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「……はぁ、緊張するなぁ……」
燦燦と太陽が照りつける7月の上旬、真っ白な校舎を見上げてそう呟くのは、今日からここに転入する日本だ。陶器のように滑らかな肌が、惜しげも無く陽光の元に晒されている。
「えっと、確か職員室はこっちのはず……」
小さなメモを片手に、見慣れない校舎を右往左往する。メモを見ることだけに集中していた日本は、前から歩いてきた背の高い人とぶつかってしまった。
「ゎ、!?」
「ッ、大丈夫か?」
ぶつかった反動で日本の体は、後ろにぐらりと傾いた。くるであろう痛みにグッと目を瞑ったが、痛みではなく誰かに支えられた感覚を覚えた。
「……っぶな、ちゃんと前見て歩けよ。怪我したら俺のせいになるだろ」
「あ、ありがとうございます……すみません前を見てなくて……あの、名前聞いてもいいですか?」
倒れかけた日本を支えてくれたのは、もう7月だというのに毛皮のようなもので作られた帽子を被っている人だった。と、その時、その男性の後ろからもう1人、同じくらいの身長の人がかなりのスピードで走り込んできた。
「めんどくさいのが来たな、あー……俺はロシア、3年B組だ。お前は?」
「私は、」
「え、ロシア誰この子! めっちゃ可愛いじゃん!! 名前なんて言うの? こんな子いなかったよな? もしかして転入生か!? 俺はアメリカだ!! 3年C組!!よろしくな?」
日本が話し始めたのを被せるようにアメリカは突っ込んできた。かと思えば、日本の肩にナチュラルに腕を回し、日本を自身の方へ近づけた。
「え、ぁ、え、?」
「え、何その反応かわいー。海外じゃこれふつーだぞ? ここに通うならこれくらいのスキンシップは日常だぞ?」
「そ、そうなんですか……?」
「そうだぜ? ところで名前何ー?」
話があちこちへ飛び、パーソナルスペースが広い日本に、過剰な程に近づいてくるアメリカに、日本は戸惑いながら話を続ける。
「私は、日本です。今日からここに転校してきたんです。クラスは3年B組です」
『は?/え?』
ロシアとアメリカ、その両方が驚いたような表情をしていた。日本はその様子を不思議そうに見ていた。
「いや、なんでもないぞ……というか、転入なら職員室に行くんじゃないのか?」
「あ、そうなんですけど、職員室の場所が全然分からなくて……」
困り顔で日本はメモをアメリカに見せた。それを見たアメリカは笑いを堪えらなが言った。
「あー……これ上下逆だぞ、だから職員室はあっちだぞ、日本chan」
「え!? あ、ほんとだ……! ありがとうございます! 日本ちゃん……?」
「愛称だよ、仲いいヤツ同士で使うだよ。早く行かないと遅れるぞ」
「ありがとうございました!!」
そう言って日本は早足で来た道を引き返して行った。そうして日本が見えなくなった時、アメリカはロシアに、ぐるんと向き直った。
「何だ今の!? 可愛すぎねぇか!??!? しかも1年生かと思ったら同い年かよ!? あんなに小さくて可愛いのに!! あの笑顔は反則だろ……しかもメモ逆って、可愛すぎだろ」
「はぁ……落ち着けよ。遅刻するぞ」
ロシアはスタスタと廊下を進んでいく。その後ろでアメリカは、日本のどこが可愛いだの、あの表情がえろいだのと延々と語り続けている。
「(日本、だったか……こりゃまた厄介なのに好かれたな、)可哀想に」
思ってもいないことを、暇つぶしのようにロシアは口にする。アメリカはまだ日本のことを喋り続けていて、ロシアの発言には全く気づいていなかった。
「すみません! 遅れました!!」
「おはようございます、日本さん。今日からこの学園に通うと言うことで……緊張などはしてませんか?」
大慌てで職員室に飛び込んで来た日本。いつもより呼吸や服装がやや乱れている。
「だ、大丈夫です! イギリス先生、今日からよろしくお願いします」
「はい、よろしくお願いしますね。では早速、日本さんのクラスに向かいましょうか」
前を歩く担任のイギリスに、日本はてちてちと付いていった。
「皆さん、おはようございます。昨日も言いましたが、転入生が来ます。気にかけてあげてくださいね。入ってきてください」
「は、はい……!」
カラリと教室の扉がひらいた。転入生が来ると聞いてずっとソワソワしていたクラスメイト達は、思わず息を飲んだ。
「さ、自己紹介してください」
「ええと、日本と申します。好きな事は食べることで、好きな食べ物は美味しいもの全部です! よろしくお願いします!」
満面の笑みで日本はぺこりと頭を下げた。クラスメイトたちがぱらぱらと拍手を送る。
「では、日本さんの席はあそこです」
「! ……わかりました!」
教室に入った時から見えていた、後方の不自然に空いた1席。窓際なのも嬉しいが、何より隣の席がロシアなことが日本は嬉しかった。少しでも知っている人がいるとすごく安心感を感じるからだ。
「隣ですね……! よろしくお願いします。ロシアさん」
「……おう、よろしく日本」
ロシアの隣の席に日本はストンと腰を下ろした。周辺の席の生徒たちは騒めいていたが、早々に授業が始まった。