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鉄扉の仕掛けに浮かんだ最初の星は、かすかに脈動していた。
理沙はそれを見つめながら、次の“影”に備える。
――カラン。
階段の上から、小さな鈴の音が聞こえた。
姿を現したのは、細谷瑞希だった。
肩を揺らし、どこか不安げな笑みを浮かべている。
「理沙……覚えてる? いつも私、怖がってばっかりで……みんなに迷惑かけてたよね」
「瑞希……」
「だからさ、犠牲になるのは、私の方がよかったんだよ。
あんたが残る必要なんてなかったの」
胸を刺すような言葉。
理沙は一瞬、返す言葉を失った。
確かに瑞希は臆病だった。影に追われるたびに泣き出し、理沙や真綾が支えてきた。
“犠牲者”に選ばれる可能性は、誰よりも高かったのかもしれない。
だが理沙は拳を握りしめ、声を張った。
「ちがう! 瑞希は最後まで生き抜いた。
泣いても怯えても、私たちと一緒に進んでくれた。それが……どれほど心強かったか!」
瑞希の影は目を見開き、やがて崩れるように消えていった。
扉には二つ目の星が輝く。
――だが、休む暇は与えられなかった。
今度は、元気な笑い声が響く。
「ははっ、やっぱあなたってカッコいいわ!」
現れたのは谷本穂乃果。
いつも快活で場を明るくしてくれた彼女の影が、挑発的な笑みを浮かべている。
「でもさ……カッコつけてるだけじゃない?本当は怖くて仕方ないくせに。みんなのために残ったとか言って、自分が“いい人”に見られたいだけなんでしょ?」
理沙の胸に鋭い棘が突き刺さる。
穂乃果の言葉は、図星でもあった。
犠牲になった瞬間、心のどこかで“私は正しい選択をした”と自分に酔っていた部分があったのだ。
「……そうよ。私は臆病で、見栄を張ってた。でも、それでもいい。だって私は――弱い自分を認めた上で、まだ戦ってる!」
光が走り、穂乃果の影が破裂するように消えた。
扉には三つ目の星が灯る。
息を整える暇もなく、次に現れたのは……浜野姉妹。
里奈と香里の影が並んで立ち、無表情で理沙を見下ろしていた。
「理沙、私たちは守られるばかりだった」
「結局、あなたが犠牲になったから助かったのよ」
二人の声が重なり、冷たく響く。
理沙は歯を食いしばる。
「……次は、あなたたちと向き合う番ね」
扉の星は四つ目を待っている。