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[ベルゼブブ視点]
カツ……カツ……
暗く広い廊下に響く足音。
僕にお似合いの場所だ。
呪われた、僕に。
「…ベル君」
背後から名前を呼ばれ、どきっとした。
「………ああ、ニコラ。…どうした。」
僕は名前を呼んだ相手へ返事をした。
…いつからいたんだろう。
「……いや、なんでもないんだ。…たまたまベル君を見て…なんとなく呼んでみただけだ。」
「……そう。…なにもなかったならいい。」
ニコラにそう告げ、僕は部屋に戻った。
部屋に戻ってから、僕は思い返していた。
なぜニコラがあそこにいたのか。
なにか用があったのではないか。
「……………はぁ」
溜息がもれた。…考えても仕方がない。そう思っていたが、どうにも頭から離れない。
「……………」
『まだいるかな』という期待と『あんなところにいるほど、何かあったのでは』という不安に駆られ、僕はもう一度部屋を出た。
「…ニコラ。」
ニコラはまだあの場にいた。
「…っ…ベル君……?」
…様子がおかしい。
「ニコラ、なにがあったんだ?」
焦りながら聞いた。
「……………」
返事がない。
「………ニコラ?」
ドサッ………
「ニコラっ!!」
倒れたニコラに駆け寄った。
………熱い。
「……熱がある。…」
周りを見渡しても誰もいない。そりゃそうだ。ここは僕の部屋に繋がる廊下。神様以外に近づく変人なんてニコラくらいだ。
「…ニコラ、僕の部屋に運ぶから。…」
そう言ってニコラを僕の背中へ担いだ。
[ニコラ視点]
カツ……カツ……
廊下に響く足音。ここを歩く人…神といえば
「…ベル君」
……声に出してしまった。慌てて口を塞ぐも、もちろん意味はなかった。
「………ああ、ニコラ。…どうした。」
やはり気づかれた。私はなぜ声に出したんだ…
「……いや、なんでもないんだ。…たまたまベル君を見て…なんとなく呼んでみただけだ。」
………理由は…なくもなかった。…昨日から熱を出し、少し体調が悪い。…まあ、言うほどのことではないから理由はないに等しいか。
「……そう。…なにもなかったならいい。」
彼はそう言い、おそらく部屋に向かった。
彼の背中を見送り、やはり部屋に戻ったのだとわかった。
「…………はぁ…」
熱のせいだろうか。…体が鉛のように重い。
…頭も働かない。………ここまで酷いのはいつぶりだろう。…きっと原因は、最近休息できていなかったことだ。……
「…ニコラ。」
彼が戻ってきたようだ。名前を呼ばれ、どきっとした。
「…っ…ベル君……?」
頭が働かないんだ。今はここにいないでくれ。
「ニコラ、なにがあったんだ?」
焦ったような声が聞こえた。
「……………」
……もう限界かもしれない。目が回る。
「………ニコラ?」
ドサッ………
「ニコラっ!!」
彼は駆け寄ってきた。
『大丈夫だ、心配はいらない。』と言いたかった。だが私は声を出せなかった。
「……熱がある。…」
……知られた。ああ、体調管理のできない科学者だと笑われるかな。
「…ニコラ、僕の部屋に運ぶから。…」
それを聞いたあと、私の意識は限界を迎え、ぷつりと切れた。
[ベルゼブブ視点]
……人間は脆い。なのになぜここまでやるのだろうか。
「……ニコラ。」
呼びかけに反応はない。まだ起きない。
「……うぅっ………………」
……先程からこう魘されているだけだ。…熱のせいで悪い夢を見ているのだろう。
…起こした方がいいのだろうか。
頬まで手を伸ばし、途中でとめた。
………サタンの呪いで……壊してしまうかもしれない。だが、放っておくこともできない。
…覚悟を決め、頬を叩きながら呼んでみた。
「……ニコラ。起きろ。」
「………はっ…………はぁっ…………ベル君……?」
「ニコラ。魘されていた。…大丈夫か。」
目が覚めたようだ。良かった。魘されていた心配をしながら、ニコラの額から流れる汗を拭った。
「…………ああ…大丈夫だ……ありがとう」
…ニコラはそう言っているが、これは大丈夫ではないやつだろう。…しかし、本人がそういっているから深掘りはしない。
「…それなら良かった。……熱があるんだ。しっかり休め。」
熱の方の心配もし、休みことを進めた。……こういってもニコラは休まないのだろうが。
「……ああ、わかった。」
意外な返事がきて、僕は目を見張った。…それだけしんどいのだろう。
「…………ワルキューレを呼んでくる。…ゲンドゥル、だったか。」
「……ああ」
短い返事が帰ってきた。
……………よく考えてみれば、ニコラを運ぶことはワルキューレにはしんどいか。……いや、これは言い訳だ。………この姿を独り占めしたい……だなんて………思ってしまった。
………彼を運ぶのは、僕だ。
「……ニコラ。やはり僕が部屋まで運ぼう。」
ふたたびニコラを背中に乗せた。
「………すまない、ベル君。」
[ニコラ視点]
「……うぅっ………………」
……暗い。重い。………焦燥感…?………なにかへの恐怖………?………………ああ、進歩が止まる………………
「……ニコラ。起きろ。」
頬を叩かれ、名前を呼ばれ、現実に引き戻される。
「………はっ…………はぁっ…………ベル君……?」
目が覚めると、見知らぬところにいた。…おそらく彼の寝室だろう。
「ニコラ。魘されていた。…大丈夫か。」
……魘されていたのか。……全て、夢だった。……よかった。
「…………ああ…大丈夫だ……ありがとう」
……汗も拭ってくれた。………彼もいる。…大丈夫だ。
「…それなら良かった。……熱があるんだ。しっかり休め。」
………熱。そうだ、熱があったんだ。……まだだるく、動けそうにない。
「……ああ、わかった。」
そう返事をして、彼を見ると、大きく目を見開いていた。……なにか変なことを言っただろうか。
「…………ワルキューレを呼んでくる。…ゲンドゥル、だったか。」
「……ああ」
ゲンドゥル……心配させてしまっただろう。申し訳ない。
……?彼が動かずに固まっている。『大丈夫か』と言おうとしたところで、彼は口を開いた。
「……ニコラ。やはり僕が部屋まで運ぼう。」
ふたたびニコラを背中に乗せられた。……呼ばなくていいのだろうか。………でも、彼の背中は熱で熱くなった私をひんやりと、冷やしてくれる。……考えることをやめ、彼の背に体を預けた。
「………すまない、ベル君。」
……ほんのり…暖かくなったような気がした。
後日談
[ゲンドゥル視点]
…昨日の出来事は驚きすぎて忘れられそうにない。
あのベルゼブブ様が博士を運んできた……血相を変えながら。……あ、これはベルゼブブ様になにか言われそうなので秘密で。
博士を私に預けたあと、ベルゼブブ様は逃げるようにして帰っていった。……背中、熱を帯びていましたよ。……ふふっ…
そして今日。博士は回復し、普段通りの生活を送っていた。
「Non!ゲンドゥル君!それは………」
…熱があったのが嘘のよう。元気になってよかった。…ベルゼブブ様が必死に運んできたときのことは忘れられませんが。
「ゲンドゥル君、聞いているかい!?」
「はい、博士。聞いております。」
そのとき、コンコンと扉を叩く音が聞こえた。
「…どなたでしょうか。」
「……ベルゼブブだ。」
「……ベル君?」
…………ふふっ…博士、隠せてませんよ。……ベルゼブブ様。きっと様子を見に来たのでしょう。
私は扉を開け、ベルゼブブ様を中にお通しした。
「こんにちは、ベルゼブブ様。…博士のところへ案内しますね。」
「……!?……あ…ああ………頼む」
なぜわかった…という顔をしていましたが、さすがにわかりますよ。
「ベル君」
「…ニコラ」
……あらあら…………これは2人の世界に入りますね。……ふふっ………さて、私はお暇を。
end. (2026.3.1)
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