわずかに目を細めた。
「機材運搬用だ」
「でも赤色灯が付いてるよ!」
「目立つほうが、会場に到着しやすい」
「それ、理由になってます?」
マサカゲが突っ込んだ。
会場の外から、低いエンジン音が聞こえた。
青い車体に赤色灯を備えた大型バスが、入口前に停車する。
まるで本物の警察車両のようだった。
ユナは思わず窓の外を見る。
「すごい……!」
「俺が手配しておいた」
K-Tはバスから機材を運び始めた。
その背中を見ながら、ユナはさらに興味を持った。
この人は、いったい何者なのだろう。
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コメント
1件
第2話、すごく楽しく読ませてもらいました!カキさんとミステーさんの自由奔放さにアオノさんやメバルさんの冷静なツッコミが絶妙で、チームの空気感が一気に伝わってきました。特に「いつもより静か」と言うアオノさんにユナが「これで!?」と驚くシーン、思わず笑ってしまいました。そしてK-Tさんの警察用バス…謎が深まる存在感に、私もユナと同じく「この人、何者?」と引き込まれました。続きが気になります!