テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
ばたこ
3ヶ月後
俺は仁人とすっかり仲良くなった
「仁人ー」
「はい なに?」
「今日の課題やった?」
「なに またやってないの」
「お願い!!今日だけ!」
「佐野さんさ それ昨日も言ってたよね」
「あ ばれた?笑」
「ばれないわけないでしょ」
そう言いながらも提出済みの課題を俺に差し出してくれる
そのツンデレさに 頬が緩む
「ありがと 仁人」
「俺もう昨日提出したから そのまま持ってていいよ」
さりげない気遣いにも 心の広さを感じて ついまたわがままをいいたくなる
「てかさ 前言ってた 新曲 いつ聞かせてくれんの」
「曲作るのにも 時間かかるから 」
「でもまああと1週間くらいで完成するよ」
その言葉に胸が弾む
「まじ!!楽しみにしてる!!」
テンションが上がる俺に照れくさそうに微笑みかけてくれる
「てかさ 仁人ずっと佐野くんか佐野さんだよな」
ふと感じたことを問う
「たしかに、?」
「俺は 仁人って呼んでるんだから 仁人も俺の事呼び捨てで呼んでよ」
「それはー、 嫌かな 笑」
「え” なんでよ! いいじゃん!」
「まあいつかね 笑」
明らかに 適当に返す
「あ おい 仁人!」
はぐらかすために その場を去ろうとする仁人
呼んでくれる日がくるのか不安になるが
その不安よりも新曲が楽しみな気持ちが勝る
「はぁ、 いつか絶対なー?」
「ただいまー」
仁人の新曲が楽しみだなと、うきうきした気持ちで家の扉を開ける
「勇斗 こっちきて」
親戚の叔母にそう呼ばれリビングへ向う
「言いずらいんだけど 、」
「お父さん また転勤になったらしくて」
いつもならすんなり受け入れる報告
でも今の俺には絶望するほどのものだった
「は」
「お友達とかと仲良くなってきた頃だと思うんだけど 、」
「…… どこ」
今までの慣れもあり 流れで場所を聞く
「九州、なの」
俺は言葉が出なかった
「しかも 急遽決まったらしくて 1週間後にはもう移動らしいの」
行きたくない
咄嗟に思ったものは その一言に尽きた
「それさ、俺も行かなきゃいけない?」
いっても俺は高校生だ
この親戚の家でも暮らしていける
両親と離れ離れになるのは寂しいが 仁人と会えなくなるくらいなら ここに居たい
「お父さんに聞いてみたけど 県内はまだしも流石にここまで離れてるのは って、」
そうだよな
高校生とはいえ まだ自立もしてない息子を親戚の家に1人預けるのは 心配だろうし叔母さんにも申し訳ないだろう
「ごめんね 、勇斗」
「いや、 大丈夫。」
謝る義理のない叔母さんに謝らせたことに申し訳なさを感じ大丈夫じゃないが 返事をしてしまう
「じゃあ 1週間後には ここを出れるよう 荷物の準備とか お友達にも 伝えておいてね」
俺は頷くだけ頷き 自分の部屋へはいる
何時間泣いただろうか
こんなに泣いたのは初めての転校以来だ
いや、そのときもここまで泣いてはいなかった
そう思い出すと 仁人の存在が俺の中で大きく大切なものになっていることに気づいた
1週間後か……
仁人が俺に新曲を聞かせてくれる日だ
もう会えなくなるのならせめて仁人の歌を聞いてから がよかった
別れをだんだんと受け入れてしまっている自分が嫌になる
もし仁人に 転校のことをいってしまったら
いつもと同じ対応をしてくれないんじゃないか
仁人は優しくてなによりも気遣いがすごい
俺が不安そうな顔をしていたら そっと近くにいてくれたり
俺の大好きな仁人の歌声を聞かせてくれたり
そんな優しい仁人に伝えてしまったら
きっと彼は俺に気を使うだろう
仁人には悲しい思いも無理な気遣いも普段と違う対応もしてほしくない
言わないでおこう……
「おっはよー 仁人!」
席に座ってスマホをいじる仁人に肩を組みながら言う
「おぉ、びっくりした」
「おはよう 佐野さん」
「おう おはよ!」
「なに なんか今日テンション高いね笑」
「…えぇー? そんなことないけどな 笑」
「てかさ 昨日のドラマみた?!」
「俺すっげえ感動したわー」
「まだ見てないよ」
「えまじ? あのあと主人公が母親にさー!」
「ちょ、 見てないからネタバレしないでよ」
「あごめんごめんー笑」
俺はいつもより明るく 不安な顔を見せないよう接した
いつも通り
それでいい
勘の鋭い仁人に気づかれないよう
目を疑うほど明るくハイテンションで接した
「あてか 明日新曲聞かせてあげるね」
明日
俺が飛行機に乗る日だ
「おおー!!!待ってました!」
「まじで あんま期待しないでね」
「仁人なら 絶対歌手なれるかんな」
心の底からの本音と期待
「ふふ なにそれ 笑」
「じゃあ前 曲聞かせたあの教室集合で」
胸が痛い
気を抜けば涙腺が緩みそうだ
ここで返事をしてしまったら 約束を破ることになる
返事をしなくても破ったも同然か、
でも 少し嬉しそうに言う仁人に俺は
返事をできなかった
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!